2021年の株高期待銘柄はテーマ株に注目

 現状の日経平均の予想PER(株価収益率)は24~25倍程度となっていますが、コロナ禍以前は14~15倍程度の水準でした。ここから考えても、2022年3月期の企業業績は5割以上の増益が優に織り込まれている計算となります。

 コロナウイルスワクチンの接種開始による世界的な景気回復は想定されますが、2022年3月期の業績見通しが一段の株価上昇につながるのは、極めてハードルが高いと考えます。とりわけ、足元の好業績が株高材料につながっていた銘柄は、好業績があらためて株価材料になりにくいとみられます。

 こうした状況下、2021年の株高期待銘柄としては、ストレートな好業績銘柄よりもテーマ株などに注目したいところです。特に、日米ともにトップが代わったばかりのタイミングとあって、政策関連のテーマ性は高まりやすく、長期化しやすいものと考えます。

 米バイデン政権では、代替エネルギーなどの「環境」にスポットが当たっています。国内でも、このテーマに沿った「EV(電気自動車)」「水素」などが注目され、「EV」は実際に市場が拡大フェーズに入ることも、物色を長期化させるものと考えます。

 また、代替エネルギーでは、太陽光よりも風力や地熱発電などに新味があるでしょう。ほかにも、国内では「規制緩和」「銀行再編」「行政デジタル化」などが引き続き注目されます。

 こうした政策関連のほか、新型コロナウイルス感染拡大をきっかけとした新しい生活様式の定着で、メリットが長期化するような銘柄の選別も進むとみられます。これに関しては、テレワークや住環境への意識の高まりなどに注目したいところです。

 なお、株価の大化けを狙うにあたっては、大企業よりも株価がオーバーシュートしやすい中小型株に期待すべきであり、売り時が重要であるといえます。高値から一定水準下落したら売却するようなロスカット水準などを設定しておく必要があるでしょう。

 以下、オーバーシュートによる株高期待を高めたい10銘柄を取り上げています。なお、株価や時価総額、配当利回りは12月4日現在のものです。

利回り3%以上、2021年株高期待の中小型株10銘柄

コード 銘柄名 市場 株価 配当利回り 時価総額
2124 JACリクルート 東1 1,883 4.25 777.53
3294 イーグランド 東1 768 4.95 48.99
3388 明治電機 東1 1,397 3.58 168.58
4623 アサヒペン 東2 1,782 3.09 82.38
5915 駒井ハルテック 東1 1,734 3.46 86.23
7467 萩原電気HD 東1 2,472 3.03 222.92
7711 助川電気工業 JASDAQ 600 4.00 35.22
8140 リョーサン 東1 1,929 3.11 482.25
8349 東北銀行 東1 1,069 4.68 101.66
9686 東洋テック 東2 1,000 3.00 114.4
※データは2020年12月4日時点。
※配当利回りは予想、単位は%。時価総額の単位は億円。

JACリクルート(2124)

市場:東証1部、株価:1,883円、時価総額:777.53億円

 人材紹介大手の一角で、配当利回りは4.25%となっています。

 菅新政権の政策の要となるのは「規制緩和」であり、その最も期待される着地点であるのが「解雇の金銭解決制度」の実現であると考えます。これによって最もメリットを受けるだろう銘柄として中期的に注目します。

「雇用」の分野は最大の岩盤規制の一つであり、菅政権の改革進展次第ではこうした分野への切り込みも期待されてくるでしょう。「解雇の金銭解決制度」が実現した場合は人材の流動化が一層進むとみられるほか、外資系企業の日本進出が活発化する余地も広がってくると考えられます。

 同社は、語学に堪能な人材や外資系企業に強みを持つ人材紹介会社であり、高いスキルを持つ人材の流動化、外資系企業の日本進出などによる活躍余地は大きいとみられます。

イーグランド(3294)

市場:東証1部、株価:768円、時価総額:48.99億円

 中古再生販売を手掛ける住宅会社で、配当利回りは4.95%となっています。

 新型コロナウイルス感染拡大によって、テレワーク導入機運や外出自粛ムードが高まり、在宅時間が長期化する流れとなっています。これにより、都心から郊外へ、賃貸から保有へと「家」に対する見方も変化しつつあるとみられます。

