まさかの急上昇相場!早々に手じまいをした人ほど泣いている

 2020年10月末の段階で、11月末の日経平均株価を見事予言できた人がいたら、その人は神がかりの人か、もう未来人でしょう。それくらいこの1カ月の日本株式の値動きは極端なものでした。

 いわゆるコロナ・ショックで急落した日経平均株価が、6月末の段階でほぼ回復をしたところ、しばらくは小さなレンジでの値動きが続いていました。

 そして、世界的にも新型コロナウイルスの感染再拡大が始まり、また米大統領選の不透明さがある中、米国の株価と日本の株価は大きく上昇を始めました。この株価上昇の理由は、大統領選の結果に一応の結末が見られ、また新型コロナウイルスのワクチン開発の報道があったことも影響したのかもしれません。

 そして11月末の終値は2万6,433円となり、10月末の2万2,977円から15%もの大きな上昇を見せることになりました。

 しかし、これだけの急上昇相場でも「2万4,500円! とりあえず売って様子を見よう」とか、「2万5,000円! もう十分だから全額手放しておこう」というようなことを考えた人は、悔し涙を見せていることでしょう。

 ここがピークだと判断したものが、さらにその上をチャートは目指して推移してしまったからで、振り返ってみるとこれほど悔しいことはありません。

 個人投資家にとって、こうした失敗はできれば避けたいものですが、いい方法はないものでしょうか。

「全額売り!」を止めるだけで、投資の選択肢がぐっと広がる

 実は、今まで投資の常識とされてきたもののいくつかは、個人の資産形成では必ずしも常識ではないものであったりします。

投資の勘違い:投資を始めるにあたっては、まとまったお金を用意する

 例えば「投資を始めるにあたっては、まとまったお金を用意する」というのは最たるものでしょう。少額から投資はエントリーでき、特に投資信託がその選択肢となっています。例えば、楽天証券なら100円からのスタートもできます。

投資の勘違い:「全額売り」と「全額買い」を何度も頻繁に繰り返すのが投資

 また、「全額売り」と「全額買い」を何度も頻繁に繰り返すのが投資だと決めつける必要もありません。実は機関投資家になるほど「一部売り」と「一部買い」をやっています。

投資の勘違い:投資といえば個別株が中心

 今まで個別株投資を中心に考えていた投資戦略では、購入単価が大きく、小回りが利かないことが悩みでした。株価1万円の銘柄があったとしても1,000株の単位株であれば、昔は1,000万円なければ購入ができませんでした。このとき「1万株買って、値上がりするごとに100株ずつ手放していく」と言われても、そもそもそんなトレードは個人には困難です。

 また、そこまで1銘柄に資金を集中させれば、今度は分散投資が成立しなくなります。購入単価の問題は、個人投資家にとっては、やりにくい条件の一つでした。

 しかし投資信託を使えば、「部分的な売却」も細かく行うことができます。口数で売却の指定ができるからです。「全額売り!」から卒業することで、実は投資の世界はぐっと広がってくるのです。

相場上昇に乗るテクニック:投資信託やETFなら急上昇時に「一部売る」をやってみよう

 投資信託やETF(上場投資信託)には口数の概念がありますが、これは部分的な売却を可能とする仕組みとして、個人投資家にとってはとても役立ちます。

 そして「一部売る」をやってみると、これはこれで投資のテクニックとして使い勝手もあります。

 取得価格から20%値上がりしている投資信託があったとき、取得口数の「120分の20」を手放せば、購入当初の保有金額は投資を継続しつつ、20%の値上がり分について利益確定をすることになります。

 また、さらに20%くらい値上がりしたら「120分の20」の口数を手放せばいいわけです。個別銘柄で単位株を切り崩していくよりもむしろ無限に投資ができます(口数が割れる限り)。

 といっても、あまり精密な「120分の20」にこだわる必要はないので、「だいたい200口」のようにキリのよい数字ですればOKだと思います。それでも「全部売る!」から卒業する売買テクニックとしては有意義です。

 急な値上がり時にはあなたの投資ポジションは本来の投資計画からオーバーウエートになっていますから、これを部分的に売って調整することはリバランスの観点からも合理的な行動と言えます。

 そして、売らずに残した部分はマーケットとつき合い続けていけば、「もっと値上がりしたとき」はその値上がり益を獲得できますし、「反転して値下がりしたとき」には部分的に利益確定した分が手元に確定して残ります(できれば値下がり時に再エントリーしたい)。

 投資信託はこうした「部分的な売り」を行うには、とても向いている商品であると思います。

 ところで、「一部買う」というようなアプローチは実現済みです。そう、投資信託を積立購入することです。こちらは指定金額で買えるだけの口数を自動的に調整して注文されますから、市場の騰落を気にせず注文ができます。「5,000円で買えるだけください」というわけです。

相場上昇に乗るテクニック:「売る理由」があるなら後悔はするな

 話は変わりますが、わが家の買い物ルールで、禁じ手としていることがいくつかあります。その一つは「買った後に価格.comなどで安値更新をチェックしない」というものです。

 家電などを購入後、しばらくして値段チェックをしてみると、自分が買った後に再値下げしていることはしばしばあります。これに気がつくと悔しい思いを抑えきれません。

 しかし「いま、この値段で買ってもいいのだ」と思って決断したのなら、その後の値動きを参照しないほうがいいはずです。今さかのぼってやり直すことはできないのですし、すでに購入した家電で何らかの満足を得ているはずだからです。

 投資の「売り方」にも似たようなところがあるように思います。あなたがもし「もっと値上がりが続いても、いま全額売ってしまいたい」と思うだけの理由があるのなら、その決断を受け入れ、後から何度も後悔はしないことです。

 例えば、資金ニーズが近づいていて含み損が解消されてホッとしていたとか、想定外の利益が確保できたと感じていて下落リスクを過小評価できないと感じていた人が、そのとき全額売ったのであれば、それはきちんと売却した理由があります。とにかく後悔をしなければいいのです。

 言い換えれば、そうした「売る理由」を自分なりに設定せず、マーケットだけ見て売ってしまったからこそ、後悔がいつまでも残るわけです。そこは反省しておきたいものです。

投資のステップアップ:「部分的に売る」を覚えよう

「部分的に売る」を覚えることは、投資のステップアップとしてはとても有意義なプロセスです。また、こうした急騰の現場を経験することも、個人投資家として成長するプロセスになります。

 ぜひ、2020年11月の市場をどう過ごしたかを振り返り、あなたの糧としてください。