今回のテーマは信用取引の決済方法についてです。

 信用取引での決済は「返済」が圧倒的に多いです。買い建てであれば売り返済となり、借りた資金を返すために建玉を売却します。また、売り建てであれば買い返済となり、株券を返すために売り建玉の資金を使って株券を買い戻します。言葉の通り、建玉を手仕舞って資金や株券を返済するわけです。返済をして余った分が利益、足りない分は自腹を切ることになり、損失となります。

 この他にも、信用取引の手仕舞いには、「現引(げんびき)」や「現渡(げんわたし)」という方法があります。「現」とは現物(株)のことです。ですので、現物株を引き取ったり、渡したりする方法をイメージすることができますが、まさにその通りです。

 現引とは、買い建玉分の代金を支払い、現物株として保有し直すことです。とは言っても、返済でなく、わざわざ買い建玉を現物株化するメリットはあるのでしょうか?

 例えば、もともと現物株で長期的に保有するつもりだったが、買いたいと思ったタイミングに資金が足りず、とりあえず信用取引で買い建てをし、資金が調達できた段階で現引するというのは意味がありそうです。

 また、短期の取引期間を想定していたが、中長期のトレンドが続きそうと判断し、現引するケースも考えられます。現物株として保有することで、信用取引に比べて資金効率は落ちますが、金利などのコスト負担が軽くなりますし、返済期限も気にすることがなくなります。ただし、こちらは株価の見通しに自信が持てないとなかなか踏み切れません。

 最悪なのは、損失が発生している建玉を保有し、「今は損をしているが、もう少し待てば株価が上がるかもしれない」といったん現引したものの、株価が下落し続けてしまい、塩漬けになってしまうケースです。返済を実行した時点で、これまでの損益がいったん確定しますが、現引はその後も現物株として保有するため、その後の株価の変動でさらに損益が発生することになります。

 なお、多くの証券会社では現引に対して取引手数料がかかりません。また、信用取引の取引手数料が現物株取引よりも安くなっている証券会社もあり、その手数料の差や保有期間にもよりますが、手数料の安い信用取引で買い建てをした後に現引をして、普通に現物株を買うよりも安い手数料負担にするといったことも一部で見られるようです。確かに取引コストへの意識も大切ですが、あまり取引自体を複雑にしても、肝心な建玉の管理が疎かになってしまっては意味がないので、こちらはあまりお勧めしません。

 次回は、もうひとつの決済方法である現渡について見ていきたいと思います。

≫≫1分でわかる信用取引16【信用取引の決済】現引(げんびき)、現渡(げんわたし)とは(その2)

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