米国の株式市場は世界最大の時価総額を持ち、建国当初から株価は右肩上がりの成長を続けています。その理由の一つとして、常に企業の新陳代謝が起こり、時代ごとに革新的な企業を生み出しています。

 米国株式の代表的な株式指数は、鉄道・公共事業以外の工業株30銘柄で構成される「NYダウ平均株価」、NASDAQ(ナスダック)に上場している全銘柄を対象とした「ナスダック総合株価指数」、NYSE(ニューヨーク証券取引所)とNASDAQに上場している大型株500銘柄を対象とした「S&P500指数」があります。

 これらに採用されている企業は長期間にわたり利益を出し続け、株価も上昇し、配当を増配し続けている銘柄も珍しくはありません。

 そこで2020年12月権利落ちの米国株高配当5銘柄について解説します。

 その前に、日本と米国の高配当銘柄への投資で、特に重要な3つの違いについて、お伝えします。

(1)米国株の配当金は、通常米国で10%、日本で20.315%の2段階、約30%の課税がされます。しかし確定申告で還付を受けることにより、日本株と同じように20.315%の税率と同じになります。ただし、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で購入した場合は、日本での利益・配当金はもともと非課税のため、還付を受けることはできません。この場合は米国で10%の課税のみとなります。

(2)米国株は日本株と異なり、権利落ち日が月末に集中していません。そのため、銘柄ごとに権利落ち日を確認する必要がありますので注意が必要です。

(3)米国株は日本円で買う円貨決済と、米ドルで買う外貨決済を選べます。日本円から外貨に替える為替手数料も積もれば大きな金額になるので、米国株を買い続けるなら売却時にも外貨決済で米ドルにしなければ無駄に手数料を支払うことになります。

米国高配当株1: ロジャース・コミュニケーションズ(RCI)

 カナダの大手通信企業です。時価総額は233億ドルで、日本円で約2兆4,400億円となっています。

事業の注目ポイント

 売り上げの中心はワイヤレス事業で、続いてケーブル事業、メディア事業となっています。
ワイヤレス事業は、カナダの高速ワイヤレスデータネットワークの1つであり、5Gネットワークを商業展開して、カナダ国内の需要に対応しています。また、2019年末段階で同社のLTEネットワークはカナダの人口の約96%に達しています。

 携帯電話サービスではカナダ国内最多の加入者数を維持しています。

株式の注目ポイント

 リーマンショックの時にも無配にしていませんが、株価はコロナショック前の水準をまだ回復していません。

 コロナの影響で、世界的な旅行制限によるローミング収益の減少などで売り上げの中心であるワイヤレス事業の売り上げが落ち込んだ事が影響したようです。

 しかし、通信事業は安定した事業モデルであり、配当を受け取りながら株価の回復を待つのも良いのではないでしょうか。

業績動向

 2020年10月22日開示の四半期決算は売り上げ・1株利益ともに市場予想を上回りました。
決算の影響を受けて株価は大きく上昇しましたが、コロナ拡大の影響を受けて再び下がってきました。

 次回は1月28日に四半期決算の開示予定ですが、1株利益・売り上げともに前年同期比と比べて下落予想となっており、市場予想を上回る決算を出してくれるか注目です。

注意点

 コロナによる移動制限の影響などが、売り上げの中心であるワイヤレス事業に与える影響については注意が必要です。

株価動向、配当利回り 

配当:1.5229ドル
配当利回り:3.30%

この銘柄の権利落ち日は、12月9日です。
配当は1.5229ドル、配当利回りは3.30%(2020年11月16日時点)。
株価は46.08ドルで、約4,800円から購入できます(1USD=105円で計算)。
2017年からの最高値は55.72ドル、最安値は32.41ドルです(終値ベース)。

米国高配当株2:アレス・マネジメント(ARES)

 米国の資産運用会社です。クレジット・プライベートエクイティ・不動産などのオルタナティブ資産に強みを持っています。時価総額は115億ドルで、日本円で約1兆2,100億円となっています。

事業の注目ポイント

 売り上げの中心はクレジット事業で、売り上げの約半分を占めています。

 クレジット事業では、シンジケートローン、ハイイールド債、マルチアセットクレジット、オルタナティブクレジット、直接貸付を中心に事業展開しています。

 また、今年の3月31日に三井住友銀行がアレスとの今後の業務提携を前提に、同社の株式を取得したとプレスリリースで発表がありました。今後三井住友銀行との相乗効果でどのように事業拡大していくか注目です。

株式の注目ポイント

 株価は既にコロナショック前の水準を超えています。

 比較的コロナによる株価の影響が少ない銘柄です。また、豪金融サービス大手AMPへの買収提案などM&A(買収や合併)にも力を入れており、それらが今後、株価にどのような影響を与えるか注目です。

業績動向

 10月28日に発表した四半期決算では、売り上げ・1株利益ともに予想を上回りました。

 次の決算発表は2021年2月18日の予定ですが、今回の四半期決算以上に市場予想の数値は高まっています。直接貸付戦略による手数料収入の増加が業績に一役買ったようです。

注意点

 配当については四半期ごとに変動しています。

 思っていたよりも配当を受け取れないリスクがあることに注意が必要です。

株価動向、配当利回り

配当:1.6ドル
配当利回り:3.59%

この銘柄の権利落ち日は、12月16日です。
配当は1.6ドル、配当利回りは3.59%(2020年11月16日時点)。
株価は44.58ドルで、約4,700円から購入できます(1USD=105円で計算)。
2017年からの最高値は44.83ドル、最安値は16.87ドルです(終値ベース)。

米国高配当株3:フィデリティ・ナショナル・ファイナンシャル(FNF)

