★筆者が選ぶ銘柄一覧は3ページに掲載しています。

10倍高を達成した銘柄の特徴とは?

 株価がある時点から10倍になるのは容易ではありません。1日や2日で達成することはなく(値幅制限があるため不可能)、それなりに長い期間が必要です。イメージをつけるためにいくつかの「10倍高達成株」を紹介することにしましょう。

GMOペイメントゲートウェイ(3769・東証1部)の10年月足チャート

 EC(電子商取引)業者に決済処理サービスを提供しています。

緑:単純移動平均(9月)
赤:単純移動平均(24月)
青:単純移動平均(60月)

コスモス薬品(3349・東証1部)の10年月足チャート

 九州地盤、大型多店舗展開のドラッグストアチェーンです。

緑:単純移動平均(9月)
赤:単純移動平均(24月)
青:単純移動平均(60月)

ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324・JASDAQ)の10年月足チャート

 産業用ロボット、半導体・液晶製造装置向け精密制御用減速機で世界トップ企業です。

緑:単純移動平均(9月)
赤:単純移動平均(24月)
青:単純移動平均(60月)

川本産業(3604・東証2部)の10年月足チャート

 ガーゼなど医療用衛生材料の最大手企業です。

緑:単純移動平均(9月)
赤:単純移動平均(24月)
青:単純移動平均(60月)

エムスリー(2413・東証1部)の10年月足チャート

 医療従事者向けサイトでの製薬会社情報提供が主力、オンライン診療にも取り組んでいます。

緑:単純移動平均(9月)
赤:単純移動平均(24月)
青:単純移動平均(60月)

 短期間で「株価10倍」を達成した銘柄は、コロナ感染拡大でマスクや衛生用品の需要が高まり、追い風を受けるとして投機人気が高まった「川本産業(3604・東証2部)」だけです。

 ちなみにこの銘柄は時価総額が約130億円と極めて小型の銘柄です。市場流動性に欠けることから、少しの買いによって一気に株価が飛び上がった側面があります。高値を保つことができず短期間で急反落していることからも、いかに投機的であったかがわかります。

 コロナが追い風になったという意味では、ドラッグストアの「コスモス薬品(3349・東証1部)」やEC決済の「GMOペイメントゲートウェイ(3769・東証1部)」、オンライン医療に取り組んでいる「エムスリー(2413・東証1部)」も同様ですが、これらの株価はコロナ禍前から継続的に上昇をしていて、その後一段高になっています。時価総額も約7,000億~約5兆5,000億円と大きく、業容の拡大とともに、投資家の評価を受け、株価が上昇してきた様子がわかります。

 EC決済は通販市場の拡大とともに、ドラッグストアはこの期間に安売り業態が浸透し、拡大路線をとってきたものですので、決して株価10倍達成に疑問があるわけではありません。「コスモス薬品」については、九州で圧倒的な存在感を示したことも追い風になったと考えられます。

 海外売上比率が60%を超える機械メーカー「ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324・JASDAQ)」を除くと、ほかは「内需株」ということもおわかりいただけるでしょう。ここで紹介している銘柄は一例ですが、他の10倍達成株を見ても、やはり内需株が多いことを付け加えておきます。

 また、10倍高達成までの過程で、同じ率で株価が上昇していることはなく、ある時期に急上昇を見せ、その水準を維持し、さらなる株高に進んでいることもわかります(投機的な動きをした川本産業は除く)。株価上昇=業容拡大+投資家からの評価という構図がイメージできるのです。

全体相場の活況も10倍高を後押しする

 最後にもうひとつ重要な要素を示します。それはここで例として挙げた銘柄は、この10年間に株価10倍を達成しているということです。

 10年前というと…2010年ですが、2008年9月に発生した「リーマンショック」からの本格的な景気回復が見られ始めた時です。しかし、日経平均株価は8,000~1万円台を往来していました。2012年末に第二次安倍政権が樹立されるまで、日本の政治も混乱し、外国人投資家からの評価が低かった時期でもあります。

 その後の急反転、全体的な株高の時に、10倍高達成株が多く出現しています。株高に進む時は投資家からの資金が多く流れ込んでいる時と考えてよく、その時に評価を受けた銘柄が(結果的に)「10倍高」となった格好です。

 現在は、コロナウイルス感染拡大は収束していないものの、日米欧の中央銀行による大規模金融緩和が継続され、コロナワクチンがもうすぐ完成するとされるタイミング。もしかすると、東京市場もこれまで以上に注目される可能性があるかもしれません。

 ここでは将来「10倍高株」となるかもしれない銘柄をピックアップします。

Mr.ストップ高が選ぶ、2021年の10倍高期待株10選

コード 銘柄名 株価(円)
4479 マクアケ 10,100
3990 UUUM 1,907
3768 リスクモンスター 2,157
4293 セプテーニ・ホールディングス 458
4478 フリー 9,350
3328 BEENOS 2,737
4496 コマースOneホールディングス 6,050
4304 Eストアー 2,605
4431 スマレジ 5,220
5989 エイチワン 726
※株価データは2020年12月2日終値ベース

マクアケ(4479・マザーズ)

 クラウドファンディングのプラットフォーム「Makuake」を運営しています。2019年12月上場の銘柄で、過去には株式市場に見られなかった業態です。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

UUUM(3990・マザーズ)

 ユーチューバーの制作サポート事業の大手企業です。YouTubeでの動画視聴がこれまで以上に拡大することが同社の追い風になります。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

リスクモンスター(3768・東証2部)

 企業の倒産確率格付けなど、独自の信用情報を有料会員提供する与信管理サービスが主力です。与信情報の需要はコロナ禍で増加しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

セプテーニ・ホールディングス(4293・JASDAQ)

 ネット広告代理大手企業で、電通グループと資本業務提携をしています。通販やアプリ系広告の出稿はコロナ禍で増加しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

フリー(4478・マザーズ)

 中小企業向けに会計ソフトや人事労務ソフトをクラウド経由で提供しています。テレワーク拡大が追い風になることが多い「SaaS関連株」です。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

BEENOS(3328・東証1部)

 越境ECが主力です。海外ユーザーが海外発送未対応の国内ECサイトで購入できる海外転送事業や、代理購入事業を展開しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

コマースOneホールディングス(4496・マザーズ)

 中堅・中小のECサイト運営支援をSaaS形式で提供しています。今年は類似業態の「BASE(4477・マザーズ)」の株価急上昇が話題になりました。

・日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

Eストアー(4304・JASDAQ)

 中小企業や個人事業主向けEC総合支援サービスを展開しています。2018年には電子認証事業にも参入しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

スマレジ(4431・マザーズ)

 スマホを使ったPOS(販売時点情報管理)レジアプリのクラウドサービス事業を展開しています。飲食、小売実店舗だけでなくEC向けなど広範囲にカバーしています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

エイチワン(5989・東証1部)

 自動車の骨格部品が主力でホンダ向けが約9割を占めます。中国でホンダ合弁の「東風本田汽車」、新興EVメーカー「小鵬汽車」との取引が拡大しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

著者によるこの記事の解説音声はこちら(soundcloudサイト/9分19秒)