何を買うにも「ポイント」付与があり、ポイントで多くのモノが買えるようになりました。ポイントカード、クレジットカード…最近ではスマホ決済まで登場。

「消費税増税」も迫っている中で、ポイントの使い方が節約の要。ポイントの達人、菊地崇仁さんに聞いた「貯まる&お得なポイント術」を前・中・後編にわたってお届けします。

 前編は、ポイントの歴史から最新の世界のポイント事情をお伝えします。

「ポイント達人」菊地さん登場

――あらゆるポイントを使う「ポイント達人」の菊地さん。きっかけは?

「ポイ探」のサイト運営をしている菊地さん

 2006年に始めた「ポイ探」は、ポイントを使っていかに節約できるか、ポイントが貯まる「お得」な方法は何か、の情報を提供しています。

 僕の出身は札幌市。大学進学の際に東京で一人暮らしを始め、家計のやりくりをするうちに興味を持ちました。ポイント集めのきっかけは、「実家に帰る飛行機代をマイルで払いたい!」という具体的な目的です。そこから派生して、節約や運用もやっています。

――菊地さんのカードケースには、カードが100枚以上と聞いたのですが、早速見せていただいてもいいですか?

 クレジットカードをメインに、ポイントカードも含め40枚入る財布が4個で、160枚ほどあります。
 持ち歩いているのは、クレジットカードで80枚ほどあります。ポイントが貯まるチャンスを逃したくないので。

ポイントは、いつからはじまったのか

ポイントの始まり、懐かしのグリーンスタンプ

――そもそもポイントとは、いつ頃からあるのでしょう?

 1960年くらいから出現してきました。このころは、紙のカードにスタンプを押したり、シールを貼るスタイルです。「グリーンスタンプ」が有名でした。同じ頃に、今でも学校設備のために集めている「ベルマーク」が登場します。

 1980年頃からは「クレジットカードポイント」が出現して、 JCB のポイントプログラム「JOYJOYプレゼント(現Oki Dokiポイント)」などが出てきました。1984年には、ヨドバシカメラの「ゴールドポイントカード」でポイントが貯まるように。これが日本初のプラスチックの「ポイントカード」。磁気で登録をしていました。プラスチックのカードを見たとき、かっこいい!って思いましたね。

ポイント拡充、マイル、ネットが登場

 そこから、どんどん広がりを見せます。93年から JAL と ANA が国際線利用者にマイルをつけるようになりました。その後、国内線にも対象が広がります。後に、街中でポイントを貯め、飛行機に乗る“陸マイラー”も出てくるほど、マイルは広まっていきます。

 2000年からインターネットが普及し、ポイントも大きく変革をとげます。「ネットポイントと電子マネーの登場(2000年~2001年)」です。2002年には楽天が楽天スーパーポイント※1を始め、Tポイントも続きました。(※現在の楽天ポイント)

 次の大きな変化は2007年。「電子マネー元年」と言われるほどの大きな変化が起きました。セブン₋イレブンのnanacoや首都圏を中心とした交通機関の乗車や切符購入で使えて買い物もできるPASMO、イオンスーパーなどで使えるWAONなど種類が一気に増えました。コンビニやスーパーなどのリアル店舗での買い物や、交通機関で利用の際にポイントが貯まる・使える場面が一気に広がりました。

 2013年は、ネット利用が主力のYahoo!ポイントと街中利用のTポイントが提携しました。両方のサービスで共通して、ネットでもリアルでもポイントが貯まる・使えるようになり、すごく便利になりました。

 2014年くらいからは、携帯電話会社のポイントと、既存のTポイントなどの提携が続き、使い勝手がさらに改善。2015~2016年にスマホ決済が登場したのは、記憶に新しいですね。ざっくり表にまとめて見ると、最近は、提携や統合でさらに使える・貯まる範囲が広がりました。使う媒体も、カードだけでなく、スマホ決済も広がっていますね。

[ポイント年表]

時期 分類 できごと
1960年頃 個別企業・リアル グリーンスタンプ、ベルマークなど紙ベースで、初のポイント登場
1980年頃 リアル・クレジットカードポイント JCB の「JOYJOYプレゼント(現Oki Dokiポイント)」などスタート
1984年 ショップのポイントカード 初のプラスチックのポイントカード、ヨドバシカメラの「ゴールドポイントカード」
1993年 リアル・港空系ポイントカード JALとANAが国際線利用者に「マイル」
2001年 ネットポイント登場 インターネットの普及により、インターネット上のポイント「ネットマイル」などが誕生
    Suicaや Edyが出現、電子マネーのデビュー
2002年   楽天がスーパーポイントを始め Tポイントがこれに続く
2003~2004年   ブログサービスなども誕生し、ポイントサイトが出現
2007年

リアル店舗で電子マネー利用普及始まる

電子マネー元年、コンビニなどへ爆発的に広がる、nanaco、PASMO、WAON 登場
2010年   コンビニローソンのポイントPonta登場
2013年

ネットとリアルの融合:ネットポイントが街中で使える

TカードとYahoo!ポイントが統合
2014年   携帯電話会社のポイントが街中で使えるように
    楽天スーパーポイントが街中で使えるように
    ソフトバンクポイントが Tポイントへ統合
2015年   ドコモの dポイントが街中で使えるように
    スマホ決済登場、オリガミ、LINEペイ、楽天ペイなど多数
2016年   LINE ポイントスタート
 

