毎週金曜日夕方掲載

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2021年の日米テクノロジー株5大テーマ
1 半導体:過去最大の半導体ブームにグローバル投資で臨みたい
2 ゲーム:ソニーはPS5で究極のエンタテインメントを目指す
3 エンタテインメント:配信は我らの文化を豊かにする
4 通信:NTTが仕掛ける価格競争
5 インターネット:アメリカ企業はバーチャルカンパニーを目指す?

 

テーマ1:半導体-過去最大の半導体ブームにグローバル投資で臨みたい-

1.過去最大の半導体ブームが到来するだろう

 今回は、年末恒例のトウシル企画の一環として、テクノロジー株投資の観点から見た2021年の5大テーマについて書きます。いつものようにセクターと企業を分析して株価を予想するのではなく、大きな流れから2021年の、あるいは今後数年間のテクノロジー株投資のテーマを論じたいと思います。そのため、私がカバーしていないセクター、分野についても書くことになります。

 また、今私の頭の中にある、厳密な分析をする前の2021年のラフスケッチをお見せするため、読者の皆さんから見て独断偏見、誤解曲解もあると思います。読者の皆さんには、批判的に咀嚼していただきたいと思います。

 まず、半導体からです。世界半導体出荷金額(3カ月移動平均)の動きを見ると、前回のブームは2018年10月にピークに達し、2019年4月に底を打ちました。そして、2019年11月まで小幅の上昇がありましたが、その後新型コロナ禍による不況の影響を受けて再び調整し、2020年6月に再び大底を打ちました。その後は、5Gスマホ、高性能パソコン、高性能サーバー、新型ゲーム機などに向けた高性能半導体(CPU、GPU、メモリ等)の増産により、本格的な再成長に向かっていると思われます(グラフ1)。

 今回のブームもこれまで同様、過去最大のブームになると思われます。前回のピークをどの程度上回るのかはまだわかりませんが、過去最大のブームである前回ブームを上回るとすると、今回も相当大きなブームになると思われます。

 今回のブームのけん引役は、前回ブームとあまり変わらないと思われます。5Gスマホ、インターネット・データセンターが前回同様大きな需要先ですが、それにテレワークの普及によって高性能パソコンが加わると思われます。また、新型ゲーム機(PS5、Xbox series X/S)とそれらのソフトを製作する際に使う画像処理用パソコンが半導体の需要先として重要になると思われます。

 ただし、自動運転(人手をほとんど介さない完全自動運転)や工場の完全自動化に関連する高性能半導体(高性能AIを駆動するもの)が半導体市場のけん引役の一つになるのは、次のブームになると思われます。これは完全自動運転と工場の自動化が難しいテーマだからです。逆に半導体にはまだまだ大きいテーマがあると言えます。

グラフ1 世界半導体出荷金額(3カ月移動平均)

単位:1,000ドル、注:2015年3月から「アジア太平洋・その他」から「中国」を分離、出所:SIA(米国半導体工業会)より楽天証券作成

2.もともとグローバルな半導体セクターに対してグローバル投資で臨みたい

 このように2021年の半導体市場は飛躍の年となりそうです。この大きな動きを、日本株だけでなく、グローバル投資で獲得したいと思います。

 というのは、日本の半導体関連株には偏りがあるからです。日本の強みは半導体製造装置と半導体素材です。しかし、半導体セクターの代表格である大手デバイスメーカーは日本にはキオクシア(旧東芝メモリ、未上場)しかありません。TSMCは台湾、サムスンは韓国、インテルはアメリカの会社です。特にアメリカにはAMD、エヌビディア、テキサス・インスツルメンツなどの大手デバイスメーカーが集まっています。

 また、半導体製造装置では、日本には東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテックのような素晴らしい会社がありますが、海外にも、世界で唯一のEUV露光装置メーカー、ASML(オランダ)、世界最大の半導体製造装置メーカー、アプライド・マテリアルズ(アメリカ)、世界最大の半導体検査装置メーカー、KLAなどの有力メーカーがあります。

