金融危機回避によって投資家の動きが活発化

 2020年最大の謎は「なぜ、コロナ禍なのに株価が高くなるのか?」というものでしょう。

 まずは新型コロナウイルス感染拡大による大幅な経済活動の制限(=企業業績や消費の極度な落ち込み)によっても、過去のような「金融危機」に陥らなかったことが指摘できます。

 2008年のリーマンショック時には株式市場が「売り一色」となり株価が大幅に下落し、元の状態を回復するために何年もの時を要しました。今回は、各国政府や金融当局による「財政出動」と「金融緩和」によって崩壊を避けることができたのです。

 主要国の大手金融機関が破綻すること(=金融危機)はありませんでした。それを見て「経済は回復に向かうだろう」と考える投資家が増えていきました。その様子は日経平均株価の動きを見ると一目瞭然です。

・日経平均株価の週足2年チャート

緑:単純移動平均(13週)
赤:単純移動平均(26週)
青:単純移動平均(52週)

 コロナ安から元の水準にほぼ戻るまで約3カ月半しかかかっていないことがわかります。

 ただ、コロナによる世の中の変化に伴い、株式市場にも変化が表れました。日経平均が回復していく過程では、「コロナ禍を追い風にした銘柄」、「さらに優位性が際立つ格好となった優良株」などが目立って買われました。その一例を示します。

ウエルシアホールディングス(3141)の週足2年チャート

 ドラッグストアチェーン。マスクや消毒液が飛ぶように売れました。

赤:上段/株価移動平均(13週)下段/買信用残
青:上段/株価移動平均(26週)下段/売信用残
緑:上段/株価移動平均(52週)

任天堂(7974)の週足2年チャート

 巣ごもり消費でゲーム業界には追い風が吹きました。

赤:上段/株価移動平均(13週)下段/買信用残
青:上段/株価移動平均(26週)下段/売信用残
緑:上段/株価移動平均(52週)

日本電産(6594)の週足2年チャート

 精密小型モーターの世界トップ企業です。東京市場でも有数の優良株です。

赤:上段/株価移動平均(13週)下段/買信用残
青:上段/株価移動平均(26週)下段/売信用残
緑:上段/株価移動平均(52週)

まだ『バブル』からは程遠い印象

 11月以降の日経平均株価の一段高は「米国大統領選終了に伴う不確実性の消失」と「早期開発されたコロナワクチン好感」と見られます。そうした状況下、企業経営者の意識も改善しているようです。

 12月14日に日本銀行が発表した12月の「短観」は、代表的指標とされる「大企業・製造業の業況判断指数(DI)」が、前回9月の同調査より17ポイント改善してマイナス10となりました。マイナス圏は脱していないものの新型コロナウイルス感染拡大を受けて急落した6月調査を底に、景況感が2四半期連続で持ち直しています。

 日銀短観は、日本銀行が年4回(3、6、9、12月)、景気の現状と先行きについて企業に直接アンケート調査を行うもので、日本の経済を観測するものとされています。株価だけでなく、企業経営者の意識も上方に向かっていると捉えることができます。

 株価が下落している局面よりも、上昇している局面で投資家が活気づくのは過去にも見られたことです。多くの投資家が株式投資で結果を出し、得た利益で再投資を行うことで株価はさらに上昇していく性質を持ちます。

 他方、株価に先高観(企業業績の改善などが背景)があると、投資家はできるだけ株を売らず、長く保有して含み益を大きくしようとする傾向が強くなります。結果的に株式市場に流通する株が少なくなり、それを多くの投資家が奪い合うことによって「バブル」と言われる現象が発生する可能性が出てきます。

 過去の例でとくに興味深いのは「バブル現象」が起こると、その最終局面でもっとも株価が大きく上昇することです。その時には、あちこちで「株式投資」の話題が積極的にされていると想像できます。あっちを向いてもこっちを向いても株の話がされているような世の中を指します。

 現状、それには遠いですが、一部では「人知れず割安圏にいた銘柄」、「業績低迷から脱出しそうな銘柄」を安値で買う動きは見られています。

 ここでは世の中と株式市場の変化を反映し、加えて、まだ割安圏にあると思われる銘柄の中から10万円で投資可能な銘柄を紹介します。

世の中と株式市場の変化を反映し、まだ割安圏にある10万円株

 株価データは2020年12月16日終値ベース。

日産自動車(7201・東証1部)

 大手自動車メーカー。世界的な環境重視政策によって同社が国内草分けとなる「EV(電気自動車)」の普及に勢いがつくと見られています。

・2年間の週足チャート

赤:上段/株価移動平均(13週)下段/買信用残
青:上段/株価移動平均(26週)下段/売信用残
緑:上段/株価移動平均(52週)

大紀アルミニウム工業所(5702・東証1部)

 アルミニウム二次合金地金の国内トップ企業です。中国の早期景気回復を背景にフル操業が続いています。非鉄金属株全般、動意が見られます。

・2年間の週足チャート

赤:上段/株価移動平均(13週)下段/買信用残
青:上段/株価移動平均(26週)下段/売信用残
緑:上段/株価移動平均(52週)

日立造船(7004・東証1部)

 ゴミ焼却発電施設など環境・プラントを柱に船舶用機器などを展開しています。長く割安圏にいたものの、全体相場の上昇によって見直されつつあります。

・2年間の週足チャート

赤:上段/株価移動平均(13週)下段/買信用残
青:上段/株価移動平均(26週)下段/売信用残
緑:上段/株価移動平均(52週)

丸紅(8002・東証1部)

 総合商社大手の一角で、穀物や発電分野で強みを持ちます。「総合商社株」は幅広い業態から景気に敏感に反応するセクターとされ、景気回復局面では注目度がアップします。

・2年間の週足チャート

赤:上段/株価移動平均(13週)下段/買信用残
青:上段/株価移動平均(26週)下段/売信用残
緑:上段/株価移動平均(52週)

ブロードリーフ(3673・東証1部)

 整備・板金・リサイクル・部品卸などで構成される自動車アフター市場向けの業務アプリケーション販売が主力事業です。業者間の部品流通ネットワークに特長があります。

・2年間の週足チャート

赤:上段/株価移動平均(13週)下段/買信用残
青:上段/株価移動平均(26週)下段/売信用残
緑:上段/株価移動平均(52週)

著者によるこの記事の解説音声はこちら(soundcloudサイト/11分30秒)