過去3カ月の推移と今回の予想値

※矢印は、前月からの変化

10月雇用統計のレビュー

 BLS(米労働省労働統計局)が先月発表した10月の雇用統計ではNFP(非農業部門雇用者数)は63.8万人増加。失業率は6.9%に低下しました。小売業、レジャー、接客業や建設業など幅広い部門で雇用増が見られたことは、政府の新型コロナ対策が一定の効果を上げ、経済活動が継続的に再開していることを示しています。

11月雇用統計の予想

 BLSが12月4日に発表する最新の雇用統計は、市場予想によると、失業率は6.8%まで一段と低下。非農業部門雇用者数は50万人の増加で、雇用は回復しているものの一時期の勢いはなく、増加数は5ヵ月連続で縮小。また、平均労働賃金は前月比0.1%増、前年比4.2%増の予想。

新規失業保険申請の傾向は?

 失業者の傾向を知るうえで重要なデータが新規失業保険申請件数です。このデータは前1週間に新規に失業保険が申請された件数で、多いほど失業者が増加していることを示します。10月25日発表の新規失業保険申請件数は77.8万件で、予想、前回(73.0万件、74.2万件)よりも増えて2週連続で上昇しました。失業者が増加傾向にあるということです。

 また失業保険「継続」受給者数もわずかながら増加。継続受給者が多くなっているということは、失業保険への加入(流入)者が脱退(流出)者よりも多いという意味で、再雇用が進んでいないことを示しています。

ディズニーの大量解雇

 米ディズニーは11月25日、3万2,000人をレイオフ(一時解雇)する計画を明らかにしました。新型コロナウイルスの感染拡大でカリフォルニア州のテーマパークが現在も休園を強いられていることが主な理由です。削減対象の大半はテーマパーク部門であるディズニー・パークス・エクスペリエンス・プロダクツの従業員で、実施予定は2021年上半期。

 ディズニーはすでに9月に、テーマパークのショーの出演者などパート従業員の67%に相当する約2万8,000人の一時解雇を発表していました。今回さらに4,000人を追加解雇することになったのですが、今後さらに増える可能性もあります。

 ディズニーのような企業が心配していることは、新型コロナによって人々の行動様式が長期的に変化してしまうことです。例えば海外旅行に不安やおそれを感じることが意識として定着するだけでなく、いずれそれが旅行に出かけること自体に興味を失ってしまう。そのような人々が増えることが懸念なのです。

エクスペリエンス・エコノミーの危機

 ディズニーに代表されるテーマパーク事業は、エクスペリエンス・エコノミー(経験経済)とよばれています。消費者に「エクスペリエンス(経験)」を販売するからです。飲食店ならば、食べ物の提供だけではなく、音楽や華やかな雰囲気やくつろげる照明など、消費者に質の高い世界観を販売するというのが、エクスペリエンス・エコノミーです。現代経済は、農業経済、産業経済、サービス経済を経て、経験経済に到達したといわれ,この分野は近年大きな成長を遂げています。

 しかし、新型コロナによってエクスペリエンス・エコノミー対する投資の多くが無価値になろうとしています。ロックダウンによってエクスペリエンス(経験)する機会が奪われたこともありますが、長期的には、多くの人々がそのような場所を訪問することに興味を示さなくなるように意識が変化しつつあるからです。

 会社に行って嫌いな人と同じ空間で過ごすよりも、家で一人仕事をしたほうが精神的に安定するという人は増えています。ワクチンが開発されたからといって、いちど変わってしまった意識は簡単に元に戻るでしょうか。新型コロナが収まったからといって、元通りにならない世界がある。テーマパークなどはその一つの例といえます。