 また、ロジック半導体の設計に不可欠なEDA(エレクトロニック・デザイン・オートメーション。半導体の自動設計システム)は、シノプシス、ケイデンス・デザイン・システムズ、メンター・グラフィックス(未上場)のアメリカ企業3社が高いシェアを持っています。特に上場企業のシノプシス、ケイデンス・デザイン・システムズの2社のソフトウェアラインナップが優秀と言われています。

 このように、半導体ブームの投資成果を存分に獲得するには、グローバル投資、特に、日本株とアメリカ上場株への投資が重要になってくると思われます。表1は半導体セクターの中で日本株とアメリカ上場株を比較したものです。日本株とアメリカ上場株を組み合わせて投資してみたいと思います。

表1 日本と世界の半導体関連企業(主要企業のみ)

出所:楽天証券作成
注:シルトロニックはフランクフルト中心に欧州市場に上場。

テーマ2:ゲーム-ソニーはPS5で究極のエンタテインメントを目指す-

1.究極のエンタテインメントとは何か

 これは全く私個人の意見ですが、エンタテインメントの究極の姿には2種類あると思います。有名なテレビシリーズである「スタートレック・ボイジャー」には「ホログラム」という遊びがでてきます。未来技術で空気中の分子、原子を再構築して映画やドラマのセットと登場人物を再現し、自分がその映画、ドラマの中の主役や脇役として遊ぶというものです。私は、これがエンタテインメントの一方の極だと思います。

 未来技術で空気中の分子、原子から物質を作り出すことは、仮にできたとしても数百年以上先の話だと思います。しかし、疑似体験として映画やドラマの中に入っていくことは技術的に可能になり始めています。プレイステーション5、Xbox series X/Sのような高性能ゲーム機の能力を存分に引き出すゲームは、まさに映画の中で遊ぶ感覚になるゲームになると思われます。

 もう一つ必要な技術はディスプレイです。映画の中で主人公を疑似体験するには、10K以降のディスプレイが必要になると思われます。これは10Kから過半数の人の目が錯覚を起こして画面上のものが立体に見えるようになるためです(立体視)。8Kではうっすらと立体視になりますが(人によります)、10Kからははっきりと立体視になる人が増えます。ソニーではテレビについて8K以降のテレビをいつ発売するのか、ロードマップを公表していないため、8K、10Kの発売がいつなのか不明です。ただし、10Kテレビが発売されるときには、ゲームのみならず、エンタテインメントの世界が大きく飛躍するのではないかと思われます。

 もちろん、この革命はPS5だけでは無理かもしれません。実は私は3~4年後にPS5の上位機種(PS5Pro?)が発売される可能性があると考えています。CPU、GPUはその場合3ナノのデザインルールになる可能性があります。また、7~8年後にはPS6が出ると考えています。ゲーム機とゲームソフトの技術革新に対して通信の技術革新が追い付かないため、PS5の能力をフルに生かしたゲームソフトをクラウドで配信することは当面不可能と思われます。コンソール(家庭用ゲーム機)はこれからも生き続けると思われます。

2.つまり、中長期ではソニーだと思うのです。

 エンタテインメントのもう一つの極は、将棋、囲碁、チェスだと思います。そして、この分野は近年AIを取り入れることによって新戦法の研究が急速に進んでいます。

 要するに、エンタテインメントの両極で急速に先端技術を使った進化が進行中だということです。これは今に始まったことではありません。失敗しても謝れば済むエンタテインメントの世界は、歴史的にコンピュータやAIなどの先端技術の実験場だったのです。この傾向は最近になってより速いスピードで進んでいると思われます。

 では任天堂はどうかというと、枯れた技術のみを使い先端技術を使わない任天堂は、通常のエンタテインメントとは異なる独自の世界を構築している会社だと思います。任天堂のゲームの歴史を紐解くと、大衆受けしてゲームが大ヒットした時期もあれば、そうでない時期もあります。

