日経平均は天井サインにあらがうも、さらに買い進めるほど強くはなかった

 先週末12月11日(金)の日経平均は2万6,652円で取引を終えました。前週末終値(2万6,751円)からは99円安、週足ベースでも6週ぶりに下落に転じています。

 11月からの上昇基調がようやく一服したような印象ですが、それでも9日(水)の終値(2万6,817円)がコロナショック後の高値を更新し、29年8カ月ぶりの株価水準を回復する場面もありました。2万7,000円台に届いてはいませんが、しっかり高値を取りに行く動きも見せており、下げ切らない強さも垣間見えています。

 まずは、こうした動きを日足チャートで確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年12月11日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先ほどは、「日経平均が終値ベースでしっかり高値を取りに行った」と述べたばかりですが、あらためて図1の日足チャートで実際の値動きをたどると、違った景色も見えてきます。

 最大のポイントは、週初7日(月)のローソク足です。大きな陰線であることは一目瞭然ですが、5日移動平均線も下抜けた他、前週末のローソク足をすっぽりと包み込む「包み足」になっています。

 株価が高いところでこの包み足が出現すると天井のサインとされ、実際に、翌8日(火)も続落となったのですが、それでも9日(水)に急反発し、再び5日移動平均線を回復させてきました。この日は、英国で新型コロナウイルスワクチンの接種が始まったことや、10月機械受注の結果が予想を上回るなど、社会・経済の正常化への期待が広がったことが背景にあります。そして、その後は週末まで5日移動平均線をキープする動きが続きました。

 結果的に、包み足の出現による天井サインが機能しなかったことになるわけですが、かといって、先週の週間高値が7日(月)の始値(2万6,894円)であることには要注意です。「天井サインにあらがったが、さらに買い進めるほど強くはなかった」ことを意味するからです。

株価再上昇には積極的な上値トライのきっかけが必要

 その買いの勢いですが、ここ最近のレポートで毎回チェックしているボリンジャーバンドでも確認していきます。

■(図2)日経平均(日足)のボリンジャーバンド (2020年12月11日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 これまでのレポートでは、ボリンジャーバンドの上昇一服のサインとして、「+1σ(シグマ)を下抜けるかどうか」に注目してきましたが、結局、先ほどの7日(月)の包み足の出現と同時に下抜けてしまいました。ただ、その後の株価は何とか+1σに食らいついているようにも見えます。

 株価再上昇に向けては、包み足の高値(2万6,894円)と、近くて遠い2万7,000円台がハードルになることと、クリスマス休暇入りのタイミングに伴う薄商いで買いの勢いが弱まる可能性があるため、積極的な上値トライのきっかけとなる材料が必要になってきます。

 仮に、力尽きたとしても、ボリンジャーバンドの中心線である25日移動平均線は先週末時点で、節目の2万6,000円台に乗せている他、先月の急上昇が一服した11月17日の株価水準でもあり、2万6,000円あたりが目先の下値メドになりそうです。

今週は見極めムードが先行

 また、今週は日銀短観や中国の経済指標の公表などが予定される中、15日(火)~16日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)と、17日(木)~18日(金)の日銀金融政策決定会合が開催され、とりわけFOMCにおける追加金融緩和の有無が焦点になっています。

 追加の金融緩和を素直に受け止めて株価が上昇できれば良いのですが、株式市場は追加金融緩和を先取りして既に織り込んだ可能性があります。その場合、緩和アリで「材料出尽くし」、緩和ナシで「失望」売りとなることが想定されます。したがって、今週は見極めムードが先行すると思われます。

 確かに、先ほども述べたように、新型コロナウイルスワクチンの接種開始によって、コロナ克服による社会・経済の正常化への道のりを一歩進めたわけですが、その一方で、コロナ克服が具体的に見え始めたことにより、これまでの期待と現実とのギャップを埋めに行く一面も出てくることになります。

 ただし、その現実は国内外でコロナ感染者の拡大傾向が止まらず、実際の経済活動が制限されるケースも増えているなど楽観できない状況ですし、それに対処する政治面も、米国では追加経済対策を巡る与野党協議が難航している他、国内でもGoToキャンペーンが継続される中で医療崩壊も懸念されるというちぐはぐな状況となっています。政治面で進展がない限り、株式市場はしばらくの間、将来の期待と足元の不安とのあいだで揺れ動くというのがメインシナリオになりそうです。

 実際に、前回のレポートでも紹介したTOPIX(東証株価指数)のギャンアングルでも、下の図3のように、「コロナ克服」ラインとされる青いギャンアングルの8×1ラインを上抜けしきれない状況が続いています。

■(図3)TOPIX(日足)の動きとギャンアングル(2020年12月11日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

マザーズ指数はさえない値動きだが反発の兆しも?

 そんな中、国内株市場では、年末にかけてIPO(新規公開株)ラッシュを迎えます。今週は12銘柄の上場が予定されていますが、日経平均やTOPIXなどが方向感に欠ける展開となった場合、マザーズやJASDAQなどの新興株市場が資金の受け皿として存在感を発揮する展開も想定されます。ちなみに、12銘柄のうち9銘柄が新興株市場の上場です。

 そこで、マザーズ指数の動きについても確認していきます。

■(図4)マザーズ指数(日足)の動き(2020年12月11日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 12月に入ってからのマザーズ指数は、日経平均やTOPIXに比べてさえない値動きとなっています。11月は75日移動平均線に沿って下値を切り上げてきた株価も下抜けてしまい、移動平均線についても、25日と75日との「デッドクロス」が出現したばかりですが、その一方で、下値のメドとして意識される1,150p辺りで下げ渋っており、反発の兆しも見せています。

 米国では、先週10日(木)にNASDAQに新規上場したエアビーアンドビー(民泊仲介業者)の初日の取引が公開価格(68ドル)を大きく上回る144.71ドルで終えていたこともあり、日本国内でもIPOラッシュをきっかけに、チャートの形を好転させられるかが今週の焦点になりそうです。