接戦州の結果は?米大統領選挙

 このコラムを読者が目にしている頃には大統領選の勝敗は決まっているかもしれません。通常であれば、投票日の深夜、日本時間で翌日の正午前後には大勢が分かります。今回では、日本時間4日(水)の正午前後に当たります。例えば、オハイオ州を制する者が全米を制すると言われているオハイオ州の勝敗の大勢は早ければ午前9時半頃、トランプ米大統領が絶対落とせないフロリダ州(選挙人29人)は午前10時台、また、選挙人の数が多く(38人)、同じくトランプ大統領が絶対落とせないテキサス州は午前11時台に判明するといわれています。

 しかし、接戦州のペンシルベニア州は、通常であれば日本時間の午前10時台に判明するようですが、郵便投票が多いことに加え、11月3日の消印があれば6日まで受け付けると定めたため、判明は金曜日以降ではないかといわれています。このように、今回は郵便投票がかなり多いため開票に時間がかかることや、州によっては到着期限をずらしているため結果判明が数日から1週間以上遅れることが予想されています(6州では郵便投票が11月2日か3日の消印なら1~10日後の到着を認めています)。

 従って、このコラムを読まれている頃には、まだ決まっていない可能性もあります。ただし、オハイオ州とフロリダ州は期日前投票の事前開票が行われているため、日本時間の午前中に勝敗がわかるかもしれません。

投票率は前回を上回るが、激戦州はトランプ氏が追い上げ

 その郵便投票は、11月3日未明時点で約6,400万票と、前回の期日前投票約5,800万票を超えている状況となっています。ちなみに今回の期日前投票は約1億票となっており、前回の投票総数約1億3,600万票の70%以上となっています。この結果、投票率は前回の60.1%を超え、67%に達するとの予測が出ています。

 投票率が上がるとバイデン氏有利、また、郵便投票が多くなることもバイデン氏にとって有利といわれています。しかし、トランプ大統領は郵便投票には不正が多いと主張し、11月3日を過ぎた郵便投票は無効とも主張しており、法廷闘争の準備を既に進めているようです。

 直近の世論調査ではトランプ大統領が追い上げていますが、バイデン氏リードは変わらない状況です。ただし、激戦州ではバイデン氏リードが2%台に縮まってきているため勝敗はまだまだ分からない状況となっています。世論調査では1,000人前後をサンプルとすることが多く、統計上、1,000人なら誤差は3%といわれています。例えばトランプ大統領の支持率が45%で誤差3%の場合、実際の支持率は42~48%となります。つまり、僅差(きんさ)の接戦州では、バイデン氏がリードしていても、結果は開票するまで分からないということになります。

 これまで何回かにわたって米大統領選直後のさまざまなシナリオをお伝えしてきましたが、マーケットの予想される動きと関連付けてもう一度まとめます。

(1)今回の選挙では郵便投票が多いため全体の結果判明が遅れる可能性が高いことから、トランプ大統領は選挙日当日の開票で優位に立った場合、一方的に勝利宣言をする可能性がある。しかし、これはフライングであるため、相場の動きに惑わされないように注意する必要がある。

(2)郵便投票の開票が進むにつれてバイデン氏優位が伝わると、株高、金利高、ドル高に動く可能性があるが、トランプ大統領が法廷闘争に持ち込む動きを見せ始めると、マーケットは不透明感から株安、ドル安に動く可能性もあり警戒したい。

(3)トランプ大統領がフロリダ州を落とした場合は、バイデン勝利の期待が一気に高まるため、株高、金利高、ドル高の動きになる可能性が高まる。

(4)その場合、トランプ大統領は敗北宣言をしない可能性があり、また、トランプ支持派が過激行動に出て、社会が騒然となることも想定され、米国不信任からマーケットはトリプル安(株安、金利高、ドル安)に動く可能性もあるため注意が必要。

(5)現時点でのマーケットサプライズはトランプ勝利であるが、その場合、最初の動きは、これまでバイデン勝利の期待による株高、金利高の巻き戻しになる可能性があるため、注意が必要。トランプ大統領が勝利宣言で大型景気対策や減税に触れれば、その後は株高、金利高、ドル高に。

欧米中央銀行の動きにも留意

 選挙の勝敗が通常通り4日に決まればよいのですが、上記のシナリオのように今回はかなりの混乱が予想されます。そして、その混乱の中で今週は米国大統領選以外にも注目しておく材料があります。

 米国大統領選挙の開票で混乱している最中、11月4~5日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されます。マーケットが混乱し、トリプル安のような動きになっているとFRB(米連邦準備制度理事会)が追加緩和に動く可能性もあるため、留意しておく必要があります。

 また、同じく11月4~5日にはBOE(英国中央銀行)の金融政策委員会があります。英国では新型コロナウイルス感染者が急増し、5日からロックダウンが計画され、景気後退懸念が高まるため追加緩和を示唆する可能性が想定されます。ドルの乱高下だけでなく、ポンドも乱高下する可能性もあるため注意が必要です。

 また、10月29日のECB(欧州中央銀行)理事会では、ラガルド総裁が記者会見で「景気回復の勢いは想定以上の速さで失われている」と述べ、次回12月の会合での追加緩和を強く示唆しましたが、同時に為替動向も注視していると発言しています。欧州も感染者が急増しており、各国で経済規制が相次ぐ中で、米大統領選によるドル安によってユーロが急騰した場合、12月を待たずに緊急ECB理事会開催のシナリオも加えた方がよいかもしれません。

 このように欧米の中央銀行は、今回の米大統領選挙は混乱を招く可能性があるとさまざまなシナリオを想定している可能性があります。こちらもそれなりの心の準備をしておいた方がよさそうです。