★今回の記事『検証!日銀のETF買いの日、前場終値で日経平均を買い後場終値で売却すると利益は出るか』のオンライン解説を、11月23日(月・祝)17:00~17:30に行います(参加費無料)。
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日銀のETF買いは後場の値動きに影響する

 日本銀行は1つの傾向として、前場のTOPIX(東証株価指数)が前日比0.5%以上のマイナスになったときにETF(上場投資信託/「設備投資や人材投資に積極的な企業の株式が含まれるETF」を除く。以下、同様)を購入しています。

 そこで、日銀がETFを購入した日に、前場の終値で日経平均株価を買って後場の終値で売却したら利益が得られるのでは、と考える方もいるのではないでしょうか? 今回、この仮説について検証してみました。

 2017年以降において、日銀がETFを購入した日の後場のみの日経平均株価の値動きの累計は次の通りです。

2017年:1,182.72円
2018年:1,175.58円
2019年:2,459.57円
2020年:954.27円(1~10月、年換算1,145.12円)

 いずれの年もプラスとなっています。2018年の日経平均株価は年間でマイナスだった(▲2,750.17円)にもかかわらず累計値はプラスに、2019年は2,459.57円と大きなプラスになっています。

 後場の値動きは当然ながら日銀によるものだけではありませんが、日銀の影響が小さくないことが見て取れます。これだけのプラスになっているので、日銀がETF買いをする日に前場の終値で日経平均株価を買って後場の終値で売却したら利益が得られる可能性は十分ありそうに思えるのではないでしょうか?

2020年、前場で買って後場で売る戦略を行う投資家が増えた

 もう少し、詳しく見ていきましょう。

 2020年はコロナ・ショックもあって、日銀はETFの購入額を一時期大幅に増やしましたが、累計の値は2019年よりも小さくなっています。この要因について推測していきたいと思います。

 今年に入ってから前場のTOPIXの動きを見ていると、日銀がETFを購入する1つの基準であるマイナス0.5%前後をウロウロとしている日が多いように感じます。そこで、2019年と2020年において、前場のTOPIXが▲0.55~▲0.45%で終わっている日数を実際に調べてみると、次のようになっています。

2019年:15日
2020年:23日(1~10月、年換算27.6日)

 2020年のほうが年換算で2倍近く多くなっています。これは、0.5%以上のマイナスになったときに日銀がETFを買ってくるので、午前中に日経平均先物やETFを買って、日銀の買ってくる午後に売ろうとする動き、もしくは、日銀が午後にETFを購入してくることを見越して午前中にETF組成のために買いを入れる動きがあり、2020年は2019年以上にその動きがあったのではと推測しています。

 そのような動きが多くなると、前場に買いが入る分、午前中の日経平均が下がりにくくなっていると考えられます。

 そこで、2019年と2020年とで、日銀がETFを購入した日の日経平均の前場終値が前日比0.5%までのマイナス、もしくはプラスとなっている日数を調べてみると、次のようになっています。

2019年:10日
2020年:15日(1~10月、年換算18日)

 こちらも2020年のほうが年換算で2倍近い日数となっています。

 このことから、日銀がETF買いをした日の後場のみの日経平均株価の値動きの累計値が2019年よりも2020年のほうが小さい要因は、前場で買って後場で売るという戦略を行う投資家が増えたため、前場の日経平均が支えられる一方で、午後の上昇が抑えられたと考えられます。

前場で買って後場で売る戦略をこれから取っても、利益を得るのは難しい?

 前場で買って後場で売るという戦略を行う投資家がすでに多くいると思われる中、これから日経平均株価を前場の終値で買って後場の終値で売却する戦略を取っていったときにうまくいくのかについて、見ていきたいと思います。

 2017年以降において、日銀がETFを購入した日数、1日あたりの後場の騰落幅・率の平均値は次のようになっています。

2017年:78日、+15.16円、+0.075%
2018年:87日、+15.92円、+0.065%
2019年:58日、+42.40円、+0.201%
2020年:66日、+14.45円、+0.083%
(2020年は1~10月)

 日銀がETFを購入した日の後場の日経平均株価の値動きは、年間の累計値でみるとそれなりに大きいですが、1日あたりで見るとごくわずかな値となっています。

 しいて言えば、2019年は1日あたり+42.40円、+0.201%なので、手数料を差し引いてもかろうじて利益は残るかもしれませんが、2019年以外の年は、1日あたりの騰落率は+0.1%以下なので、手数料を考えると、利益はほぼなくなってしまうと思われます。

 また、実際の投資対象は日経平均株価そのものではなく、日経平均先物や日経225ETFになってくるので、同じようなことを考えて行動する人が多くいればいるほど、利幅も小さくなってしまうでしょう。

 読者の方には期待をさせてしまい申し訳ございませんが、残念ながら、前場の終値で買って後場の終値で売る戦略は既にそのような動きをしている投資家が多いと思われるため、利益を得ていくことは難しいように思います。

 投資はあくまでも自己責任で。

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