<今日のキーワード>

 このところ、世界的にESGやSDGs等への関心が高まるとともに、それらをテーマとする投資にも注目が集まっています。気候変動による自然災害や食糧問題の頻発の他、新型コロナウイルスも人々のESGへの関心を高めている模様です。今年は新型コロナウイルスのまん延で多くの企業が業績悪化に苦しみ、株価も一時大きく下落しました。本稿ではESG評価と株式リターン、企業業績との関係、その背景について見てみます。

【ポイント1】拡大する『ESG投資』

『ESG投資』は財務情報だけでなく、環境、社会、企業統治といった非財務面の要素も考慮した投資です。近年、異常気象や自然災害が多発している他、新型コロナウイルスの拡大により、「持続可能性」について関心が高まっており、その達成に向けた取り組みのプロセスとして、ESGの重要性が高まっています。

 ただし、日本における『ESG投資』への資金流入の度合いは米欧と比較すると控えめとなっています。これは、ESGと株式リターンの関係性が不明瞭だったり、『ESG投資』を検討する際に考慮すべき政治・政策、科学技術、気候変動の影響度等についての不確実性が高いことが要因となっている模様です。

【ポイント2】パフォーマンスが好調な『ESG投資』

 そこで、ESGと投資のリターンの関係性を確認します。代表的な株価指数として、MSCI ACWI(新興国を含む世界株式指数)と、MSCI社が作成するESGの評価が高い企業を集めたMSCI ACWI ESG Leadersの株式リターンを比較すると、今年については前者が▲1.55%、後者が▲0.12%(9月30日現在いずれも円ベース)と、ESG評価の高い企業群のリターンが高くなっています。

 

【今後の展開】好調な業績と安定性に注目

 ESG評価の高低と業績の関係について見てみます。具体的には、MSCI ACWI採用企業をESGスコア順に5つに分け、それぞれの今年と来年の純利益の予想を2年分通算して業績の変化率を計算しました。それによると、おおむね、ESG評価の高い順に2年間の業績の伸びが高くなっています。これがESG評価が高い企業群の今年の株式リターンの高さの背景になっている可能性があります。

 MSCI社の研究員の分析によると、ESG評価が高い企業は、収益性が高い他、適切なリスク管理を行っている傾向にあるとのことです。今後も、新型コロナウイルスの収束に時間がかかる等不透明感が高いため、業績の伸びやその安定性の観点でESG評価の高い企業への注目が高まる可能性があります。