米大統領選前にひと波乱、29日に警戒
米大統領選挙まであと1週間となりました。10月22日の最終討論会ではバイデン氏が勝(まさ)っていたとの世論調査ですが、マーケットとしては11月3日の選挙結果を見るまでは動きづらいため、ここからますますヒートアップする選挙キャンペーンや舌戦だけでは材料になりにくいことが予想されます。
ペンス米副大統領の側近が数名陽性だったという報道は気になるニュースですが、これ以上、新型コロナウイルスの感染が拡大しないのであれば、材料になりにくいと思われます。それよりも今週は、下記の通り週後半に集中している米欧のGDP(国内総生産)指標と、ECB(欧州中央銀行)理事会が波乱材料になるかもしれません。
日程 | 材料 |
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10月28日(水)~29日(木) | 日本銀行金融政策決定会合 |
10月29日(木) | ECB理事会 |
米国7-9月期GDP | |
米国GAFA決算発表 | |
10月30日(金) | ユーロ圏7-9月期GDP |
すなわち、米国7-9月期GDP速報値は29日(木)、ユーロ圏7-9月期GDP速報値は30日(金)に発表されます。4-6月期GDPは、欧米ともロックダウンや外出規制によって大幅マイナスになりましたが、7-9月期GDPは経済活動が再開されたこともあり、その反動によって大幅プラスが予想されています。果たして期待を裏切らない数字が出るのか注目です。
特に米国GDPは30%を超える成長力の予想ですが、織り込まれているとはいえ、現職大統領再選の追い風になるかどうか注目したいと思います。また、29日にはGAFA(アルファベット、アマゾン、フェイスブック、アップル)の四半期決算発表が予定されています。このように29日(木)は米国のGDPとGAFA決算材料でマーケットは動く可能性があるため留意しておく必要があります。
29日のECB理事会で波乱か?
もう一つ、波乱材料になる可能性があるのは、29日のECB理事会です。29日には前日から開催されている日銀の金融政策委員会と黒田総裁の記者会見が予定されていますが、日銀は政策変更もなく、菅新政権の下でも協力してこれまで同様の政策を維持するという確認に終始することが予想され、目新しい材料にはなりにくいと思われます。
それよりも29日のECB理事会や直後のラガルドECB総裁の記者会見は波乱材料になりそうな雰囲気が既に漂っています。ユーロ圏は物価のマイナスが続いているため、物価下落の背景のひとつであるユーロ高について警戒感を更に強める可能性があるかもしれません。また、欧州では新型コロナの感染拡大の勢いが増しているため、各国が外出規制強化に動き出してきており、経済活動制限による景気減速懸念から追加金融緩和の期待が高まっています。
今回のECBは、政策変更をしないとの見方が大勢ですが、次回以降の政策の選択肢を広げるためにマイナス金利の深掘りを含めたメッセージを発する可能性が予想されます。
もし、ユーロ高けん制や追加金融緩和をにおわすメッセージが発せられれば、これらはユーロ売り材料となり、ユーロ/円も円高に反応することが予想されます。その場合、ユーロ安はドル高ですが、ドル/円はユーロ/円の円高に引っ張られることが予想されるため、ドル/円の一段安(円高)も視野に入れておいたほうがよいかもしれません。
29~30日の波乱材料で相場が動き、月末(30日)、月初(11月2日)の需給要因で相場が動いた後は、11月3日の米大統領選挙の結果を見るまでは、全く相場が動かないことが予想されます。マーケットの流動性も乏しくなり、プライスも悪くなり、思わぬプライスアクションになることも予想されます。ポジションを調整するのであれば、早めに準備をしておいた方がよいかもしれません。
「レッド・ミラージュ」とフライングに注意!
4年前は、クリントン氏優勢で選挙が始まりました。選挙日の翌日である11月9日(水)の東京市場では(米国では選挙日の夜)、当初、クリントン氏優勢の報道で1ドル=105円台半ばまでドル高となりましたが、接戦州でトランプ氏優勢と伝わるとドル安となり、101円台前半まで円高となりました。予想外のトランプ勝利は円高で反応しましたが、その後は財政出動や大型減税の政策を好感し、金利高、ドル高となり、その日のNY市場では1ドル=105円台後半まで上昇しました。その後もこの流れが続き、11月は1ドル=114円台まで上昇しました。
4年前の相場展開は、参考にはなりますが同じようなシナリオになるとは限りません。4年前は予想外のトランプ勝利でしたが、日付が変わる頃には勝敗が決していました。しかし、2020年は郵便投票が多いため、開票に時間がかかり長引きそうです。そのことを揶揄(やゆ)するかのように「レッド・ミラージュ」というシナリオがささやかれています。そのシナリオとは、当初トランプ氏が優勢となるが、郵便投票の開票が進むにつれて民主党が優勢となっていき、共和党優勢は蜃気楼(しんきろう)だったというシナリオです。「レッド」は共和党のイメージカラー、「ミラージュ」は「蜃気楼」を意味します。
しかし、それでもトランプ米大統領が敗北宣言をしない限り、バイデン氏が勝利することはできません。敗北宣言どころか、トランプ大統領は蜃気楼の段階で勝利宣言をするかもしれません。
バイデン氏が圧勝しない限り、法廷闘争にもつれ込むといわれていますが、トランプ大統領は既に法廷闘争の準備を進めているという話は聞こえてきており、バイデン氏が圧勝しても法廷闘争は起こるかもしれません。
今回は郵便投票が多いため、数日や1週間程度長引くのは理解できますが、法廷闘争によって11月中も決まらないとなると投資家は長期間動けず、フラストレーションがたまる一方です。しかし、フライングで動くわけにもいきません。
こちらがフライングしなくても、候補者がフライングして勝利宣言することは起こり得るシナリオです。フライングによって相場はかく乱されることも予想されるため、いつも以上に慎重に相場に臨む必要がありそうです。
オハイオ州を制する者が全米を制すると言われているオハイオ州では、トランプ大統領の支持率が逆転し、バイデン氏を上回りました。まだまだ勝敗は分かりませんが、フライングだけには気をつけたいと思います。
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