※モトリーフール米国本社、2020年10月5日投稿記事より

 ある世論調査によると、米国人の半数近くは大統領選挙が公正に運営されるという確信を持っていません。

 パンデミック(感染症の世界的流行)と、トランプ大統領が郵便投票に対し疑問を呈したことにより、選挙をめぐる不確実性はすでに高まっていますが、大統領が新型コロナウイルスの検査で陽性反応を示したというニュースで、この不確実性は最高潮に達し、前例のない状況に発展する可能性があります。

 大統領選挙の結果が迅速に判明しない可能性があるほか、選挙までの間のトランプ大統領の健康問題もあり、投資家は、選挙に関連した株価の変動に備えておくべきです。

 株式市場は長期的には選挙をめぐる雑音を払いのけるはずですが、投資家は選挙による不確実性だけではなく、寒い季節が到来することで新型コロナウイルスの感染が拡大し、景気回復の遅れがW型の景気後退につながるリスクにも直面するため、今後の数カ月は荒れもようとなる可能性があります。

 以下、大手小売業者のウォルマート(NYSE:WMT)、たばこ・ワイン製造持株会社のアルトリア・グループ(NYSE:MO)、および通信業持株会社のAT&T(NYSE:T)が、選挙をめぐるあらゆる不確実性への対処に必要なものを備え、その間も配当を継続できる理由を説明します。

ウォルマート:最強の必要不可欠な小売業者

 ウォルマートは売上高で世界最大の企業であり、低価格や、食料品の集荷・配送のためのインフラ、規模の利益、全米人口の90%が同社の店舗から10マイル以内に住むという店舗網の利便性など、その強さは一目瞭然です。

 必要不可欠な小売業者として、パンデミック中に同社の優位性はさらに高まっています。

 加えて、低価格に対する評判から、同社は景気後退時には人気があり、またeコマース(電子商取引)インフラは、実店舗を訪れたくない顧客への販売に貢献しており、2021年度第2四半期(〜2020年7月31日)の売上は前年同期比でほぼ倍増しました。

 Amazonプライムに対抗する同社の新しい有料会員サービスである「ウォルマート+(プラス)」も好調なスタートを切り、すでに米国人の11%が会員登録をしています。

 選挙の結果、どのような混乱が起きようと、食料品、生活必需品、その他の商品を求め、米国人は生活必需品小売大手としてウォルマートに頼るでしょう。

 配当貴族(過去25年以上にわたり増配を続ける企業)である同社は、いくつかの景気後退と政治的な危機の時期も含め、46年間にわたって毎年増配を続けており、今年の増配を疑う理由はほとんどありません。

 現在の配当利回りは1.5%(執筆時点)であり、eコマースにおける成長の可能性を考えれば、株価は適切だと思われます。

アルトリア:高利回りの宝石

 ストレスの高い状況では喫煙率が上昇する傾向があり、パンデミック、景気後退、不安定要素の多い大統領選挙などの危機が重なった今ほど、ストレスの高かった時期は思いあたりません。

 消費者は経済全体の状況にかかわらず紙巻きたばこを購入するため、こうした状況でパフォーマンスが最も良いのは、マルボロやその他のたばこブランドの国内メーカーであるアルトリアのようなディフェンシブ銘柄です。

 アルトリアは、主としてその配当株としての優れた実績から、過去50年間で最もパフォーマンスの良かった銘柄の1つです。

 過去51年間に55回の増配を実施しており、現在の配当利回りが8.9%(執筆時点)であることから、信頼できる配当利回りの高い株を探す投資家にとって最良の選択肢の1つです。

 電子たばこで知られるジュール・ラブズに対する出資で数十億ドルの評価損が発生するなど、いくつかの課題に直面していますが、中核事業は引き続き堅調であり、新型コロナウイルスのパンデミックで難しい状況に直面しつつも、直近四半期の調整後利益はわずかながら増加しました。

 同社の経営陣によれば、通年ベースの1株当たり利益(EPS)は横ばいないし4%の増加となる見通しです。

 米国では紙巻たばこの消費量は減少を続けていますが、次世代製品への道を開くため、同社はフィリップモリスの加熱非燃焼型電子たばこIQOS(アイコス)の販売を全米で拡大しています。

 カナダの医療用大麻事業会社クロノス・グループへの出資により、同社はマリファナ分野にも進出していますが、マリファナが米国で合法化されれば、同分野は大きく成長する可能性があります。

 選挙の結果がどうであれ、同社の事業は堅実です。

AT&T:多様な事業を展開する通信事業大手

 AT&Tは、電気通信サービスのプロバイダーおよび米国第2位の通信事業者として知られていますが、ディレクTVを通じて有料テレビ事業を、ワーナーメディアを通じて映像エンターテインメント事業を展開しており、後者では動画配信サービスHBO Maxが最近開始されています。

 ディレクTV契約者数の減少や中核事業である電気通信事業の成熟もあり、売上増加に苦労していることから、同社の成長率は冴えませんが、それもHBO Maxのサービス開始と次世代通信規格「5G」の展開後は変わる可能性があり、定額制データサービスの価格は上昇するかもしれません。

 同社は、2つの理由で、高配当利回り銘柄のスターとして際立っています。

 同社は高度に規制された参入障壁の高い3社寡占市場の1社であり、巨額のフリーキャッシュフローを生み出しています。

 パンデミックに関連した課題に直面した厳しい第2四半期の間も、76億ドルのフリーキャッシュフローを生み、それにより配当性向は49%となり、フリーキャッシュフローで容易に配当を賄うことが可能です。

 また、配当利回りは7.3%(執筆時点)であり、1984年に配当を始めて以降、毎年増配を実施しています。

 通信による接続の重要性はパンデミックが示しており、選挙の結果がどうであれ、これが変わることはありません。

転載元:モトリーフール

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