 米国最大のタイトル保険会社です。タイトル保険は、不動産売買後に判明した抵当権などのトラブルを補填する保険です。もし不動産投資に興味のある方は、タイトル保険で検索してみると良いでしょう。

 時価総額は105億ドルで、日本円で約1兆1,000億円となっています。

事業の注目ポイント

 タイトル保険を中心に、エスクローサービスなどのタイトル関連サービスを事業展開しています。

 エスクローサービスとは、不動産取引において発生する金銭と権利の譲渡に伴う証書の管理、法的手続きなどを当事者に代わっておこなうサービスです。

 これらのサービスは、アメリカの不動産取引においては一般的に使われています。そのため、アメリカの不動産取引が急激に下火にならない限り手堅い事業と言えそうです。

 日本で一時大きな話題になった「地面師」は、タイトル保険があれば防げた被害かもしれません。

株式の注目ポイント

 配当については2014年から連続増配中ですが、まだ株価はコロナショック前の水準には戻っていません。

 不動産取引の減少などが、株価低迷の要因の一つのようです。株価の回復には時間がかかるでしょうが、事業は比較的安定していますので、この割安な局面で保有するのも一つではないでしょうか。

業績動向

 コロナの影響で内覧ができない等の状況が減ってきており、少しずつ不動産取引が活発になってきていることなどが好業績の理由のようです。

注意点

 コロナの影響が長引いたときに再度ロックダウンが起きることが一番の懸念です。

 経済活動は少しずつ回復してきていますので、今後のさらなる需要回復に期待したいところです。

株価動向、配当利回り

配当:1.44ドル
配当利回り:4.04%

この銘柄の権利落ち日は、12月16日です。
配当は1.44ドル、配当利回りは4.04%(2020年11月16日時点)。
株価は35.64ドルで、約3,700円から購入できます(1USD=105円で計算)。
2017年からの最高値は49.21ドル、最安値は21.34ドルです(終値ベース)。

米国高配当株4:レストラン・ブランズ・インターナショナル(QSR)

 ハンバーガー世界2位のバーガーキングを展開しています。その他、日本未上陸のドーナツチェーン、ティムホートンズ。同じくフライドチキンのポパイズを展開しています。

 時価総額は182億ドルで、日本円で約1兆9,100億円となっています。

事業の注目ポイント

 事業の中心はドーナツチェーン、ティムホートンズで、売り上げの約60%を占めています。

 カナダを代表するファストフード店としての地位を築いており、現在はドライブスルーに力を入れるなどして、コロナの対応を行っています。なお、コロナの影響で閉鎖していた店舗も現在は世界の96%が営業を行っており、少しずつ以前の状況に戻ってきています。

株式の注目ポイント

 配当については2015年から連続増配中ですが、株価はコロナショック前の水準には戻っていません。

 会社側もコロナが事業に与える将来の影響、または事業が完全に通常の事業に戻る時期はわかりませんが、第4四半期の業績にはコロナの影響が続くと予想されます。としており、株価の回復にはもう少し時間がかかりそうです。

業績動向

 2020年10月27日開示の四半期決算では、売り上げ・1株利益ともに市場予想を上回りました。

 次回は2月15日に決算が開示予定ですが、1株利益・売り上げともに前年同期比と比べて下落予想となっており、市場予想を上回る決算を出してくれるか注目です。

注意点

 コロナで変わった生活スタイルにうまく対応していけるかがポイントです。

 レストラン・ブランズ・インターナショナルはドライスルーの強化などを進めていますが、今後も状況に合わせて対応していく必要があるでしょう。

株価動向、配当利回り

配当:2.08ドル
配当利回り:3.47%

この銘柄の権利落ち日は、12月18日です。
配当は2.08ドルで、配当利回りは3.47%(2020年11月16日時点)。
株価は59.92ドルで、約6,300円から購入できます(1USD=105円で計算)。
2017年からの最高値は78.48ドル、最安値は28.25ドルです(終値ベース)。

米国高配当株5:シーゲイト・テクノロジー(STX)

 ストレージ・プロバイダの世界大手で、主要製品はハードディスクドライブです。

 時価総額は144億ドルで、日本円で約1兆5,100億円となっています。

事業の注目ポイント

 現在、ハードディスクドライブは東芝、ウエスタン・デジタル、シーゲイト・テクノロジーの3社に集約されています。会社側も10月22日の四半期決算において、「データの需要は爆発的に増加している」という見解を述べています。今後、大容量ストレージソリューションがどれだけ伸びていくか注目です。 

株式の注目ポイント

 配当についてはリーマンショックの時にも無配にしていません。一方、株価はコロナショック前の水準には戻っていません。

 コロナの影響などから売り上げが横ばいで推移していることも、株価回復の遅れの要因のようです。会社として自社株買いの枠を増やすなどの株価対策を行っており、今後は本業の回復による株価の回復が待たれます。

業績動向

 2020年10月22日開示の四半期決算では、1株利益は市場予想を上回りましたが、売り上げは市場予想を下回りました。

 次回は2月1日に決算が開示予定ですが、1株利益・売り上げともに前年同期比と比べて下落予想となっており、市場予想を上回る決算を出してくれるか注目です。

注意点

 データセンター向けの需要は強いのですが、一方で映像やミッションクリティカル、コンシューマーなどに向けたHDDの需要低迷が業績の足かせとなっています。それらの業績回復の遅れによっては、株価の回復に時間がかかりそうです。

株価動向、配当利回り 

配当:2.68ドル
配当利回り:4.79%

この銘柄の権利落ち日は、12月22日です。
配当は2.68ドルで、配当利回りは4.79%(2020年11月16日時点)。
株価は55.94ドルで、約5,900円から購入できます(1USD=105円で計算)。
2017年からの最高値は63.23ドル、最安値は30.95ドルです(終値ベース)。

【要チェック】
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