 後述しますが、日本では遊びの世界に関しては巣ごもりが終わり始めています。巣ごもりが終わった後の任天堂のゲームに対する需要に対して、私は期待できるとは考えていません。また欧州では巣ごもりが再開していますが、深刻な不況の中で果たして1回目の巣ごもりの時のように多くの人々が家庭用ゲーム機を買おうとするのか、私は不透明であると考えています。

 これははっきり言って、遊びというもの、ゲームというものをどう捉えるかということにつながることですが、これまでのエンタテインメントの歴史を振り返れば、一般大衆はテクノロジーをふんだんに使った遊びを支持してきました。ソニーのPS5はこれまでのゲーム機から大幅に性能を向上させることによって、これまでとは違うゲームを世の中に出していくことになると思われます。つまり、映画の中に入っていくゲームです。

 つまり、中長期投資として2021年のゲーム株を見る場合は、ソニーだと思うのです。

 なお、11月にソニー・インタラクティブの幹部の一人がメディアに語ったことによれば、PS4ユーザーがPS5に転換するのに、3年かかるということです。PS4ユーザーは現在約1億人で、今期のソニーのPS5販売台数予想は760万台以上ですから、来期は年間2,500~3,000万台のPS5ハードウェアの供給が期待できると思われます。ソニーの業績に注目したいと思います。

グラフ2 ソニーのゲームサイクル:プレイステーションの販売台数

単位:万台、出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

テーマ3:リアルエンタテインメント-配信は我らの文化を豊かにする-

1.日本ではリアルエンタテインメントが復活しつつある

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、今年2月から始まった「巣ごもり」ですが、エンタテインメントの世界では6月から段階的に正常化に向かっています。まず、映画館で1席ごとに空席を設けての座席の販売が6月から再開されました。劇場でも同様のやり方で7月頃から座席販売が再開されました。一部の劇場で感染があっただけで、映画館、劇場での感染はなかったため、9~10月から全席販売を再開する映画館、劇場も出てきました。

 ただし、感染が怖い観客もあり、客足は映画館、劇場ともに必ずしも芳しいものではありませんでした。映画館が満席になることはまれで、演劇では著名演出家、著名俳優陣の演目であっても当日券がスムーズに買えるという、新型コロナ前では考えられなかった状況が見られました。

 この状況を一変させたのが「鬼滅の刃」です。人気漫画を原作とした「鬼滅の刃」のアニメ映画(製作はソニー・ミュージック子会社のアニプレックスなど、配給はアニプレックスと東映)は、10月16日に公開されましたが、大変な人気となり、映画館に人が押し寄せる事態となりました。その結果、「鬼滅の刃」以外の映画も人が入るようになり、日本の映画市場が一気に復活したのです(グラフ3の東宝映画営業部門月次収入の急増は「鬼滅の刃」の配給増加が寄与している。同じく映画興行部門の増加はTOHOシネマでの「鬼滅の刃」興行が寄与している)。

 映画の動きが演劇にも好影響を与えると思われます。映画館が大丈夫なら劇場も大丈夫ということです。

 次の問題は音楽ライブです。今の政府のガイドラインでは、大声を上げない場合は、会場の収容率100%以内で、収容人数1万人超の場合は収容人数の50%、収容人数1万人以下の場合は5,000人が人数上限となります。また、1,000人以上のイベントの場合は事前に各自治体(都道府県)に相談する必要があります。

 私が音楽ライブで注目しているのが、12月18~20日の3日間、日本武道館で開催される「乃木坂46 アンダーライブ2020」です。乃木坂46(レーベルはソニー)のシングルの表題曲を歌っている人たち以外のメンバー(アンダーメンバーと呼ぶ)によるライブです。毎年1回程度、約1万人規模で2日間行うところを、今年は1回5,000人で3日間開催されます(日本武道館の収容人数はライブ開催時で1~1.1万人)。いつものことですが大変な人気で、チケットの一般販売は約5分で売り切れました。感染防止策は国のガイダンスに沿ったものになっており、席の前後左右の間に空席を設けて、声を出しての応援は禁止になっています(なお、このライブは3日間配信も行います)。