 中古住宅のため、同社の居住用物件は約6割が2,000万円を切る物件で占められており、一次取得層向けが中心となっているので、こうした消費者の意識の変化がストレートにプラスに作用すると考えられます。

 実際、業界統計では、10月の首都圏中古マンション市場の成約件数は、10月としては1990年のデータ収集以降で過去最高となっているもようです。2021年3月期にかけては、高い収益成長が実現する可能性も高いとみられます。

明治電機(3388)

市場:東証1部、株価:1,397円、時価総額:168.58億円

 制御機器や産業機器、計測機器の専門商社で、配当利回りは3.58%となっています。

 自動車生産は足元で想定以上の回復ペースとなっていますが、とりわけ、トヨタ自動車の販売好調が際立っています。売上の過半がトヨタグループ向けで占められている同社にとっては、追い風になると言えるでしょう。

 自動車部品ではなく生産財が主軸となるため、自動車生産の動向には遅行しますが、2021年3月期には、トヨタグループの設備投資拡大に伴う業績寄与が大いに期待できるでしょう。

 検査システムや計測システムなども幅広く手掛けているため、自動車電動化や自動運転化といった自動車業界の研究開発投資が拡大しやすいこともメリットといえます。EV関連評価システム電池充放電試験なども手掛けています。

アサヒペン(4623)

市場:東証2部、株価:1,782円、時価総額:82.38億円

 家庭用塗料の最大手企業で、配当利回りは3.09%となっています。

 家庭用塗料では国内シェア3割を占めるとされる最大手企業であるほか、ガーデニング用品などのDIY用品も幅広く手掛けています。新型コロナウイルス感染拡大を契機とした自宅生活の充実欲求、並びにDIYの市場拡大で、最もメリットを受け得る銘柄の一つともいえるでしょう。

 足元の業績は好調で、今上半期は77%の営業増益となり、2021年3月期通期でも5割超の増益を見込んでいます。

 さらに直近では、発行済み株式数の5.4%に当たる22万株、4.40億円を上限とする自社株買いの実施も発表しています。通常の流動性が乏しい中、当面の需給面での下支え要因につながるとみられるほか、会社側の株主還元強化に向けた意識の高まりとしても注目されます。

駒井ハルテック(5915)

市場:東証1部、株価:1,734円、時価総額:86.23億円

 橋梁大手の一角で配当利回りは3.46%となっています。

 電力部門の温暖化ガス排出を2035年までにゼロにする目標を掲げているバイデン氏が米大統領に決まったほか、国内でも、菅総理が2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすると表明しています。

 代替エネルギー関連銘柄は2021年にも折に触れて、物色の主要テーマになっていくことが見込まれます。同社は日本型仕様風車『KWT300』を開発するなど、風力発電関連事業を積極的に展開しています。同製品は耐風性、耐雷性、耐震性などを兼ね備えるほか、輸送・施工性が高いことも特徴となっています。

 また、2021年3月期の高い収益変化率なども注目されます。比較的足元の株価は堅調ですが、PBR(株価純資産倍率)水準は0.3倍にも満たないなど、極めて割安感が強いとも指摘できます。

萩原電気HD(7467)

市場:東証1部、株価:2,472円、時価総額:222.92億円

 半導体などの電子部品商社で配当利回りは3.03%となっています。

 自動車業界向けの売上比率が高く、中でも、デンソーを中心としたトヨタ系が主要ユーザーとなっています。デンソーはインバーターの拡大が期待されるなど、電動化によるプラス寄与が大きい自動車部品メーカーです。関連性の高い同社も電動化の恩恵が期待できるでしょう。

 さらに、デンソーでは、アイシン精機、アドヴィックス、ジェイテクトなどと自動運転・車両運動制御等のための統合制御ソフトウエアを開発する合弁会社も設立しており、自動運転の分野でもメリットが期待されます。

