世界的な超低金利で2021年の米国市場はこうなる!

 2020年の株式市場は新型コロナウイルスの感染拡大状況に振り回され、当初は最も大きな注目材料になると考えられていた大統領選挙でさえ、相対的には小さな材料となってしまいました。

 ましてや新型コロナウイルス感染が拡大を始めた後でも、株式市場が一時的とはいえ35%もの下落を示すというのは大きなサプライズでした。

 このように市場というのは、あらかじめ予測できなかった事象に対して、より大きく反応するものです。その点では現時点でできる予測というのは、そもそも限界があるものだと思います。この点を理解いただいた上で、現時点で2021年に向けた私なりの予測を示させていただきます。あくまで頭の体操程度にとらえ、皆さまの2021年の資産成長の参考にしていただければと思います。

2021年はこうなる! 10大予測
1 S&P500指数は2021年後半に4,300の高値を付けた後、4,050で年末を迎える
2 株式市場の変動率は年を通じて15を下回る場面はなく、ほぼ20を上回って推移
3 新型コロナウイルスの感染拡大は現在の第3波が最後、2021年初から減少に転じる
4 コロナワクチンが一般に利用可能となるのは2021年6月、ただし万能ではない  
5 2021年を通じて雇用の回復は400万人にとどまり、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策変更はなし
6 資産インフレが顕在化、金価格は年末に2,500ドルをつける
7 ドル/円は2021年前半に106円台をつけた後、年後半には95円方向
8 バリュー株は折に触れて見直されるものの、年を通じてグロース株のパフォーマンスが上回る
9 2021年6月末のストレステスト後に銀行株が上昇
10 米10年物国債利回りの上昇は1.3%台までが精一杯、1%絡みの取引が続く   

1:S&P500指数は2021年後半に4,300の高値を付けた後、4,050で年末を迎える

 超低金利、空前の流動性供給に支えられて、米国の株式相場は引き続き堅調な展開。ただ景気の回復と共に金利の上昇が株式上昇の足かせとなる場面もしばしば訪れる。グロース株の多いナスダックのリスクは上昇サイドにあり、2万ドルを超えるなどのサプライズも想定しておく必要がある。

2:株式市場の変動率は年を通じて15を下回る場面はなく、ほぼ20を上回って推移

 世界的な超低金利を受けて、これまで株式市場にいなかった資金が株式市場に流入してくる。これらの資金は本来、リスクに耐えられないか、非常に敏感な性質の資金。「上がれば買う、下がれば売る」の動きを助長しやすいため、これまでの8年間あったような「ほぼ20以下」という変動率ではなくなる。

3:新型コロナウイルスの感染拡大は現在の第3波が最後、2021年初から減少に転じる

 米国の一日当たり新型コロナウイルス感染者数は2021年1月に50万人台(発表ベースで30万人台)でピークを打ち、減少に転じる。日本は検査が不十分な分、一日当たり感染者数は2021年2月に6万人台(発表ベースで3万人台)にまで急増するも、その後減少に転じる。世界的に見ても2月がピークとなる。

4:コロナワクチンが一般に利用可能となるのは2021年6月、ただし万能ではない

 ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソンエンドジョンソンが開発した新型コロナウイルス・ワクチンは2021年春から一般に順次利用可能となり、希望者に対する接種は2021年秋以降の流行期までには間に合う。ただしインフルエンザ同様、変異した、または違ったタイプのウイルスには対応できず万能ではないため、各製薬会社は順次改良を迫られる。

5:2021年を通じて雇用の回復は400万人にとどまり、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策変更はなし

 新型コロナウイルスをきっかけに失われた「一時的雇用」のほぼ全ては2021年中に取り戻すものの、一時的でない雇用の回復は先延ばしとなる。「雇用の最大化」使命を課されたFRBは2021年中に超低金利、大規模な量的緩和の手を緩めることができず、むしろさらなる緩和策を模索する状況が続く。

6:資産インフレが顕在化、金価格は年末に2,500ドルをつける

  経済が正常化していくに従って、ドルの実質マイナス金利を嫌気した資金が株式市場や商品市場をはじめ、さまざまな市場に流れていく。金価格は年末に2,500ドルを付ける。しかし雇用市場が厳しい状況では賃金の上昇は限定的なため、コアのインフレ率上昇にはつながらず、資産インフレとモノのインフレとのかい離が拡大していく。FRBはこの状況を容認する。

7:ドル/円は2021年前半に106円台をつけた後、年後半には95円方向

 新型コロナウイルスの感染拡大ピークに向けてドル/円は堅調推移となるものの、せいぜい106円台が精一杯。感染が減少に転じると超低金利、空前の流動性の影響が為替相場にも出てきて、年後半にドル/円は95円を付ける。しかし今回は米国だけでなく、日本やヨーロッパでも積極的な流動性供給が実施されているため、2011年のような大幅な円高にはつながらない。

8:バリュー株は折に触れて見直されるものの、年を通じてグロース株のパフォーマンスが上回る

 経済の正常化を受けて、旅行、エネルギー、景気敏感、不動産、金融などのバリュー株が折に触れて見直される場面はあるものの、上昇は「回復」の域を出ない。2021年春には、一部バリュー株とされる企業が存続の危機に直面する場面も。低金利下でのグロースの価値は非常に大きいため、年を通じたパフォーマンスはグロース株がバリュー株を上回る。

9:2021年6月末のストレステスト後に銀行株が上昇

 銀行の貸倒償却額のピークは2021年4-6月期(決算発表は7月)に訪れるが、銀行は既にそれを大幅に上回る貸倒引当金を積んでおり、FRBは各銀行から提出されたほとんどの資本計画をそのまま承認する。2020年に増配・自社株買いが停止されていた分、2021年のストレステスト後に発表される株主還元策は大きく、銀行株は素直に反応、上昇する。

10:米10年物国債利回りの上昇は1.3%台までが精一杯、1%絡みの取引が続く

 経済の正常化と共に米10年物国債の利回りは堅調推移となるものの、上昇した場面では積極的な買いが入る。とりわけ、マイナス利回りで取引されている債券総額が史上最高の17兆ドルに上る中、米国債の1%超えは相対的に魅力的に映り、年を通じて1%絡みの取引に終始する。この結果実質金利はマイナスの状況が続く。