2月から3月の月跨ぎとなった先週の日経平均ですが、週初の19,000円台割れの場面から、取引時間の年初高値更新など、大きな値動きを見せました。週末金曜日(3月3日)の終値は、19,469円となりました。前週末の終値(19,283円)からは186円ほど上昇しています。

(図1)日経平均(日足)の動き(2017年3月3日取引終了時点)

(出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成)

いつもの通り、足元の状況を上の図1で確認してみます。

まず、日経平均と25日移動平均線との位置関係について見てみます。日経平均は週初の月曜日(2月27日)に、前週末までキープしていた25日移動平均線を下抜けてしまい、翌28日も取引時間中に回復する場面がありましたが下抜け状態が続きました。

それが、翌3月1日からは25日移動平均線を上抜けしてそのまま週末に至っています。ガラリと相場のムードが変わった格好ですが、もちろん2月から3月になったことで相場が春を迎えたというわけではありません。

ご存知の通り、注目イベントのトランプ大統領による米国議会での演説が、日本時間で3月1日の午前11時(米国時間で2月28日午後9時)に行われたタイミングだったことがキッカケです。日経平均の動きが下から上に向きを変えたため、トランプ大統領の演説に対する株式市場の反応は概ね良好だったと言えます。以前より指摘してきた通り、25日移動平均線がトランプ政権に対する楽観と警戒のバロメーターとして機能している格好です。

もっとも、細かい分析は他に譲りますが、先週後半の株価上昇はトランプ大統領の演説そのものが評価されたのではなく、演説が無難な内容だったことで安心感が広がり、好調な米国マクロ経済と利上げ観測の方に市場の目が移ったことによるものと言えます。そのため、今後の米国については、「トランプ政権への思惑」と「現実の経済状況と利上げ観測」を天秤にかけながら材料視される可能性が高いです。

また、チャートの形の良い兆候としては、日経平均は「三角保ち合い」を上抜けてきました。セオリー通りならば、保ち合いで相場のエネルギーが蓄積され、放れた方向への動きに弾みがついてもおかしくはなく、期待が持てる形です。

ただし、冒頭でも述べましたが、日経平均は3月2日(木)に19,668円の高値をつけ、これまでの取引時間ベースの高値(1月6日の19,615円)を更新していますが、その一方で、終値ベースでの高値(1月5日の19,594円)はまだ更新できていませんし、週末の株価(19,469円)についても、「19,500円の壁」が意識されているような感じで、どことなく先高観に自信が持ちづらい状況です。

とはいえ、日経平均の下値は着実に切り上がっていますし、週末にはメジャーSQも控えています。取引時間中や終値ベースでの年初来高値の更新、19,500円台乗せの維持など、株価水準の位置が今週の注目点になります。

また、別の角度からも相場の基調を見ていきます。下の図2は、米大統領選挙が行われた昨年11月9日を起点とした「回帰トレンド」です。

(図2)日経平均ダウ(日足)の回帰トレンド(2017年3月3日取引終了時点)

(出所:MARKETSPEED for Macを元に筆者作成)

回帰トレンドとは、一次関数の考え方を用いて表現する統計学的なテクニカル指標で、一定期間の値動きの中心線を直線で描きます。上の図2では赤色の線が該当します。そして、この中心線を挟んで上下平行にそれぞれ1σと2σの線を引きます。

図2を見ても明らかな通り、回帰トレンドの線は右肩上がりで日経平均は上昇基調を維持していますが、最近の値動きは中心線より下での推移が目立っており、基調の強さはイマイチと言えます。

また、上昇基調がこのまま続けば「日経平均の2万円シナリオ」も見えてきますが、現段階で回帰トレンドの中心線が2万円に到達するのは4月初旬頃になります。ちょうどそのタイミングは日銀短観が公表される予定(4月3日公表予定)でもあり、企業業績への期待が株価材料につながるようになると上昇への勢いが出るかもしれません。

反対に、下値の目処としては、−1σと−2σの線が意識されやすくなりそうです。