 ちなみに、デンソーは同社の最大仕入れ先となるルネサスエレクトロニクスの第2位株主ともなっています。デンソー、そしてトヨタグループとの関係強化が今後も強まっていく方向性が予想されます。

助川電気工業(7711)

市場:JASDAQ、株価:600円、時価総額:35.22億円

 研究開発型の精密機器メーカーで、配当利回りは4.00%となっています。

 ニュートリノ振動の検証に使用する「電磁ホーン」を文部省高エネルギー物理学研究所へ納入した実績があるほか、超電導材料の開発や原子力関連機器でも豊富な実績があるなど、研究開発型で技術開発力の高い企業と位置付けられます。

 また、レアメタルに依存しない電池としてナトリウム電池などの開発が進められていますが、同社では電磁流量計や電磁ポンプなどナトリウム関連製品なども手掛けていますので、同分野の展開力に関心が高まる場面も到来する可能性があります。

 2020年9月期は赤字に転落しましたが、半導体製造装置関連製品などのウエートも高いため、2021年9月期黒字化回復の確度は高いものとみられます。

 核融合超伝導トカマク型実験装置の統合試験運転が開始されることで、関連案件の需要も見込まれているもようです。

リョーサン(8140)

市場:東証1部、株価:1,929円、時価総額:482.25億円

 半導体商社大手の一角で、配当利回りは3.11%となっています。

 同社は独立系の専門商社ですが、今後半導体商社の再編が進展するものとみられ、スケールメリットの拡大や競争環境の緩和などが期待できます。

 同社はルネサス製の製品が中心ですが、上場企業では他にも、新光商事、立花エレテック、グローセル、菱電商事、萩原電気などルネサス製品主体の企業が多く残っています。佐鳥電機や三信電気などルネサスの商権解消の動きも出てきていますが、今後さらに代理店数を縮小させるならば、商社間での統合の動きなどにつながるものとみられます。

 株価は安値圏で推移し、2013年以来の低水準に沈んでいます。主体となる車載向けビジネスは、自動車生産の回復で今後回復が期待できるため、あまりにも株価は売られ過ぎの水準と考えられます。

東北銀行(8349)

市場:東証1部、株価:1,069円、時価総額:101.66億円

 岩手県地盤の地方銀行で配当利回りは4.68%となっています。

 かねてより携帯料金の引き下げ政策を主張してきた菅政権が誕生し、NTTによるドコモの完全子会社化、ドコモの格安新料金プラン発表などにつながりました。これにより、菅首相が以前から必要性を訴えていた「地銀の再編」も今後進展していく可能性が高まる状況になってきたといえるでしょう。

 とりわけ、地銀の再編においては、地方銀行同士の統合・合併を独占禁止法の適用除外とする特例法が成立したこともあって、地域内での統合が進んでいくとみられます。経済規模に対して地銀の数が多い地域での再編が予想され、岩手銀行、北日本銀行など乱立する岩手県地盤の地銀の一角として同行が注目されます。

 ちなみに、同行は仙台本社のフィデアHDとも包括業務提携の関係にあります。時価総額が低水準で再編プレミアム期待は高まりやすいでしょう。

東洋テック(9686)

市場:東証2部、株価:1,000円、時価総額:114.40億円

 警備業界の一角で配当利回りは3.00%となっています。

 警備各社に関しては、2021年の東京五輪開催に伴い特需の発生が予想されます。同社は関西地域が地盤とはいえ、市場全体のパイが一時的に拡大するため、少なくとも競争条件の緩和は想定されることになります。

 また、新型コロナウイルス感染拡大の収束度合いがカギになりますが、五輪開催に伴う訪日観光客拡大は関西地区にも波及効果が期待され、インバウンド対応需要も増加すると見込まれます。

 そのほか、2025年の大阪万博開催が正式に決定されており、関西地盤の同社には関連の警備需要がストレートに拡大するものと考えられるでしょう。さらに、警備業界の構造的な需要の拡大要因として、カジノの開設なども挙げられます。菅政権下で統合型リゾート(IR)がどのように進展していくのかも注目されます。