※このインタビューは2019/02/12に公開した記事となります。
投資ブログ「中長期投資で富裕層を目指そう!」やツイッターで、自らの投資術を公開しているアイルさん。会社員時代に成長前のユニクロ株(ファーストリテイリング)などで資産を築き、以来、割安な小型成長株を発掘して中長期投資するというスタイルを貫いています。2003年に会社を退職後は専業投資家として活躍するアイルさんのインタビューを3回にわたってお届けします。
最近の暴落は暴落とは呼べない!
──アイルさんは2003年から投資を本業とされているんですよね。これまでいいときも悪いときもあったと思いますが、ここ最近はどうですか。
いや、やっぱり厳しいですよ。正直、2018年はマイナスでした。
──これだけ株安が続くと不安になりませんか。
いや、それはないです。マイナスといっても大きく目減りしたわけではないですし。それに、何といってもリーマン・ショックを経験していますからね。あのときは今の比ではなかった。さすがにもう底だろうと思って買い増ししたらさらに下がる、みたいなことが何度も続いたり…。あれを思うと最近の暴落なんて暴落とは呼べません(笑)。
──リーマン・ショックではかなりの損失を被った?
はい、だいぶくらいました(笑)。会社を辞めた2003~2005年くらいまでがかなりの上げ相場で、僕が保有していた小型株も絶好調だったんです。リーマン・ショック直前には資産は1億円の大台に乗りました。それが、半分以下に減ったという感じですね。
──半分以下はきついですね。
でも、今思うといい経験ができたかなと。あれがあったから、今回のように、ちょっとやそっとのことでは動じなくなりました。
──2018年末くらいの株安では、まだ余裕があるわけですね。
そうですね、そのうち市況はよくなるでしょうし。ただ、1つ、気がかりがあります。僕は割安成長株を狙って投資しているわけですが、割安な株を見つけるのが以前に比べて難しくなってきていることです。
──そのあたりのことは後で詳しく伺います。その前に投資を始めた頃のことをお聞かせください。
最初に株を買ったのは大学4年のときです。ちょうどバブル全盛期で、新聞には毎日のように「高値更新!」という文字が躍っていました。それで、お小遣い稼ぎができるかなと思い、ある銘柄を買ってみたんです。学生なので金額はたかが知れていましたが、少しだけ増やすことができました。これが最初の投資経験です。その後、就職して多忙になり、投資からはいったん離れたのですが、入社3年も経つと貯金もできたので、再開というか、本格的に始めました。
──最初に買った銘柄は?
某家電量販店の株を買いました。ただし、いろいろ研究してその銘柄にたどり着いたというわけではなく、株主優待目当てです。たまたま家の近くにその店があったので、家電の割引券をもらえるとうれしいなと。
ユニクロ株で1,000万円の利益をあげる
──その後、ユニクロ株で大きな利益をあげるんですよね。購入するキッカケは何だったのですか。
僕は岐阜県生まれなのですが、当時は勤務していた会社の関係で、北九州市に住んでいました。家の近くに、やたらと繁盛している衣料品店があったんです。休日はいつ通りかかっても駐車場に入れないクルマの行列ができている。それがユニクロだったんです。その頃は中国地方や九州に点在していたローカル企業で、全国的にはほとんど知られていませんでしたが、この会社は絶対に伸びるだろうと考え、とりあえず買ってみたんです。
──すぐに値上がりしたのですか。
いえ、僕が買ったとき株価は4,000円前後でしたが、1,000円くらい下がりました(笑)。当時、ユニクロではいろんな新規事業を始めていたのですが、それらがうまくいっていなくて。もっとも、その頃はインターネットが普及していなかったので、毎日株価をチェックしていたわけではありません。気づいたときにはかなり下落していて、これはマズいなと。
──でも、その後、急騰するわけですよね。
はい、たしかフリースが大ヒットしたあたりからものすごい勢いで株価が上昇し、一時は4万円台の値を付けました。大量に保有していたわけではありませんが、それでも1,000万円ほど利益を出しました。
──本格的に投資を始めて間もない頃に、そういう成功体験ができたのは大きかったかもしれませんね。
それは間違いありません。僕は「自分の身近なところで成長しそうな会社を探して投資する」というやり方で資産を築いてきたのですが、そのやり方に行き着いたのはユニクロの経験があったからです。
──アイルさんの投資人生の出発点といえそうですね。
はい、ただし、いい意味でも悪い意味でもですが。
──悪い意味でも?
