原油と天然ガス、化石燃料が大幅上昇

 先週は、原油と天然ガスの上昇が目立ちました。11月3日(火)の米大統領選挙の投票日以降、バイデン氏の勝利宣言を経た上で、原油価格は上昇し続けています。クリーンエネルギーが台頭するとの見方から、バイデン氏の勝利宣言が原油相場を下落させるとの見方があったものの、上昇しています。

 原油、天然ガスの化石燃料以外に、銅、そして日経225、ナスダック、S&P500、NYダウ、上海総合指数などの日米中の主要株価指数、景気動向に敏感と言われる銅の上昇も目立ちました。先週も、バイデン氏とワクチンへの“期待”による、過剰とも言える好ムードが、幅広い市場を覆ったと言えそうです。

 同時に、金や金に連動する銀、そしてビットコインといった“無国籍資産”の色合いが強い銘柄が下落しました。株価や化石燃料価格が上昇し、景気回復への期待が高まっている時に起き得る、無国籍資産の下落は、好ムードが幅広い市場を覆ったことを、裏付けています。

 先週は、上昇銘柄数が19、下落銘柄数が6、最大と最小を除く変動率の平均は+1.0%でした。全体的には、11月20日(金)から27日(金)の週は“おおむね強かった”と言えると思います。

※プラチナの今後の動向については、今週の週刊コモディティレポート『バイデン効果でプラチナ上昇、まだ高く飛べる?プラチナの脚力に期待!』で述べています。

11月20日(金)と27日(金)のジャンル横断騰落率ランキング

※楽天証券のマーケットスピードⅡのデータより楽天証券作成
※銀・パラジウムはミンカブ・ジ・インフォノイドのデータを参照。
※ビットコインとイーサリアムは楽天ウォレットのビットコイン価格を参照。日本時間の前々週土曜日午前6時と前週土曜日午前6時を比較
※騰落率は前々週金曜日の終値と前週金曜日の終値より算出。(前週金曜日終値-前々週金曜日終値)/前々週金曜日の終値

先週の「ジャンル横断・騰落率」を受けた今週の見通し

 先週は“おおむね強かった”と書きました。過剰とも言える好ムードが幅広い市場を覆ったことが要因とみられます。

 パリ協定への復帰、クリーンエネルギーを重用することを標榜するバイデン氏が大統領選挙での勝利宣言をしている中で、原油や天然ガスが他の主要銘柄を抑えて大きく上昇しました。

 足元、原油や天然ガスといった、バイデン氏の勝利宣言を機に下落してもおかしくない化石燃料の価格をも上昇させる程の、過剰感を伴った好ムードが、幅広い市場を覆っていると筆者は考えています。過剰感を伴った好ムードの根底には、複数の強い“期待”が存在します。

 バイデン氏が勝利宣言をしたことで、世界に広く存在する、環境や人権に関わる問題が解決される期待が高まっています。また、複数の会社の新型コロナワクチン開発が実用化の段階に達し、これまで半年以上にわたってさらされてきた同ウイルスの脅威から抜け出すことができる期待が高まっています。

 ただ、期待は“まだ起きていないことへのプラスの思惑”と言えます。期待はあくまで期待であり、実態ではありません。仮に、化石燃料や主要株価指数が“期待”で上昇しているのであれば、その上昇は、実態が伴っていないことになります。

 実態が伴っていない上昇は、常に、下落するリスクをはらみます。例えば、経済指標が悪化するなど、データが示す“実態”の悪化が示された場合、実態を伴わずに上昇してきた相場が、不安定化する可能性があります。

 今後は特に、価格が上昇している様を、後付的に解釈するのではなく(良い情報だけに注目するのではなく)、そもそも、一連の上昇が不安定な土台の上で起きている可能性がある点に、留意することが必要です。

 今週は、主要国のPMI(製造業購買担当者景気指数)や米雇用統計など、市場に与えるインパクトが比較的大きい経済指標が公表されます。このような過剰感を伴った上昇が起きている今だからこそ、経済指標の内容を、慎重に見守る必要があります。

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