 レコード会社や芸能プロダクションの中には、感染拡大が止まっていない今の時期のリアルライブに消極的な会社も少なくありません。また、日本での新型コロナウイルス感染症の感染拡大が今後どうなるのかも重要な点です。乃木坂46のライブが感染者を出さずに成功するかどうか注目されるところです。

グラフ3 東宝:映画部門月次収入

単位:百万円、出所:会社資料より楽天証券作成

2.音楽と演劇で「配信」が普及中

 もちろん、今の感染拡大状況を見ると、リアルエンタテインメントの完全復活にはまだ時間がかかりそうな雰囲気もあります。そこで、リアルエンタテインメントを補完する「配信」に注目したいと思います。

 実質的に今年2月下旬から始まった巣ごもりの中で、エンタテインメントにとって新しい試みになったのが、音楽ライブ、演劇などのインターネット配信です。それまでは、音楽ライブも演劇も、チケットが入手できなければ一部のリセールサイトで高額転売されているチケット(違法です)をリスクを冒して買うか、諦めるしかありませんでした。しかし、配信が普及してきたことで、臨場感に限界はありますが、好きなライブ、演劇を見ることができるようになりました。

 私から見て音楽ライブの配信で、重要な転機となった配信が二つあります。一つは無料配信ですが、「乃木坂46 幻の2期生ライブ」で3月7日にSHOWROOM(アーティスト、アイドルの配信サイト)で配信されました。同日に開催予定だった「乃木坂46二期生ライブ」(収容人数約1万人)が中止になったため、その代わりに開催されたものですが、大盛況で40万人以上が視聴しました。

 もう一つ重要なのが、「サザンオールスターズ」(所属はアミューズ)が6月25日に行った有料の無観客配信ライブです。横浜アリーナを借り切って開催されましたが、チケット代3,600円、チケット購入者約18万人、推定視聴者約50万人と大成功しました。このサザンオールスターズの配信ライブが成功したことによって、多くのアーティストの配信への姿勢が前向きなものへ変わったと言われています。

 配信には問題もあります。リアルライブに比べるとグッズ類の売れ行きは悪いもようです。また、1つのチケットで数人が視聴する問題もあります。後者の問題は解決が難しいです。一方で、配信の中身は高度化しており、ステージをカメラで単に映すだけのものではなく、比較的大きな会場全体を使って凝った演出をするものが出てきました。また、ファンクラブ限定でアフタートークやアンコールを配信するケースもあります。その場合、チケット代が一般販売よりも高くなります。

 リアルライブに比べると、会場警備等の費用がかからないため、採算は大きく悪くはないと思われます。また、リアルライブと配信を組み合わせると、収益の補完になります。実際に、音楽ライブから演劇まで配信を何件か見てみると、リアルライブに行きたくなります。リアルライブと配信は相乗効果があると言ってよいでしょう。

 この分野でもソニーが注目されます。また、アミューズ、東宝にも注目したいと思います。

表2 2020年の主な有料音楽ライブ配信

出所:楽天証券作成
注:ソニー、アミューズに関連するものから選んだ。

テーマ4:通信-NTTが仕掛ける価格競争-

1.NTTドコモの「ahamo(アハモ)」をどう評価するか

 2020年12月3日、NTTドコモは新料金プラン「ahamo(アハモ)」を発表しました。携帯電話料金の新体系です。概要は次の通りです。

  • 月間容量20GBで月額2,980円。
  • 2021年3月からサービス開始。オンラインのみで受付。対象年齢は20歳以上。
  • 1GBの容量追加で500円。5分以内の国内通話は無料。国内電話のかけ放題オプションは1月1,000円。
  • 4Gと5Gネットワークが使える。
  • 事務手数料は無料。
  • 世界82か国で20GBが利用できる。
  • キャリアメールは利用できない。

