価格推移:ビットコインは年初来高値を更新。イーサリアムは高値水準を維持

以下のとおり、足元、ビットコイン、イーサリアムは上昇しています。ビットコインは年初来高値を更新、イーサリアムは高値水準を維持しています。

図:ビットコインとイーサリアムの価格推移 単位:円

出所:楽天ウォレットのデータをもとに筆者作成

 上昇の主な要因は、インターネットを経由した決済サービスを手掛ける米国のPayPal(ペイパル:PYPL  NASDAQ)が、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産を購入・保管・販売できるサービスを提供すると公表したこととみられます。

 ペイパルの顧客は、全世界で、3億4,000万人以上いると言われています。世界中の多数の顧客が、ペイパルのサービスを通じ、ビットコインやイーサリアムを保有したり、これらを使って商品を購入したりすることができるようになれば、今まで以上に、暗号資産がれっきとした世界共通の通貨になる期待が高まります。

 足元、主要な暗号資産であるビットコインやイーサリアムは、このような期待を受けて、上昇したと考えられます(後述の「トピック:ペイパルの株価とビットコイン価格の連動性に注目」で触れます)。

 以下より、ビットコインとイーサリアム、コモディティ(商品)、主要株価指数、通貨の、騰落率、および相関係数を確認します。

騰落率:天然ゴムと、ビットコイン、イーサリアムの上昇が目立った

 10月1日(木)から26日(月)の騰落率のランキングを確認します。この間の上昇率1位は、天然ゴムでした。そして2位、3位に、ビットコイン、イーサリアムが入りました。

図:ビットコインとイーサリアム、各種銘柄の騰落率

2020年10月1日(木)から26日(月)の終値で計算
出所:楽天ウォレット、マーケットスピードⅡなどのデータをもとに筆者作成

 天然ゴム価格が大きく上昇したのは、中国が世界屈指の天然ゴムの消費国である中国の経済が好転しつつあるためです。現時点で中国は、経済規模が大きい国の中で、コロナ感染の第1波が終わり、第2波が起きていない、珍しい国です。

 中国の経済情勢は、コロナ禍の7-9月期のGDP(国内総生産)がコロナ前の前年同期を上回ったことが示す通り、(統計上は)好転しつつあります。ビットコインとイーサリアムの上昇については、先述のとおり、ペイパルのサービス拡大が主な要因とみられます。

 新型コロナ、米大統領選挙、米中問題、人種間の争いなど、市場全体に強い不安要素が垂れ込める中でも、固有の上昇要因を持つ天然ゴムや暗号資産は、大きく上値を伸ばしたわけです。

 次にビットコイン、イーサリアムと各種銘柄の相関係数を見ていきます。

相関係数:ビットコイン、イーサリアムと天然ゴムの相関係数が比較的高かった

 相関係数は、2つの銘柄の関係性を数値化したもので、+1と-1の間で決まります。+1に近ければ、2つの対象物の関係は正(連動するように動いていること。相関)、-1に近ければ、関係は負(正反対に動いていること。逆相関)、0に近ければ2つの対象物は、関りがないこと(無相関)を意味します。目安は、以下のとおりです。

 相関係数の見方は、以下のとおりです。

 0~+0.3(-0.3):ほぼ無相関
+0.3~+0.5(-0.3~-0.5):弱い相関あり(逆相関あり)
+0.5~+0.7(-0.5~-0.7):相関あり(逆相関あり)
+0.7~+0.9(-0.7~-0.9):強い相関あり(強い逆相関あり)
+0.9以上(-0.9以下):非常に強い相関あり(非常に強い逆相関あり)

 以下は、2020年10月1日から26日の、ビットコイン、イーサリアムと、他の銘柄の相関係数です。

図:ビットコイン、イーサリアムと、各種銘柄の相関係数 (2020年10月1日から26日)

出所:楽天ウォレット、マーケットスピードⅡなどのデータをもとに筆者作成

 この期間、ビットコイン、イーサリアムと天然ゴムの相関係数が、比較的高くなりました。天然ゴム価格とビットコイン価格が、同じような波で上昇したことを示しています。

 ただし、天然ゴムの上昇の主因は中国経済の回復期待、ビットコインの上昇の主因はペイパルのサービス拡大であると考えられることから、相関係数が高いからと言って、2つの銘柄が同一の要因で動いているとは限らない点に、注意が必要です。

図:ビットコインと天然ゴムの価格推移 

単位:円(天然ゴムは1キログラムあたり)
出所:楽天ウォレットおよびブルームバーグのデータより筆者作成

 次は、ペイパルの株価とビットコインの価格の推移を確認します。

トピック:ペイパルの株価とビットコイン価格の連動性に注目 

 以下より、ペイパルの株価とビットコイン価格(ドル建て)に注目します。

図:ペイパルの株価とビットコイン価格(ドル建て)の推移 単位:ドル 

出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 直近でビットコインの価格が大きく上昇しているのは、ペイパルのサービス拡大のアナウンスによるものとみられます。

 実際のところ、今年に入り、ビットコイン価格とペイパルの株価は、同じような波を描いています。年初から10月26日までの相関係数は、+0.85です。

 先述のとおり、天然ゴムとビットコインは、相関係数は高いものの、同じ要因で動いていないと考えられます。一方、ペイパルとビットコインは、それとは異なり、おおむね同じ要因で動いていると、考えられます。

 特に新型コロナがパンデミック(世界的な大流行)化した3月以降、世界中で、これまで以上にインターネットが、個人の生活に深く関わるようになりました。移動の自粛、人と人との接触の機会を減らす、などの“新しい生活様式”が世界的に推奨されたためです。

“新しい生活様式”を取り入れる動きが強まれば強まるほど、個人にとって、インターネットがより重要になり、同時に、インターネット上での決済サービスも、より重要になります。さらに同時に、インターネット上で使い勝手がよい“お金”も、重要度が増すわけです。

 コロナをきっかけに、インターネット上の決済サービスの重要度が増したことで、同サービスを手掛けるペイパルの株価が、インターネット上で使い勝手がよいと考えられるビットコインの価格が、上昇している、と解釈できるのではないでしょうか。つまり、2つの銘柄の上昇の根底には、“コロナのパンデミック化”という共通のテーマが存在していると言えると思います。

 米大統領選挙、米中問題など、さまざまな不安要素はあるものの、まだしばらく、コロナ禍特有の生活様式は続くとみられます。今後もしばらく、ペイパルの株価、そしてビットコイン、イーサリアムの価格は、(時には荒い上下があったとしても)上値を伸ばし続ける可能性があると、筆者は考えています。

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