多くの国はデジタル通貨がドルの座を奪うことを期待している

「ビットコインや銀行口座、決済アプリは、今後3年以内に必要とされなくなるだろう。デジタル人民元などのCBDC(中央銀行デジタル通貨)の導入により、今後数年間で、金融業界の革命が起こると予測している」

 NY大学のヌリエル・ルービニ教授はヤフーファイナンスのインタビューに応じ、CBDCが仮想通貨や従来の金融サービスに取って代わり、既存の決済アプリを追い出すことになると語った。

 世界最大のヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエーツ」のレイ・ダリオは、ビットコインが政府にとって危険な存在ならば、政府はビットコインを禁じるだろうとの考えを示した。ダリオもヤフーファイナンスのインタビューに応じたが、中央銀行や政府が伝統的な貨幣の代替として金を選択していることから、金はビットコインよりも優位性があると力説している。

 レイ・ダリオは、ビットコインはボラティリティ(変動幅)が大きいことから決済手段として利用できない点を指摘している。また高いボラティリティのため、富の蓄積の手段として向いていないと述べている。

 そして、ダリオは、「需要と供給の法則が存在するビットコインなどの仮想通貨が登場した。これらの仮想通貨は貯蓄の手段として利用されている。さらにデジタル版のドル、ユーロ、中国元も登場した。今後我々は第2弾でより多くのものを目撃することになるだろう」と語っている。

 マーティン・アームストロングはデジタル通貨が国際通貨になる理由を明確に述べている。

 デジタル通貨は国際通貨になるだろう。多くの国が、これがドルの座を奪うことを期待している。中国はこれを、欧米が各国に制裁を課すために使用してきたSWIFTシステムを迂回する方法として見ている。だからこそデジタル通貨に取り組み始めたのだ。

(1)    完全な管理
(2)    税金
(3)    すべての人とすべての取引を追跡するために

 世界の指導者たちは、トランプ氏がこの動きに反対する立場に立っているため、トランプ氏の没落を待ち望んでいる。

 われわれが想像するより早く、デジタル通貨の時代が到来しそうだ。

 ゴールドやビットコインは、FRB(米連邦準備制度理事会)のQEインフィニティ(無限大介入)やパンデミック下の負債急増(経済破綻の救済のための巨額の赤字支出)にそれなりに反応している。しかし、通貨の市場だけは不気味な沈黙を続けている。

 なぜ、このような事態が起こっているのか? FRBの社会主義政策、ドルスワップラインの寛大な提供、世界中の大規模な政府財政対応などが原因とされているが、本当の原因は金融システムが崩壊し、金融政策が国家管理になっているからだ。

 しかし、焦ることはない。大きな世界的なマクロ経済の不確実性の環境では、為替レートは大きく変動するはずである。中央銀行は神様ではない。人間がやっているので、相場操縦には必ず限界が来る。どのような操縦であれ、これまで市場メカニズムによって完全に打ち砕かれてきたからである。

 ドルの基軸通貨体制を揺るがすのは、SWIFTに変わるデジタル通貨なのだろうか?

 世界中金融政策が同じで、債券市場が国家管理となっているので、通貨はもう動かないという声もある。

 それに対して、マーク・ファーバーは次のように述べた。

「FRBが債券市場で大部分を爆買いした場合、理論的には資産価格は月に打ち上げられ、そこから最終的には地面すれすれで落ち着くだろう。債券市場が行き詰まると、価格調整で残る手段は唯一、米ドルの価値となる」(マーク・ファーバー)

 レイ・ダリオのサイクルが示唆するように、輪転機フル回転のバブルの後は、非寛容な社会主義的監視社会か、戦争の時代へ向かう。トランプ敗北なら、米国の衰退は加速するだろう。

帝国の背後にあるビッグサイクル

出所:レイ・ダリオ

 歴史は繰り返す。今の米国は1930〜1940年代の焼き直しである。ルーズベルトとトルーマンが今のバイデンとハリスのコンビとダブって見える。国家も政治家も約束を守らない。未来を語る者を信じてはいけない。

ドルは来年20%下落する可能性も!?

「ドルは来年20%下落する可能性も」という記事が、おとといのブルームバーグに出ていた。

 新型コロナウイルスのワクチンが広く配布され、世界的な貿易や経済成長の回復を助ける場合、ドルは来年に最大20%下落する可能性がある。米シティグループが予想した。

 カルビン・シー氏ら同行のストラテジストは16日のリポートで、「ワクチン配布はわれわれが設けた弱気相場のチェックポイント全てに該当し、ドルは2000~2010年の前半と似たような道筋をたどるとみている」と分析した。この時期にドルは複数年にわたる下降局面に突入した。

 ワクチン開発の進展だけでなく、世界経済が正常化しても米金融当局がハト派の姿勢を維持することでドル相場は苦しい展開になると、シティはみている。さらに世界各国で成長ペースが加速する可能性は高く、投資家が米国資産を離れ、国外資産へ乗り換えるとも予想する。

出所:11月17日 ブルームバーグ「ドルは来年20%下落する可能性も、新型コロナワクチン普及で-シティ」

 国家管理の相場の中で、景気が回復したり、GDP(国内総生産)が上がることを、ウォール街の運用者は逆に嫌がっている。「ワクチンなどできなくてもよい。新型コロナがずっと続いてくれて、金融緩和と財政出動が永遠に続いたほうがよい」というロジックなのだ。

 中央計画経済的な社会主義政策の経済では、経済格差、金融不安、必需品の価格上昇、インフラの崩壊などによって、経済と社会が空洞化している間、逆にGDPは急上昇するのである。GDPは国民にとって何が重要かを測定しない。GDPの悪化は、驚異的な金額を借りる(バラマキ政策)ための破壊的なインセンティブを生み出すのである。

 一部の金融機関が「FRBが前倒しで政策を変更する可能性がある」との見方をとっているが、「来年のバラマキまでのつなぎ的処置でFRBが何かをやるだろう」という観測である。今の市場はFRBが何かしないと、株価を維持できない。中央銀行が永遠に紙幣を刷り続けるという観測のなか、ドルは必然的に弱い通貨となっていくだろう。

ドルインデックス(2014~2020年)

出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート(パンローリング)

 下のチャートは筆者が毎週メルマガに掲載している逆張りシグナルのチャートである。「株が下がると対策が出る」という国家管理相場のなかでは、逆張り指標もトレードに有効な投資ツールとなっている。中央銀行が社会主義政策を推進している官製相場では、通貨や株の動きは金融当局の管理下にある。

ドル/円(日足)と逆張りシグナル

出所:石原順

日経平均(日足)と逆張りシグナル

出所:石原順

NYダウ(日足)と逆張りシグナル

出所:石原順

11月18日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 11月18日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、永倉弘昭さん(楽天証券FX事業部 常務執行役員)をゲストにお招きして、「サンタクロースラリーが期待できる注目の通貨ペアは!?」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。

 ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。

11月18日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

出所:YouTube

11月18日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

出所:YouTube