同一グループによるグループ内共通ポイント

Suica、WAONなどがグループのポイントを統合

スマホ決済だけじゃない!世界のポイントと決済事情

ヨーロッパの最近のトレンドは“コンタクトレス”

―― “コンタクトレス”とは何でしょうか

保有のコンタクトレスカード。音声のようなマークが。

 一言でいうと、交通系Suicaや PASMOのイメージです。「サインレス決済」とか、「タッチ決済」とも呼ばれます。非接触型ICチップを使って、カードをかざすだけで決済できるので、基本的に暗証番号やサインの必要がありません。クレジットカード、デビットカード、プリペイドカードと3種類あります。

 ヨーロッパはこの決済が主流になりつつあって、英国の地下鉄はコンタクトレスのカードがないと乗れません。米国でも使えます。国際ブランドの「VISA」が力を入れて展開中ですね。カードに「Visa payWave」などのマークがあるカードが“コンタクトレス”で使えます。

“1秒以内で決済”できるのも強み。日本のSuicaは0.2秒ですが、1秒であれば電車の改札もまあ問題ないと思います。

――本人確認は大丈夫なのでしょうか?

 支払額が一定金額(日本では原則1万円)を超えると普通のサイン決済(暗証番号)にする、とリミットを設けています。少額向けですね。これから、ラグビーワールドカップや2020年オリンピック・パラリンピックがあるので、日本での拡大の可能性も高いと考えています。

中国では、スマホ決済。韓国はキャッシュレス先進国

――中国ではスマホ決済が主流と聞いていますが。​

 中国は国土が広くて、現金輸送のコストがかかることや、偽札の心配があるなど、現金に対する不信感がある環境でした。そこで、政府主導で決済手数料を低く抑えることで、スマホ決済が一気に広まっています。

――韓国はいかがでしょうか?

世界ではキャッシュレスが進んでいる

 韓国は、決済の90%以上がクレジットカード決済と言われています。なぜそんなにキャッシュレスが進んだかというと、1997年に始まった「アジア通貨危機」がはじまりです。というのも、韓国でアジア危機が起こったのは、脱税が横行して、政府の税収がとても少なかった、という背景があったそうです。

 そこで、小規模事業主の決済にクレジットカードを導入して、“収入や支出を見える化し、脱税がしにくい仕組み”を作りました。クレジットカードを利用すると、年間利用額の20%の所得控除(上限30万円)や、「宝くじが貰える」といった“オマケ”を設定。プラスして、年商240万円以上の店はクレジットカード取り扱いを義務化。政府主導でクレジットカード利用の普及を応援しました。結果として、キャッシュレス化がぐっと進んだわけです。

変化するポイント!ポイント発行企業の目的は何?

――最近どこでもポイントをもらえますが、抵抗もあります。​

 そんなに怖がらなくても大丈夫です!(笑)昔のカードやポイントの目的は、お客さんが他の店で買わないようにする、“顧客の囲い込み”にありました。今は、ネット通販もあり、選択肢が爆発的に増えましたね。そこで、ポイントも“顧客満足度をアップする手段”に。

 その一例が、カード会社が運営する「ポイントモール」です。モールを経由すると、ポイントが2倍3倍になることが多いですね。ポイントモールは顧客満足度のアップと、利用者のデータ収集のためにあります。顧客の行動が分かるデータは、企業にとって“ポイントを払ってもほしい”貴重な情報だからです。

キャッシュレス化の入り口?! “自治体ポイント”登場

――自治体にもポイントがつくものがありますね。

 日本もキャッシュレス化を推し進めています。2018年に経済産業省が「キャッシュレス・ビジョン」を発表し、2025年のキャッシュレス決済の目標を全体の40%に掲げました。

 自治体でも、これに対応する動きがあります。いくつかの自治体でも、ポイントを作っています。自治体が行う健康診断やイベント参加者に独自に発行するポイントです(実施は、各自治体へ要問い合わせ)。もう一つ別の使い方があって、クレジットカードのポイントやマイルを自分のマイナンバーカードに転換して、自治体ポイントとして買い物などに使う方法です。

消費税増税でキャッシュレス化の波が?

――10月での消費税増税で、中小店舗のクレジットカード決済を5%ポイントで還元する動きがありますが。​

 自治体ポイントでも触れましたが、政府主導で、現金からキャッシュレス決済への流れを作ろうとしていると思います。10月1日からの9カ月間(2020年6月まで)に限りますが、増税分の2%を超える5%を還元します。ぜひ利用したいですね。これまで現金で払っていた人も、この期間に対象店舗でクレジットカード払いをすれば、自動的に5%分ポイントがつくので、とてもお得です。

日本でポイントがどこまで普及するか…と語る菊地さん

 対象店舗は、主に「中・小規模事業者」で、経済産業省等が現在登録店舗を受付中で、7月下旬から公表します。9月には対象店舗に統一ポスターの掲示開始のようですから、お店のポスターを確認して利用すると良いですね。

 コンビニなどの大手企業のフランチャイズ店は2%還元だそうなので、よく利用する店舗が“ポイント還元”対象かどうか、気になるところです。

参考元:経済産業省「キャッシュレス・消費者還元事業

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