※このインタビューは2020年3月19日に実施し、2020年4月24日に初回掲載したものです。

 今回は個人投資家の間で絶大な人気を誇る、かぶ1000(かぶせん)さんにご登場いただきました。

 中学2年のとき株式投資を始め、学校卒業後すぐに専業投資家に。2011年に1億円プレーヤーの仲間入りを果たすと、その後も順調に資産を増やし、昨年、累計利益4億円を達成しました。 

 人気ブログ『かぶ1000投資日記』でポートフォリオや運用成績を公開する他、ツイッターやツイキャスでも投資術を披露している、かぶ1000さんに成功までの道程や投資に対する考え方を聞きました。

コロナ・ショックで苦境に!?投資意欲は衰えず

──今日はかぶ1000さんの投資人生について、いろんな観点からお伺いしたく思います。
 その前に今年に入って新型コロナウイルスの影響で、株式相場は大混乱におちいっていますが、やっぱりダメージはありますか。

 そうですね、ちょっと大変なことになってます。

 僕はブログで運用成績を公開しているので、それを見ていただければわかると思いますが、今年はかなりのマイナスです。

──リーマンショックがあった2008年以来のマイナスになっていますね。

 実はリーマンショックのときはさほど大きな被害は受けていなくて、数百万円のマイナスで済みました。

 今年はまだ半分も過ぎてないので最終的にどうなるかはわかりませんが、その程度では済まないかもしれません。

──そんな時期にもかかわらず取材をお受けいただき、ありがとうございます。
 でも、何というか、こう話していてもあまり切迫した様子が見受けられません。もちろん、内心は穏やかでないと思いますが。

 僕は基本的にフルポジションなんです。これはもう若い頃からですが、資産のほとんどを株に投じています。

 だから、何か大きな出来事が起こり、株価が暴落したら、それなりのダメージを受けることはわかっていました。

──ある程度、覚悟していたということでしょうか。

 これまでフルポジションで利益を得てきたわけだから、こういうことがあっても仕方ないかなという感じですかね。

 それに、こういう言い方をすると不謹慎かもしれませんが、この状況を楽しんでいるというか、ちょっとワクワクしているところもあるんです。

──どういうことですか。

 僕の投資法は、いわゆるバリュー投資です。簡単にいうと、その会社本来の価値に比べて株価が安い銘柄を探して投資するという方法です。

 だから、割安の銘柄を見つけたときがいちばんうれしいんです。でも、当たり前ですが、そんな銘柄、どこにでも転がっているわけではありません。世の中の多くの投資家が目をつけたら、すぐに割安でなくなってしまいますし。

 ところが、今はコロナ・ショックで多くの銘柄が値を落としています。2分の1、3分の1に下落している銘柄も少なくありません。要するに僕たちバリュー投資家にとっては願ってもない機会が訪れているわけです。

──確かにそうですね。それでも、やはり資産が減っていることも気になってしまいそうな気がしますが…。

 そこはなかなか説明しにくいのですが、僕にとっていちばん大事なのは「投資し続ける」ことなんです。株で生計を立てているわけだから、投資をやめなきゃいけなくなることが何より怖い。

 じゃあ、どういうときやめなければならないかというと、僕にとっては割安株を見つけられなくなったときです。割安な株がゼロだと、買うものがなくなってしまう。

 ですから、たとえ今のような状況であっても、買える銘柄がたくさんあるとワクワクしてくるんです。

──なるほど。

 長く株をやっているからかもしれませんね(笑)。

お年玉40万円を1,000倍に増やし、累積利益4億円を達成

──さて、かぶ1000さんといえば、中学2年で株を始めた人として有名です。自分の中2の頃を振り返るとちょっと信じがたいですが(笑)。

 それまで親や親戚にもらったお年玉を郵便局の定期預金に預けていたのですが、それが満期になったんですね。当時は金利がよかったため、40万円ほどに増えていました。

 で、再び定期預金に預け直そうと思ったら、金利がめちゃくちゃ低くなっていたんです。だったら、いっそ株でも始めようかなと。

──中学2年生でですか?

