第三者割当で43億HKドル調達、不動産銘柄の増資リスク高まる

現地コード 銘柄名
03333

中国恒大集団

(チャイナ・エバーグラン・グループ)

株価 情報種類

19.34HKD
(10/15現在)

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 不動産デベロッパー大手の中国恒大集団は14日、新株2億6,065万株(現在の発行済み株式総数の約2%、増資後発行済み株数の約1.96%)の発行を伴う第三者割当増資をめぐって契約したことを明らかにした。割当価格は1株16.50HKドルと、直近の12日終値を14.68%下回る水準。資金調達額はグロスで43億100万HKドル、正味で42億5,600万HKドル。増資の完了後、許家印会長の持ち株比率は71.72%から70.32%に低下する運びとなる。一方、同社の純負債比率(ネットギアリングレシオ)は小幅に改善する見通しだが、BOCIはEPS希薄化に伴う1株当たりNAV(純資産価値)の縮小や、分譲価格の大幅値下げを進める同社の財務に対する市場の懸念を考慮。目標株価を引き下げ、株価の先行きに対して中立見通しを継続した。

 発行済み株数の変化や資金調達に伴う利息収入の増加を加味した上で、BOCIは増資による20-22年のコアEPSの希薄化率を0.6%、1.4%、1.4%と推定している。

 純負債は増資に伴い、42億5,600万元(約37億元)の幅で縮小する見込み。BOCIは純負債比率の予想を2.3ポイント低い147.5%に引き下げた。また、普通株への戦略投資のシフトや増資の実施を考慮した上で、キャッシュフロー面の圧力は弱くなるとの見方。ただ、同業銘柄との比較では、同社の資金繰り圧力は依然大きいとしている。

 今回の増資の引き受け先について、メディア報道では、世界最大規模の資産運用会社であるバンガードやノルウェー中銀の資産運用部門(Norges Bank)、国際著名ファンドのSnow Lake、KeySquare、LMR、英有力保険会社Legal & Generalなどの名が挙がっているが、中国恒大集団による確認は得られていない。BOCIは仮に報道内容が事実であれば、株主構成の改善につながると指摘している。

 一方、BOCIは同社の増資を機に不動産銘柄のリスクが総じて高まったと指摘。政府当局の新規定「三条紅線(3本のレッドライン:不動産デベロッパーを負債水準などで分類し、レッドラインに抵触した場合は融資枠を制限する規定)」に対処するための手段として、マーケットが新株増資の可能性を意識したことが理由だ。ただ、いずれにしろ財務が健全な不動産銘柄に関しては、リスクは限定的との見方。「3本のレッドライン」に抵触する銘柄に限り、投資家はより慎重なスタンスを取る必要があると指摘している。

 同社のNAV総額は現金調達で1%拡大するが、発行済み株数が2%膨らむことで、BOCIが示した1株当たり予想NAVは1%減の31.86HKドルとなる。BOCIはまた、分譲価格の大幅値下げを受け、市場が同社の財務を懸念していることを考慮。1株当たりNAVに対する目標株価のディスカウント率を35%から40%に引き上げた。現在株価は20年予想PBR(株価純資産倍率)で1.3倍の水準にあり、NAVに対するディスカウント率は39%。ROEの改善を考慮すれば、これが適正水準に当たるとしている。