「よく分からん」と評判?の今年の年末調整

 早いもので2020年も年末目前。年末といえば会社勤めの方の恒例行事が「年末調整」です。はっきり言ってよく分からないけど、とりあえず出せと言われたものを出している……という方も多いのではないでしょうか。

 そんな、ただでさえよく分からない年末調整が、今年(令和2年分)はさらに拍車をかけてよく分からなくなったと、もっぱらの評判です。

 そこで今回は、細かい点は思い切って省き、90%くらいの人が当てはまる内容に絞り、年末調整について解説します。

配られている書類は3種類。どうしたらいいの?

 年末調整で配られているのは、おそらく以下の3種類だと思います。

(1)令和3年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
(2)令和2年分 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
(3)令和2年分 給与所得者の保険料控除申告書

(2)は、3種類の申告書を1枚にまとめているので、もはや呪文にしか思えないような名前になっていますね。

 このうち、(1)(2)は全員が提出、(3)は該当がある場合に提出します。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の留意点

(1)の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、原則として全員が提出するものです。

 2カ所以上から給与をもらっている方は、いずれか1カ所でしか提出できません。 

 この扶養控除等申告書を提出しないと、給与の源泉徴収税額が「甲欄」ではなく税率の高い「乙欄」で計算されてしまいます。また、扶養控除等申告書を提出しないと年末調整を受けられません。確定申告で精算すれば両者での税額の違いはありませんが、できれば面倒なことはせずに済ませた方がよいでしょう。

扶養対象の配偶者や親族がいない場合は?

 扶養の対象となっている配偶者や親族がいない場合は、上の欄の名前・住所等だけ記入すれば大丈夫です。

扶養対象の配偶者や親族がいる場合は?

 扶養対象の配偶者や親族がいる場合は下の欄にも記入します。この記載が漏れると、毎月のお給料から引かれる源泉徴収税額が増えてしまうこともありますから、注意してください。

給与所得者の基礎控除申告書の留意点

(2)は、基礎控除申告書と配偶者控除等申告書、そして所得金額調整控除申告書の三つが1セットになったものです。

 所得金額調整控除申告書に記載が必要な方は少ないと思いますので、ここでは割愛します。

 上欄の氏名、住所の記載、および基礎控除申告書の記載は全員が必要です。配偶者控除等申告書は、配偶者がいる場合に記載してください。

最も一般的な会社員のケース

 最も一般的な、勤め先が1カ所で、給与所得以外に所得がないケースで考えていきます。

 基礎控除申告書の「給与所得」の「収入金額」の欄には、令和2年の1~12月までもらう給料の「額面」(源泉所得税、住民税、社会保険料を引く前の金額)を書きます。12月分はまだ分からない人もいると思いますが、見積額で大丈夫です。なお、記載する額は額面であって、手取りの額ではありませんので、ご注意ください。

 また、「所得金額」の欄は、給与収入から給与所得控除の額を差し引いた残額を書きます。紙でこの申告書を受け取っている方は裏面に計算方法が載っています。

 もしくは国税庁のウェブサイトをご覧ください。

 実際のところ、配偶者控除や配偶者特別控除の対象となる配偶者がいて、かつ給与所得が900万円超1,000万円以下というケースを除いては、よほどの高給取り(給与所得2,400万円超)でない限り、ここの金額の記載が多少誤ってしまったとしても影響はありません。

給与所得者の配偶者控除等申告書の留意点

 給与所得者の配偶者控除等申告書は、配偶者がいる場合にのみ関係してきます。独身の方の場合は記載する必要はありません。また、本人(自分)の所得金額が1,000万円超の場合や、配偶者の所得金額が133万円超の場合も不要です。

 また順番として、まず基礎控除申告書を記載してから配偶者控除等申告書を記載してください。なぜなら、基礎控除申告書での判定により配偶者控除もしくは配偶者特別控除の金額が異なってくるからです。

 配偶者の給与収入の金額や、給与所得の金額の書き方は、上項の基礎控除申告書と同じです。

保険料控除申告書は該当がある人のみ提出

 保険料控除申告書は、該当がある人のみ提出します。全員が提出しなければならないものではありません。

 生命保険料控除や地震保険料控除の適用を受ける場合に加え、自身で国民健康保険料や国民年金保険料などを払った場合(社会保険料控除)、自身で払っている小規模企業共済の掛け金や確定拠出年金の掛け金がある場合(小規模企業共済等掛金控除)も該当します。

 iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の掛け金を自身で払っているときは、小規模企業共済等掛金控除の欄の、「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」に金額を記載しましょう。

 また、保険料控除証明書などの必要書類も一緒に添付することを忘れないようにしてください。生命保険料のうち少額のものや、国民健康保険料、介護保険料など必要書類が不要なものもあります。

その他、年末調整でできる手続き、できない手続きは?

 これ以外に該当者が多いものとして挙げられるのは、住宅ローン控除(正式名:住宅借入金等特別控除)でしょう。

住宅ローンがある場合は?

 まず、住宅ローン控除適用の初年度は、年末調整ではなく確定申告が必要となります。確定申告をすると、その年の秋ごろに税務署から「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」が送られてきますので、2年目以降はそれを用いれば年末調整で住宅ローン控除が受けられます。金融機関等が発行した住宅ローン残高の証明書の添付も忘れないようにしましょう。

医療費がかかった・ふるさと納税した場合は?

 また、医療費控除やふるさと納税は、年末調整では手続きができないので、自身で確定申告する必要があります。

 ふるさと納税のうち、「ワンストップ特例」を使う方は、確定申告をせずに寄付金控除を受けられますが、年末調整の手続きが必要なわけではありませんから、年末調整時に何か会社に書類を出すことは不要です。自動的に翌年度の住民税から控除されます。

 年を追うごとにつれて、ややこしくなっている感のある年末調整書類。でも各申告書の説明書きを見ながら作成していけば、思ったほどは難しくないはずです。