投資信託の「分配金」と株式の「配当金」は似て非なるもの

 投資信託の分配金(収益分配金)とは、投資信託が決算を迎えた後、保有者に支払われるお金のことです。分配金を出す頻度は、年1回や毎月など商品によって異なります。

「分配金」と聞くと、「株の配当金みたいでお得」という印象を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、投資信託の「分配金」と株式の「配当金」は似て非なるものです。

 では早速ですが、今回もクイズを通して投資信託の分配金について理解を深めていただきましょう。

クイズ次の説明で、正しいものには〇を、間違っているものには×を付けてください。
  1. 分配金の支払いは、利益が発生している場合のみ認められる
  2. 分配金の額を事前に知ることはできない
  3. 分配金の受取方法として、「受取型」ではなく、「再投資型」を選択すれば税金はかからない(NISA口座を除く)

1:分配金の支払いは、利益が発生している場合のみ認められる?

解答:×

 分配金は、運用を通じて得られた利益から支払われるのが基本ですが、分配自体は、利益が発生していない状態でも行うことが認められています。つまり、元本を払い戻す形で分配が行われることがあるのです。これはなぜか。

 利益が生じていなくても分配を行うことができるのは、投資信託が担保する「投資家間の公平性」にヒントが隠されています。

 投資信託は、原則として「いつでも」「誰でも」購入可能な金融商品です。10年前から保有している投資家でも、決算日のわずか数日前に購入した投資家でも、受け取れる分配金の額は一律です。このように、金額も、投資開始時期も異なる複数の投資家の資金をまとめて運用するとなると、収益の分配についてはどうしても不公平が生じてしまいます。

 そこで、投資家が投じた資金から分配金を支払い、投資家間で生じる不公平を解消しているのです。

 この元本の払い戻しに該当する部分は「元本払戻金」または「特別分配金」と呼ばれ、通常20.315%(所得税15.315%、住民税5%)かかる税金は非課税になります。決算日の直前に資金を投じた投資家は、短期間でよほど基準価額の大きな上昇がない限り、受け取った分配金の大部分、または全部が元本払戻金となっている可能性が高いと言えます。運用成績が振るわず、十分に分配原資を蓄えられていないようなケースもまた、元本が払い戻される可能性が高いでしょう。分配金が支払われることが必ずしも投資家にとって有利かというと、決してそういうわけではないのです。

2:分配金の額を事前に知ることはできない?

解答:〇

 決算時に分配をするか否か、そして具体的な分配金の額は、運用会社の判断に委ねられています。基準価額が1万円を超えているからといって、分配金の支払いが確約されるわけではなく、また、実際にいくら支払われるかというのも、決算を迎えないと分かりません。投資信託の中には、毎月決算を行う「毎月分配型」(毎月決算型)と呼ばれる商品がありますが、毎月分配型であっても、分配金の支払いが約束されているわけではありません。

 したがって、「自分はまだ買ったばかりで利益が出ていないから、今回は分配をしないでほしい」という、投資家の個別の要望に応えることはできません。自分が受け取った分配金が、利益から支払われているか(普通分配金)、元本の払い戻し(元本払戻金)であったかは、決算後に発行される報告書で確認できます。

3:分配金の受取方法として、「受取型」ではなく、「再投資型」を選択すれば税金はかからない(NISA口座を除く)?

解答:×

 一般的に、分配金の受取方法としては、そのまま現金で受け取る「受取型」と、支払われた分配金で同じ投資信託を追加的に買い付ける「再投資型」の2つが用意されています。

 投資家が選択できるのは、あくまでも分配金の支払いが決定した後の受取方法のみです。「受取型」と「再投資型」、どちらを選択しても税金がかかることに変わりはありません(ただし、元本払戻金とNISA[ニーサ:少額投資非課税制度]口座内で発生した分配金を除く)。

※楽天証券では、スポット購入と積立注文ともに「分配金コース」の項目で「再投資型」か「受取型」のいずれかを選択いただきます。

 定期的な現金収入のニーズがある方は「受取型」を、足元で現金収入のニーズがない方は「再投資型」で同じ投資信託を追加購入して口数を増やし、複利効果に期待するというのがよいでしょう。