ジュニアNISAの2023年末終了が決定済みだが…
少額投資非課税制度ことNISA(ニーサ)には、一般NISA、つみたてNISAともう一つ、「ジュニアNISA」があります。しかし利用実績が乏しいことから2023年末で終了することが決定しました。
ジュニアNISAとは、未成年の子の名義で開設されるNISA口座です。一般NISAやつみたてNISAは20歳以上でないと開設できませんが、未成年にも利用の範囲を広げた仕組みでした。
1年あたり80万円までの買い付けが可能で、株式や投資信託が対象となります。非課税投資期間は5年目の年末までと、一般NISAと同じです。新たなジュニアNISA枠へ移管するロールオーバー(非課税期間延長)の仕組みもありますが、一般NISAと異なるのは売却代金や配当をすぐに現金で受け取ることはできず、課税ジュニアNISA口座に入金され、受け取りが可能となるのは、18歳になってからです。
正確には3月末時点で18歳になる年の翌年末までなので、標準的なケースでは、大学入学年(高校卒業年)の1月以降なら解約できることになります。
基本的には大学進学の学費準備への資金使途が想定されており、引き出しに強い制限のある仕組みでした。これが利用実績の低さにつながっているものとみられています。一般NISA、つみたてNISAの合計が1,405.6万口座のところ、ジュニアNISAは35.6万口座にとどまっています(2020年3月末時点)。
終了が決まって「ある」ルール変更が追加される
今まで、ジュニアNISAの「使いにくい」ところとして、解約の制限があることを指摘されてきました。すでに述べたとおり、高校3年の12月末まで解約できないわけです。
これは大学の入学金には間に合うものの、それ以前の資金使途には使うことができません。仮に小学1年の時点から資産形成をしても、高校進学費用や高校在学時に通う予備校の費用などには用いられないというわけです。
ならば、中学入学時点や高校入学時点からジュニアNISAを活用した場合、投資期間が短くなるため、リスク資産運用としてはあまり向いていない問題が生じます。入学金の振り込み直前に短期的なマーケットの下落に直面するのはイヤなものですが、かといって数年で売却をしてそのまま18歳まで塩漬けするのも、あまりおもしろくありません。
しかし、2024年1月にはジュニアNISA制度そのものが終了することから、あるルール変更が追加されました。解約をすることも可能となるのです。
ジュニアNISA口座が新設できなくなるわけですから、当然と言えば当然ですが、これは大きな条件変化です。証券会社の人と話をしていると、これでジュニアNISAに興味を示した顧客がそれなりにいるのだとか。2020年3月の口座数が鈍いながらも伸び続けているのはそういう効果もあったのかもしれません。
また、ロールオーバーの仕組みについても、2024年以降は新規のジュニアNISA口座がないことから変化します。継続管理勘定というアカウントに持ち越すこともできます。前述の課税ジュニアNISA口座にロールオーバーせず移すことも可能です。
このあたり、投資の条件が変わったのなら、活用の余地はないか考えてみたいところです。
あえて口座開設をする場合の活用法と注意点
ジュニアNISAのおもしろいところは、拠出額がそれなりに用意されていることです。
年間80万円の投資枠がありますから、一般NISAほどではなくとも、つみたてNISAよりは大きいことになります。2020年、2021年、2022年、2023年と考えれば最大で320万円の元本が投資可能です。子どもが2人いる家庭であれば、今からでも最大640万円の非課税投資ができることになります。
多くの人は自分自身のNISA口座やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)を活用していると思いますが、まだまだ投資余力があって資産形成に取り組みたい場合は、非課税投資を行う選択肢の一つとなり得ます。
運用判断は基本的に、親が代理で行います。一般的には未成年口座をまず作り、あわせてジュニアNISA口座を作ります。未成年口座は親が代理で売買することを想定しているので、そのままジュニアNISA口座でも親が注文を出せることになるわけです。入金口座も基本的に子どもの名義の口座から行います。
楽天証券のように、ジュニアNISAの国内株式売買手数料は無料としている証券会社もあります。これもうれしいメリットです。
一方で、注意点もいくつかあります。まず、損益通算は行えません。NISAによって生じた損益はもともと総合口座の利益と通算はできない仕組みです。また口座が子の名義になりますから親の証券投資と(発注者は事実上同一であっても)通算はできないのが当然です。
また、解約ができるといっても、2024年になるまでは現行のルールがそのまま適用されていますから、今はまだ解約して受け取ることはできないことにも注意が必要です(口座を全部解約し、さかのぼって運用益に課税を受けることは可能)。
その他、生前贈与に使える制度もいくつか
ところで、税制上のメリットをもって、子どもが用いるお金を増やしておく、という観点ではあなたの親(子どもからすれば祖父母)からの生前贈与も考えられます。
贈与税については一人あたり年間110万円まで非課税となります。これは子の預金通帳に記帳するなどして履歴をしっかり残しておきましょう(国税庁)。
そして、贈与税の基本控除額以外にも現在は大きく二つの贈与に関する非課税枠があります。
まず「祖父母からの教育資金の一括贈与」について非課税枠があります。これは30歳未満の人へ対して教育資金に充てるため、教育資金口座を開設した場合、信託、預貯金、あるいは証券購入などの価額の1,500万円までの部分については贈与税が非課税になるというものです(国税庁)。
20歳以上50歳未満の子や孫へ対する「結婚・子育て資金の贈与」という仕組みもあります。これは1,000万円までの範囲で、一括贈与を受けた場合、結婚資金や子育て資金として活用できるものです。不妊治療の資金も対象になります(国税庁)。
いずれも、個人間の送金ではなく、金融機関が口座管理をすることが前提となっていますので、必要に応じて相談をしてみてください。
また、どちらも実施期限が2021年3月末までとなっており、タイムリミットが近づいています。その点では、2023年末まで利用できるジュニアNISAのほうがちょっとだけ長生きということになります(ただし、2020年末の税制改正大綱等で延長が認められる可能性もあります。最新の情報をご確認ください)。
運用益への課税、生前贈与に対する課税などをできるだけ減らすことができれば、その軽減分は資産管理によって生じた賢い運用ということになります。最新の制度情報をリサーチの上、ぜひ活用してみてください。
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