あのときは株価が下がっても売らなかったから大きな利益を得られました。まあ、下がったのを知らなかったわけですが。その経験があるため、損切りできない体質になってしまったんです(笑)。株価が下がる一方でも、そのうちまた上がるかな、と考えてしまい、売るタイミングを逸してしまう。
──えっ、損切りしないんですか?
いや、どうしようもなくなったらしますよ。でも、売ろうか売るまいか迷っているうちに5分の1、10分の1になってしまうこともあるんです。
──でも、そこから復活することもあるのでは?
いや、ほとんどないですね。5分の1、10分の1に暴落したら、よっぽどのことがない限り、復活はしません(笑)。
──じゃあ、やっぱり早めに決断するに越したことはないと。
そう、それはわかっているんです。でも、それができない(笑)。
──とはいえ、専業投資家になって数年で1億円の利益に到達したくらいなのですから、普段はうまく立ち回っているのだと思いますが。
大量に保有している主力株については慎重になりますよね。その銘柄を取り巻く状況が変わったら、まずは1割ほど売って様子を見、さらに状況が悪化したらもう1割売るとか。それでももう少し保有しておけばよかったとか、もっと早く売っておけばよかっと思うことはしょっちゅうあります。
──それがない人はいません(笑)。
そう。だから、いちいちくよくよしないようにしています(笑)。
自分が理解できない分野の銘柄には手を出さない
──当時、どんな銘柄を買われたのですか?
ゲームが好きだったのでゲーム関連の銘柄も買ったし、地元で繁盛していた飲食チェーンなどの株も買いました。あと、主力の1つだったのがレンタルビデオチェーンのゲオ(ゲオホールディングス)です。
株主優待でCDを安く借りられたらと思い、レンタルビデオ業界について調べたら、業界ナンバーワンだったTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(2011年上場廃止)の株がかなり割高でした。それに対して第2位のゲオは、順調に成長しているにもかかわらず割安でした。
それで少しだけ買って株主になり、6月に半休をもらって株主総会に参加して、疑問に感じた点などを質問しました。経営者に直接質問して疑問点も解消できたので、本格的に買い足していきました。結果、大きな利益を得ることができました。
──身近なところで成長しそうな会社を探すとおっしゃいましたが、衣料品店、飲食店、レンタルビデオ店など、たしかに誰でも馴染みのある業種ばかりですね。
僕は自分が理解できない業種、何をやっているのか聞いてもよくわからないような会社の株を買うのは嫌なんです。その会社が成長しそうかどうかなんて、自分では判断しようがないですから。
──自分の目で見るようにしている?
誰かから教えてもらって買うこともありますよ。でも、その場合も自分で検証しないと買う気にはなれません。自分が理解できない分野だと検証できないから買わないということです。
──いわゆる大型株も買わないのですか?
はい。個人投資家が大きく稼ぐには、誰もが知っているような大型株よりも、地味で知名度もないけれど成長する可能性を秘めた小型株に投資するのがベストだと考えています。
僕が株を始めた頃は、仕事も忙しかったので、熱心に勉強したわけではないんです。それで、会社を辞めたとき、ファイナンシャルプランナーや簿記の講座に通うなど、本格的に勉強しました。で、その頃、ピーター・リンチや、バフェットの本も読みました。そうしたら、身近なところに儲けのチャンスが転がっているといったことが書かれていて、自分がやってきたことは間違いではなかったと勇気づけられました。
──その後、専業投資家になられたんですね。
実は、会社を辞めたときは専業投資家になろうと決めていたわけではないんです。会社の早期退職優遇制度に応募して辞めたのですが、ゆくゆくは再就職しようと漠然と考えていました。でも、いろいろ勉強しているうちに、順調に資産を増やすことができ、専業でいこうと決意しました。
──次回は銘柄の探し方などについておうかがいします。
後編:大幅高株の発掘が投資の楽しみ!5つ主力銘柄の入れ替え方法は? を読む!
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