 全くの私見になりますが、アハモは画期的な料金体系です。これまで何年間も市場シェアがじりじりと下がっていたNTTとNTTドコモが反撃に打って出たのです。これは大きな変化と言うべきでしょう。

 また、NTTドコモでは、既存の料金体系の値下げも検討しているもようです。ただし、ニュースを読むと、大きな値下げにはならないかもしれません。

表3 移動系通信の契約数シェア

単位:%
出所:総務省
注:MVNOには3大キャリアの系列を含む。

2.日本の通信料金は大幅に下がるか

 アハモには足りないものもあります。通信会社が提供するキャリアメールは使えません。このキャリアメールが使えないということについては、年齢層によって評価が分かれているようです。若い世代は、キャリアメールはいらないと考える人が多いもようです。メールは、フリーメール、SNS、プロバイダーメールなどを使えばよいということです。私はキャリアメールは必要と考えていますが、これは一部の有料ニュースサイトなどでキャリアメールが認証手段になっているためです。そうでなければ、キャリアメールはなくても構いません。

 様々な考え方があるとは思いますが、アハモはまず20代、30代に普及すると思われます。その後、40代、50代にも普及していく可能性があります。そうなれば、日本の通信料金全体に下方バイアスがかかる可能性があります。20GBの月間容量は大きすぎるというユーザーも多いと思われますが、その場合は、容量と価格を引き下げたプランができる可能性もあります。

 ITmedia 2020年12月1日付けの記事によれば、2020年11月時点で日本のスマートフォンユーザーが通信会社に払っている平均月額料金は、3大キャリアユーザー(NTTドコモ、au、ソフトバンクのユーザー)が8,312円、格安SIMユーザーが4,424円、MVNOユーザーが3,771円となっています(元出所はMMD研究所)。アハモが普及すれば、この3分野の平均月額料金が下がることになります。特に3大キャリアユーザーが払っている料金は今後数年で大きく下がる可能性があります。

3.NTT=NTTドコモの今後の移動通信シェアに注目したい

 2020年6月末の移動通信の契約数シェアは、NTTドコモ37.1%、KDDI 27.6%、ソフトバンクグループ21.6%になります。この戦いは最終的には自己資本の戦いになるかもしれません。要するに日本の通信市場で価格競争が起きた場合、最後は体力勝負になるということです。自己資本を見ると、2020年9月末でNTTは9.7兆円(株主資本)、KDDIは4.6兆円(親会社の所有者に帰属する資本持分)、ソフトバンク(ソフトバンクグループ傘下の通信のソフトバンク)は1.1兆円(親会社の所有者に帰属する資本持分)になります。

 このまま行けば、NTTがシェアを大きく上げることも予想されます。もちろん、大幅値下げのためにNTTの移動通信事業はほとんど利益が出なくなるかもしれません。ただし、その場合、大幅に安くなった移動通信コストを使った付帯事業を外部から呼び込むことで、新たに稼ぐ道を探すことができるのではないかと思います。

 NTTの今後に注目しています。また、日本電気、富士通は、移動通信の基地局、光ファイバーネットワークの構築でNTTと密接な関係にあります。NTTが仕掛ける価格競争は、日本電気、富士通にとって基地局やネットワーク構築の値引きにつながる可能性があります。しかし、NTTのシェアが上昇すれば、日本電気と富士通がNTTから受け取るビジネスも増えると思われます。日本電気、富士通にも注目しています。

テーマ5:インターネット-アメリカ企業はバーチャルカンパニーを目指す?-

1.巣ごもった結果、企業と労働者の働き方が変わった

 日本でも世界でも、今年2月頃から会社や学校に行かず、在宅勤務、在宅学習がオフィスワーカーや学生の間で増えました。学生の場合は、ある程度学校に通ったほうが学習効果が上がると思いますが、仕事の場合はオンラインで完結することが出来るものが多いと思われます。

