注目の通貨ペア

 筆者は最近の相場でNZドルに注目してきた。この通貨は株の急落がない限り、12月相場でも期待が持てるが、目先の相場は「そこそこいいところ」までやっており、標準偏差ボラティリティとADXのピークアウトに注意したい。利益を逃さないためには、「トレール注文」を置いておくのが一番良いだろう。

 パウエルとイエレンのMMT(現代貨幣理論)コンビで米国はさらにジャブジャブになるとの観測が多く、大局のドル安相場に変化はなさそうだ。

NZドル/ドル(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 ここから注目したいのはユーロの動きである。ドル安のカウンター通貨の本命はユーロである。ユーロ/ドルは今年3回目のユーロ高相場が到来するかもしれない。

ユーロ/ドル(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:楽天MT4・石原順インディケーター

COVID-19に対して「今後も政策がばらまかれる」という期待がバブルになっている

 パンデミックバブルだ。11月のNYダウは1987年1月以来の最高の月間パフォーマンスとなった。(1987年は10月にブラックマンデーが起こったが、これは注意すべき現象である)

11月のNYダウは1987年1月以来の最高の月間パフォーマンス

出所:ゼロヘッジ

 米国株のベンチマークであるS&P500指数をみると、コロナ禍で追加された15兆ドルの流動性により、S&P500は史上最も高いバリュエーション水準となっている。

S&P500は史上最も高いバリュエーション水準

出所:ゼロヘッジ

コロナ禍で追加された15兆ドルの流動性により3月以降世界的な株価上昇相場に…

出所:ゼロヘッジ

MSCIの世界株インデックス MSCIの世界株インデックスは青天井相場となっている

出所:ゼロヘッジ

 株だけではなく、ここにきて仮想通貨のビットコインまでもが、カネ余りの機関投資家やファンドマネーを巻き込んで大暴騰相場となっている。

ビットコイン高騰で最高値更新

出所:ゼロヘッジ

 しかし、目先の相場は波乱含みとなるだろう。先週金曜日のCFDレポートにも書いたが、CNNマネーの「恐怖と欲望指数」は現在91とExtreme Greed(強欲)を示している。ほんの一週間前には63だったものが一気に90台まで進んでおり、投資家が再び驚くべき速さで株式に対するポジショニングを高めていることがうかがえる。「恐怖と欲望指数」の推移をみると、過去のピーク水準に達している。

恐怖と欲望指数の推移

出所:CNNマネー

 業績がともなった株価上昇ならいい。しかし、GDP(国内総生産)はマイナス圏に落ち込み、企業の利益は伸びておらず、株価とのかい離は広がる一方となっている。

S&P500(青)と税引き後利益(オレンジ)、実質GDP(グレー)の推移

出所:リアルインヴェストメントアドバイス

 強気のサイクルには勢いがあり、ついつい引き込まれてしまう魔力のようなものがある。熱気の中に入り込んでしまうと「FOMO(乗り遅れる恐怖)」が論理的な思考プロセスを上書きしてしまう。しかし、投資家が最もダメージを受けるのは下落に捕まった場合である。

 ゼロヘッジの記事「Investors Go "All-In" Without A Safety Net(投資家はセーフティネットなしで「オールイン」する)」から、熱狂に絡めとられてしまわないための7つのルールをご紹介しよう。これらは非常にシンプルであるが、人間の心理には逆のメカニズムが働いている。だからこそこれらのルールが求められる。

1) 敗者を売り、勝者を走らせる
単純なことのように思えるが、通常、人々は勝者を売り、敗者を保持してしまう。

2)安く買って、高く売る
投資のために過剰に投資することを正当化するために言い訳をすべきではない。長期的には、高すぎる投資は常にリターンを減少させる。

3)今回は違うは決してない
今回は違うということはない。歴史は正確に繰り返さないかもしれないが、それは一般的に韻を踏んでいる。

4)忍耐強くあること
投資を急ぐことはない。また、本当の機会が来るまで現金の上に座っていることに問題はない。忍耐強くあることは、トラブルに巻き込まれないための優れた方法だ。

5)テレビは消せ
テレビを見ることによって達成される唯一のものは、血圧を上昇させるだけだ。

6)リスクはリターンに等しくならない
保守的に投資し、可能な限りのリスクを最小限に抑えながら、時間をかけてお金を増やしていくべきだ。

7)群れに逆らっていく
誰もが市場の方向性に同意しているときには、何らかの理由があるため、一般的には、何か他のことが起こることになる。誰もが売っているとき買い、そして誰もが買っている時に売ることだ。

 これらを取り入れることができれば、長期的には投資目標を達成することができる。最終的には、市場は常に上昇と下降を繰り返すサイクルで動いていることを理解することが重要だ。

株価を見るうえで重要になるのは「中央銀行のバランスシートの拡大予測」だけである

 イエレンは、ご存じのとおり「バブルの守護神」と呼ばれており、労働市場の専門家であるイエレンが、コロナ禍の大失業時代に財政・金融の引き締めなどするわけがない。「イエレン財務長官は利上げすることを考えたことがないパウエルFRB議長と共同でバブルを維持するだろう」という観測でウォール街からは歓迎されている。

 一方で、「イエレンは自分たちの政治目的、キャリアアップに夢中なゴマスリの金融コメンテーターや政治家に対してだけ進歩的だ」との批判もあり、結局、金融緩和や公的資金投入で需要を喚起する「高圧経済政策」で株価を上げるだけが彼女の仕事のようだ。

 そのため、株価を見るうえで重要になるのは、モルガン・スタンレーの下のチャート「中央銀行のバランスシートの拡大予測」だけである。

中央銀行のバランスシートの拡大予測

出所:ゼロヘッジ

「ふたりは共依存」 経済政策は株価を上げるためにあるのか!?カウンセリングにきた強気のS&P500くんとイエレンさん

出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート

12月2日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 12月2日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、武田則孝さん(楽天証券FXディーリング部)をゲストにお招きして、「注目の通貨ペアと相場見通し」・「強制MMTで大局はドル安相場」・「1月の相場急変には注意が必要か?」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。

 12月2日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」の番組内で紹介しました「ラリー・ウィリアムズの投資アノマリーカレンダー2021」を、リスナーの方10名様にプレゼントいたします。番組のご感想を必ずお書きの上、ご応募ください。

「ラリー・ウィリアムズの投資アノマリーカレンダー2021」(楽天ブックスで販売中)

 締切りは12月16日(水)です。

 ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロード出来るので、投資の参考にしていただきたい。

12月2日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

出所:YouTube

12月2日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

出所:YouTube