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 今年に入り、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で世界景気は過去に例のない落ち込みとなり、いまだに多くの国が感染拡大に苦慮している中、中国はいち早く感染封じ込めに成功し、経済が正常化に向かっています。中国株式市場は景気回復を背景に堅調な展開となり、上海総合指数の年初来上昇率が10%を超えるなど、他国の株式市場を上回っています。一方で、中国企業に対する政府の介入や中国企業の債務増加など、中国株に対する慎重論が指摘されています。ここでは、最近の『中国リスク』について考えてみます。

【ポイント1】中国企業アント・グループの上場延期

 アリババ集団傘下の金融会社、アント・グループは11月3日、5日に計画していたIPO(新規株式公開)を突如延期すると発表しました。アントは利用者10億人超のスマートフォン決済アプリ(アリペイ)などを手掛けるフィンテック企業で、アントの上場による調達額は過去最高となる見込みでした。

 上海証券取引所は、上場延期の理由として小口融資規制の変化をあげています。経営権を実質的に握るアリババ創業者、馬雲(ジャック・マー)氏が2日に金融当局の聴取を受けており、当局がアントの影響力を警戒したためとの見方もあります。上場直前の延期は異例で、中国市場への不信につながるとの声があります。

【ポイント2】債務不履行が増える中国企業

 今年に入り、中国企業の社債の債務不履行が増加しています。元本や利息を払えなかった社債の金額は足元で累計1,570億元(約2.5兆円)となり、過去最高を上回るペースで推移しています。中国当局は年前半、新型コロナ対策として企業による元本と利息の支払いを猶予するよう銀行を指導してきましたが、景気が底入れして公的支援が弱まったことに伴い、一部企業の資金繰りが悪化しました。

 投資家の間には中国企業の債務が拡大していることに対して懸念を持つ見方があります。

【今後の展開】『中国リスク』を過度に警戒する必要はないか

 こうした『中国リスク』に対する慎重な見方は正しいのでしょうか? アントのケースでは、急速に広がるフィンテックの分野で新たな金融リスクが高まる事態を警戒する中国当局が、国内金融システムを安定させるために規制をかけようとする意図は理解できます。一方で、当局は、華為技術(ファーウェイ)や半導体、自動車産業などを積極的に支援しており、イノベーション企業を支える方針に変わりはないと思われます。

 また、中国企業の債務不履行についても、景気が本格的に回復する中で、当局は一部社債市場の動揺が金融システム全体に波及しないようにコントロールすることが可能だと思われます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。