“カーボンニュートラル”実現へ長い道のり、太陽光・風力銘柄を有望視

 中国はCO2排出を実質ゼロとする“カーボンニュートラル”を2060年までに実現させる方針を表明したが、この目標の達成は容易ではなく、BOCIはまず、初期段階において、電源構成の構造的な変化を加速させる必要があるとの見方。非化石電源(再生可能エネルギーや原子力発電)の強化が、新たな投資機会につながると指摘している。電源別では、21年の世界的な需要増が、太陽光発電バリューチェーン銘柄の追い風になるとの見方。個別では、太陽光設備の信義光能(00968)、福莱特ガラス(06865)、風力発電の大唐新能源(01798)、龍源電力(00916)をトップピックとしている。

 BOCIの推定では、中国の年間CO2排出量のうち62%は生産活動由来。排出量の実質ゼロを実現させるためには、「エネルギー強度」(経済単位当たりのエネルギー消費量)を引き下げたうえで、さらにクリーンエネルギーへのシフトを進める必要がある。国内のCO2排出量は29年にピークに達するとみられるが、それより前の「第14次5カ年計画」(21-25年)の段階では、年率平均2.6%のペースで増加する見通しという。

 BOCIが設定した基本シナリオによれば、「第14次5カ年」の最終年に当たる25年時点で、中国のエネルギー需要全体に対する非化石電源の供給量は18.4%程度となる。このシナリオでは、太陽光、風力発電の25年までの新規導入容量について、各305GW、151GWを想定。ほかに水力と原子力発電容量の緩やかな伸びを想定している。

 再生可能エネルギー導入への中国政府の積極姿勢はセクター全体の支援材料。ただ、同時に送電インフラ整備や地理的な電力需給のミスマッチ、グリッドパリティ(再生可能エネルギーの発電コストが既存の電力コストと同等以下になること)時代における料金制度の不透明感、地方当局の政策動向などがリスク要因になり得るとしている。

 クリーンエネルギー各部門の現状や見通しは以下の通り。まず、太陽光発電は21年の世界需要が前年比33%増の約160GWに達するとみられ、中国のバリューチェーンに恩恵が及ぶ見込み。特に太陽光発電ガラスとポリシリコン製造部門が有力視される。

 風力発電部門では、国内の20年の新規導入ラッシュを受け、21年には導入ペースが減速する見込み。ただ、風力発電銘柄にとっては、未収補助金の回収見通しがプラス。補助金制度の履行が、大唐新能源と龍源電力の再評価につながる可能性がある。

 原発部門はカーボンニュートラルの実現に向け、電力最低所要量の確保を担うベースロードとしての役割を担う見込み。次期5カ年中に30-40カ所の新設認可が下りる可能性がある。力強いキャッシュフローを背景とした安定的なイールドが原発運営銘柄の魅力だが、半面、電気料金の変動が採算性を左右する要因となり得る。

 廃棄物発電に関しては明確な料金政策が存在せず、高効率の大手企業のみが市場シェアを掌握し、一定の投資収益を確保することが可能な状況にある。