日経平均が1991年以来の高値に上昇!

 先週、「日経平均株価が29年ぶりの高値に」というニュースが話題になりました。11月6日時点で日経平均が2万4,389円00銭まで上昇、これは1991年以来の水準となり、確かに29年ぶりです。

 ただ、筆者の周りの個人投資家の方に話を聞くと、「29年ぶりの高値」と言われてもあまり実感がない、という感想を持つ方がとても多くいました。

 そこで今回のコラムでは、「日経平均株価29年ぶりの高値」の実態や、これを踏まえた今後の投資戦略について考えてみたいと思います。

景気の実態と株価が大きく乖離する状況に

 近年、世界中で行われている未曽有の金融緩和により、景気実態と株価が乖離(かいり)する状況が続いています。

 足元の景気は、国内外とも新型コロナウイルスの影響により大きく落ち込んでいて、その流行前の景気水準に戻ることすら、なかなか難しい状況です。

 しかしその一方で、日経平均は29年ぶりの高値になっており、新型コロナウイルスの流行が日本よりはるかに深刻な米国株でさえ、大きく上昇しています。

 一昔前は、景気と株価はタイムラグこそあったものの相関関係にありました。景気が良くなれば株価も上がり、景気が悪くなれば下がりました。

 でも今の金融緩和時代は、景気と株価は別物、と考えた方がよさそうです。景気が悪いから株価も上がらない、という従来の考えでは、昨今の株価上昇はなかなか理解できないでしょう。

全ての銘柄が29年ぶりの高値になっているわけではない

 29年ぶりの高値と言われても多くの個人投資家が実感できない大きな理由、それは全ての銘柄が29年ぶりの高値になっているわけではない、という事実があるためです。29年前といえば、バブル崩壊の直後の時期ですから、分かりやすく30年前のバブル時の高値と今の株価を比べてみることにします。

 例えば自動車株であれば、トヨタ自動車(7203)ホンダ(7267)は明確に30年前のバブル時の株価水準を上回っています。一方で日産自動車(7201)はバブル時の株価水準を大きく下回っていますし、三菱自動車(7211)に至ってはバブル時の株価から30年近く右肩下がりで値下がりが続いています。

 また、ソニー(6758)アドバンテスト(6857)は、2000年のITバブル時につけた高値よりは下回っているものの、30年前のバブル時の水準は大きく上回っています。その一方、銀行株や証券株はバブル時の高値に遠く及ばないものばかりとなっています。

 このように、銘柄によって、バブル時の水準を大きく上回っているものと大きく下回っているものとが混在しているのです。そして個人投資家が好むような中低位株ほど、バブル時の水準を下回るものが目立っていることが、日経平均株価29年ぶりの高値と言われても実感がわかない大きな理由の一つになっていると感じます。

株価チャートの分析では極めて重要な局面に

 実は、11月6日の日経平均株価2万4,389円00銭というのは、株価チャートの分析では極めて重要な位置にあります。

 日経平均株価の月足もしくは週足のチャートを見ていただくと分かりますが、2万4,000円を少し超えた価格というのは、今までに3回達成したものの、全てそこで、はね返されているのです(編集部注:2020年11月9日時点)。

・2018年1月:2万4,124円15銭
・2018年10月:2万4,270円62銭
・2020年1月:2万4,083円51銭

日経平均株価の月足チャート(2015年7月~2020年11月6日)

出所:楽天証券・MARKETSPEEDⅡ

 したがって、今回もこの水準ではね返されてしまうのか、それとも4度目の正直で明確に突破していくのか、とても重要な分岐点になっています。

 今回、日経平均が2万4,000円台前半を明確に超え、2万5,000円も超えるようなことになってくると、今まで強い抵抗帯だった価格帯を抜き去り、新たな上昇ステージに入ったと判断することができます。となれば、日経平均株価が3万円突破、という可能性も見えてくると思っています。

日経平均株価にかかわらず、あくまでも個別銘柄ごとの判断を

 お伝えした通り、今は日経平均が上昇したからといって、個別銘柄も同じようにみな上昇する、ということはありません。

 したがって、日経平均が2万5,000円を明確に突破するにしても、2万4,000円台前半で押し返されるにしても、あくまで売買については個別銘柄ごとのファンダメンタルズ(業績)や株価チャートにより判断するようにしましょう。

 くれぐれも、株価が値下がりを続け下降トレンドとなっている銘柄に対し、「日経平均株価が上昇を続けているからこの株も上昇するはずだ」と我慢して持ち続けたり、「そろそろ反発するはずだ」と逆張りで買わないようにしてください。

 そして、景気実態と株価が乖離しているということは、バブル気味の相場であるとも言えます。したがって、今後いつ株価が急落してもよいように、「こうなったら売る」という、大きな損失を避けるためのルールを決めておき、実行することをお勧めします。