 祖父が株をやっていて、いろいろ話を聞かされていたんです。だから、株とか金利とか、なんとなく知っていたんですね。

──なるほど。最初から個別株を選んだのですか。

 初めは投資信託も考えたのですが、当時、投資信託はまだメジャーではなかったし、やたらと手数料も高かったので、迷っていたんです。

 そしたら祖父から「男なら個別株で勝負してみろ」とハッパをかけられて、個別株にしました。

──どんな銘柄を買ったか、覚えてますか。

 自動車部品銘柄と海運銘柄です。

──その銘柄は上がりましたか。

 その2つを持ち続けたわけではなく、あれこれ売ったり買ったりしていたのですが、1年後に300万円くらいになりました。うまく立ち回ったというより、相場がよかっただけですが。

 その後も順調で、高1で1,000万円、高2で1,500万円まで増やすことができました。

──元手はお年玉の40万円で、追加投資はしていないんですよね。

 はい、学生なのでしたくてもできませんでした。

──昨年、累積利益が4億円に届いたんですよね。ということは、お年玉の40万円を4億円まで増やした、ということですね。

 そうですね。僕は専門学校を出てすぐ専業投資家になったので、その後も追加投資はしていませんし。

──1,000倍に増やしたわけですね!

 はい、でも、30年かけています。世の中には数年で1億円稼ぐ人もいるわけで、そういう人に比べたら全然だと思います。

会計や財務について学ぶため、専門学校に進学

──高2で1,500万円に増やしたところまで伺いましたが、その後はどうだったのですか。

 たしかその翌年だったと思いますが、200万円まで減らしました。湾岸戦争が勃発し、株価が急落したんです。

──まだ高校生ですよね。ショックが大きかったのではないですか。

 それまで順調だっただけに株の怖さを思い知らされました。こんなに値が下がることもあるんだ、と思いました。

 ただ、少し冷静になって考えると、来るべきときが来たという感じもしました。というのも、それまで投資の勉強なんてほとんどしたことがなかったんです。

 高校に入ったころから地元の証券会社に出入りするようになり、投資家のオジさんたちから情報をもらったりしていましたが、企業の業績分析とか、そういう知識はまったくありませんでした。

 要するに、今までは運が味方してくれたけど、ろくに知識があるわけではないんだから、いつまでも勝てるわけがないと思ったんです。

──勉強することにしたのですか。

 はい、それで高校卒業後は会計系の専門学校に進学しました。

──投資家になるためだったのでしょうか?

 投資家になろうと決めていたわけではありません。でも、株で食べていけたらという思いはありました。

──それを実現できたのが、やはりスゴイです。

 いったん200万円まで減らしましたが、その後、少しずつ挽回できたんです。専門学校で会計や財務を学び、人並みに知識がついてきたことも大きかったかもしれません。

 それで徐々に決意が固まっていきました。

──そこからは順風満帆だったのですか。

 いえ、そんなに甘くはなかったです。

 当時は資産3,000万円を目標にしていました。3,000万円を年20%でまわしていけば毎年600万円の利益を得られます。つまり、世の中のサラリーマンと同じくらいの稼ぎを得られるわけで、それなら余裕で食べていけると思いました。もちろん、年20%というのは簡単ではないですが…。

 でも、結局、20代のうちは3,000万円までたどりつけませんでした。

──いつ頃、達成できたのですか。

 2004年、31歳になった時です。

 それからすぐリーマンショックに見舞われたので、いったん減らしましたが、その後は順調です。

──それで昨年、4億円を達成したのですね。
 それでは、次回はかぶ1000さんが実践されてきたバリュー投資について詳しくお伺いします。

※このインタビューは2020年3月19日に実施し、2020年4月24日に初回掲載したものです。

「株式投資は人生最高の友」。中学生から投資を続けるかぶ1000さんがおっしゃると説得力があります! とても真摯に、そして楽しそうに投資について語るお姿が印象的でした。

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