2018年からスタートした「つみたてNISA」。2020年6月時点で口座数約244万と広がりつつあります(出所:金融庁、NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査)。

「つみたてNISA」は一般NISAに比べ、投資行動に多くの制約が課せられています。そこには行政当局の明確な意図があるからです。今回はその理由をあきらかにしていきましょう。

 つみたてNISA制度では、投資対象が公募投信とETFに限定されています。これまでNISAで個別株式を吟味して値上がり期待で勝負してきた人にとっては、「投信じゃつまらない」などの声があがっているようですが、これはこの制度の参加者に分散投資を実践してもらうための制約です。たくさんの銘柄やさまざまな地域の株式、複数の資産クラスに投資を行う“分散投資”には投資信託が最適なツールだからです。

“つみたて”に投資行動を限定している理由は、投資タイミングや目先の価格変動に惑わされることなく上がっても下がっても淡々と安定した心持ちで投資を継続するために、適した方法が積立投資だからです。

“20年の非課税期間”という超長期を前提に据えているのは、資産をじっくりと複利で増やしていくことこそが、将来に向けた資産形成に欠かせない要素だからです。20年をメドとした長期投資を参加者に目的化してもらいたいからです。

 金融庁は「つみたてNISA」において、私たち生活者に「長期・積立・分散」という投資行動3原則を掲げて、3点セットでの実践を強く推奨しています。そこに照らし合わせて考えると前述した制約条件の意味が理解できるはずです。

 一方で投資信託の商品提供側に対しては、この制度の登録要件にいくつもの厳しい条件を定めて、6,000本超ある既存商品の大半を対象外とする措置を打ち出しています。具体的にはノーロード商品のみを対象としており、毎月分配型はダメ、そして非インデックス系ファンドには5年以上の運用実績と設定来の資金流入期間の制限を設けました。

 その結果、登録ファンドが当初はたったの15本になってしまったのです。新設が認められるインデックス系ファンドとの合計で160本余り(2019年7月22日現在)が現在つみたてNISA制度の対象商品となっています。それらは20年間継続した長期資産形成というコンセプトの運用にふさわしい商品として、金融庁が認めたメニューと見なすことができます。金融当局は参加者すべてが落伍することなく全員に相応な運用成果を実現して欲しいと考えているがゆえの制約ではないでしょうか。

 こうした政策意図をしっかり得心したならば、それを忠実に履行した人は報われる!「つみたてNISA」は生活者の将来に向けた人生づくりをとても大切な行動と考えた上で用意された、大変重要な国策なのです。あとは皆さんの実践あるのみです。