 アメリカでは、全部ではありませんが、多くのオフィスワーカー、知的労働者(弁護士、公認会計士、コンサルタント、証券アナリスト、ファンドマネージャー、上級から中級の技術者など)が在宅勤務を続けています。そして、このやり方が企業と従業員の双方にとって良いということが認知されるようになっています。

「良い」というのは、お金的に良いということです。従業員にとっては、郊外に住めば家賃が安くなります。通勤時間を使って仕事をしたり、仕事のための勉強ができます。アメリカでは、成果を挙げるとそれがより高い報酬やより有利な転職に結び付きやすいので、よく働く人が多いのです。

 企業にとっては、従業員が良く働いて成果を上げてくれるなら喜ばしいことです。オフィス面積も縮小できます。

 アメリカ企業は多くの場合、利益が出る方向性が決まれば、その方向に一斉に動く性質があります。そして、このような企業群のオンライン化を助けているのが「GAFAM」(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)です。高性能パソコン、データセンター用高性能サーバーを通じて高性能半導体も重要な役割を果たします。

 これに対して日本では、在宅勤務を行ってきた企業の中で、新型コロナ前に戻ろうという動きがでています。通勤電車に揺られて出社して、仕事帰りには飲みに行く生活に戻りつつある企業が多くなっています。競争相手が出社して対面営業を再開したので、同じことをせざるを得ない企業もあるもようです。

 今回の感染拡大は、GoToトラベルで感染した人たちが職場に戻って企業内クラスターの元になったケースが多いのではないかと私は思っていますが、こうして多くの企業が元の非効率な状態、そして感染リスクに曝された状態に戻っていくのでしょう。

2.日米企業の収益性格差はより一層拡大するのか

 一方で、アメリカ企業が進む方向は、「バーチャルカンパニー」なのかもしれません。バーチャルカンパニーとはインターネットが出来た時からある考え方で、企業活動の可能な限り全てをインターネット上で行うというものです。要するに、営業、調達、社内管理などのオンライン化です。

 バーチャルカンパニーが適用できる業界とそうでない業界がありますが、効果が大きい業界、企業では、大幅な業務の効率化が実現できます。ただし、成長戦略をとらなければ、業態によっては多くの余剰人員が出てしまいかねません。バーチャルカンパニーには負の側面もあります。

 日本でも実例があります。ネット証券です。同じ株式売買金額を上げるのに必要なコストを比べると、ネット証券と対面型証券では、人件費、システム費用、オフィス費用などを含めた総コストが8分の1から1分の1程度に下がるはずです。これは極端な例ですが、このような「効果」が出る場合、国や企業が成長戦略をとらなければ、大量の失業者が出てしまいます。多くの日本企業にとって、バーチャルカンパニーあるいは仕事の全面的なオンライン化は難しいかもしれません。

 結局、仕事のオンライン化、効率化へのインセンティブがある企業は、国際競争に曝されている一部の優良企業と、ベンチャー企業でしょう。ベンチャー企業にとっては、オフィスコストが軽くなって、従業員の生産性が上がることは歓迎すべきことでしょう。

 日本企業とアメリカ企業の収益力の格差は開くばかりかもしれません。こう考えていくと、日本の個人投資家も国際分散投資を真剣に検討すべき時が来ていると思われます。特に、アメリカ株、アメリカ上場株への投資は今後重要になってくると思われます。

本レポートに掲載した銘柄:東京エレクトロン(8035)アドバンテスト(6857)レーザーテック(6920)TSMC(TSM)AMD(AMD)アプライド・マテリアルズ(AMAT)ASML(ASML)シノプシス(SNPS)ソニー(6758)アミューズ(4301)東宝(9602)NTT(9432)日本電気(6701)富士通(6702)