日経平均上昇トレンドの勢いは比較的強い

 先週末11月27日(金)の日経平均終値は2万6,644円でした。前週末終値(2万5,527円)からは1,117円高となり、株価水準をまた一段階切り上げた他、週足ベースでも4週連続の上昇です。

 日経平均は新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念されている状況下でも上昇を続けており、いずれは「期待と現実の駆け引き」による中長期的な相場展開になっていくと思われますが、ここ何回かのレポートで繰り返し指摘しているように、「株価が高いか?」ではなく、まだ「相場が強いか?」の視点で動いている印象です。

 さらに、こうした相場の強さを受けて、「日経平均3万円台トライ」を指摘する見方も出てきていますが、今回はその「日経平均3万円台トライ」の現実味について考えていきたいと思います。

 まずはトレンドの勢いから見ていきます。とはいえ、基本的な見方は前回のレポートとあまり変わっていません。

■(図1)日経平均(日足)のボリンジャーバンド (2020年11月27日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図1は、日経平均(日足)のボリンジャーバンドです。

 前週末時点での日経平均は+1σ(シグマ)の線に接近し、下抜けによる上昇一服が警戒されていましたが、結局は反発する展開となり、+2σとの範囲内を推移しながら上昇していきました。

 こうした、+1σと+2σの範囲を往来しながら上昇基調を描く格好は、「バンドウォーク」と呼ばれ、比較的強いトレンドとされていますので、株価が+1σを下抜けるまでは相場の上方向への意識は強いと言えます。

株価の5日移動平均線下抜けは「ダマシ」。2万6,000円台半ばで伸び悩む可能性も

 次に、注目するのは5日移動平均線です。

■(図2)日経平均(日足)の動き(2020年11月27日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 前週末にかけての日経平均は5日移動平均線を下抜けてしまっていましたが、先週は週初の「窓」空けによって再び上抜けを取り戻し、以降も5日移動平均線上をキープして終えています。

 過去の日経平均の値動きの経験則として、「一定の大きさでトレンドが発生した際、株価が5日移動平均線を抜けるとトレンドが一服する」という傾向があります。実際に、春先5~6月にかけての上昇局面も5日移動平均線の下抜けによって上昇がストップし、以降は数カ月間にわたるもみ合いの展開へと移行していきました。

 ただし、今回は株価の5日移動平均線の下抜けが上昇一服のサインとならず、いわゆる「ダマシ」となりました。それだけ買いの勢いが強いという見方もできそうです。事実、週末にかけての2日間(26日と27日)の値動きについても、マイナス圏からプラス圏に切り返す動きで陽線となっているため、買い意欲の強さがうかがえます。

 とはいえ、両日とも25日(水)につけた取引時間中の高値(2万6,706円)を超えていません。2万6,000円台半ばで伸び悩む可能性があり、週初の早い段階でこの2万6,706円超えを達成できるか、もしくはこの水準でのもみ合いとなるか、そして調整に転じてしまうのか、今週はこれまでの相場の強さを継続できるかを探る週になります。

 いずれにしても、「ボリンジャーバンドの+1σ下抜け」と「5日移動平均線下抜け」に注意しつつ、上値を意識する相場地合いと言えます。

日経平均月足チャートから「3万円台」という水準を考える

 続いては、「日経平均3万円台」という水準について考えてみます。下の図3は日経平均の月足チャートです。

■(図3)日経平均(月足)の動き(2020年11月27日取引終了時点)

出所:Bloombergデータ等を元に筆者作成

 先週の日経平均は4連騰となり、連日で29年半ぶりの高値を更新してきました。

 月足チャートで過去の日経平均を見てみると、最高値は1989年12月の3万8,957円、そして最安値は2008年10月の6,994円です。

 この間の下げ幅に対して、先週末時点の終値(2万6,644円)はどの水準に位置しているかというと、61.8%戻し(2万6,747円)が意識されているところになります。この61.8%戻し水準で上値が抑えられる可能性もありますが、仮にここを上抜けることができれば、次は76.4%戻し(3万1,414円)が目標となり、その途中に3万円台が存在することになります。

日経平均の目標計算値:3万円台トライは夢物語ではない?上昇の原動力を確認

 また、足元の上昇トレンドについて、別の指標でも株価の水準感を探っていきたいと思います。

■(図4)日経平均(日足)の動き その2(2020年11月27日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図4は、足元の株価上昇がどこまで伸びそうなのかを、典型的な目標計算値(V計算値・N計算値・E計算値)で表したものです。

 足元の上昇トレンドは10月30日の安値から始まりましたが、11月17日の高値で上昇がいったんストップし、11月20日まで下げた後、再び上昇という軌道を描いています。

 V計算値は株価が下げていた期間の下げ幅(632円)を11月17日から上方向に伸ばして計算したもので、目標値は2万6,689円です。

 N計算値は、11月17日までの上げ幅(3,109円)を11月20日を起点に計算したもので、こちらは2万8,534円になります。

 E計算値は、11月17日までの上げ幅をさらに上に積み上げて計算したもので、2万9,166円です。

 現在の株価はV計算値あたりですが、引き続きN計算値やE計算値まで上昇した場合、微妙に届かない距離感で一応は3万円台に近づきます。あくまでも上昇の勢いが続くという前提ではありますが、テクニカル分析の理屈の上では、日経平均の3万円台トライはあながち夢物語ではない(?)ことになります。

 となると、3万円台に届かせるための上昇の原動力についても考える必要があります。最近までの日経平均上昇の原動力として、主に指摘されているのは以下の4点です。

(1)コロナワクチンへの期待
(2)金融緩和期待
(3)需給要因(売り方の買い戻し)
(4)日本株への再評価

(1)については、先週の新型コロナウイルスの感染拡大によって景気敏感株が売られる場面が見られました。今週も感染状況の悪化が続けば同様の展開が見込まれますが、米ファイザー社と独ビオンテック社が共同開発しているワクチンについて、FDA(米食品医薬品局)が緊急使用に向けた認可の是非を来週12月10日に決定する予定となっているため、それまではIT・ハイテク関連をはじめとするグロース株が優位になるかもしれません。

(2)については、ECB(欧州中央銀行)理事会(12月10日)やFOMC(米連邦公開市場委員会/12月16日~17日)で、追加の金融緩和が期待されていますが、今週12月1日に米議会上院でパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長による議会証言が予定されており、FOMCで追加緩和が決定されるか否かを先取りする動きとなるかもしれません。仮に緩和の予定がないとの市場が受け止めた場合には失望となりやすいので注意が必要です。(3)についても、来週末11日の「メジャーSQ」で需給イベントのピークになります。

(4)については、これまで低金利とデフレの象徴だった日本株が、コロナ禍によって各国の経済にブレーキがかかり、金融緩和も進んだことで、日本だけが特殊な存在ではなくなったことに加え、多くの資金を集めて株価が駆け上がってきたGAFAMなど米主力IT株の分散投資先として、これまで海外投資家に放置されてきた日本株に買いが入っている格好となっています。

 とりわけ(1)~(3)は、今週と来週がひとつのヤマ場となり、日経平均3万円トライの可否を占う節目になりそうです。(4)は比較的中長期的の材料になると思われ、しばらくはこの動向が続きそうですが、先週末時点の日経平均のPER(株価収益率)が27.38倍とかなり割高となっている他、先週は為替の円高が進行しても株高が続くという、従来のセオリーとは異なる動きも見せており、いつ調整が始まってもおかしくない状況であることは、頭の片隅に置いておく必要はありそうです。