原油相場の停滞は一時的、ワクチン実用化やOPEC減産が追い風に

 新型コロナウイルスの感染再拡大を受けた需要減速懸念で、国際原油価格の回復の勢いが鈍っている。ただ、BOCIは3カ月以内に実用化が期待される新型コロナワクチンや「OPECプラス」(石油輸出国機構の加盟国と非加盟産油国で構成)による減産順守方針を理由に、今後も原油価格の回復トレンドが続くとの見方。20-22年の価格見通しを1バレル当たり2-3米ドルの幅で上方修正した。また、中国で新たに発足した国有パイプライン企業、「国家石油天然気管網集団」(石油各社のパイプライン資産を取得、統合する事業体)による利益貢献を初めて反映させる形で、石油メジャーの20-22年の利益見通しを増額修正。セクター全体に対する強気見通しを維持している。

 原油相場の回復は8月になって鈍ったが、これは欧州でのコロナ感染・第2波の到来が背景。原油減産計画が第2段階を迎える中、OPECの生産量が前月比4.5%増えたことも一因となった。また、米国での石油生産量も台風の影響による縮小局面を脱した。

 ただ、BOCIは原油相場の停滞が一時的とみている。WHO(世界保健機関)によると、新型コロナワクチン候補のうち、9月17日までに臨床試験の第3相に入ったのは9種。一部は20年後半か21年初めに実用化するとの目標を掲げており、流行の段階的な収束が期待できるためだ。また、原油生産量の抑制を図るというOPECの方針もあり、BOCIは20年7-9月から21年10-12月にかけ、世界の原油供給量が需要を下回るとみる。

 BOCIはブレント原油の20年の予想平均価格を1バレル=40米ドルから43米ドルに引き上げ、続く21年、22年に関しても45米ドル(修正前42米ドル)、48米ドル(同46米ドル)に上方修正した。長期の価格見通しは57米ドルに据え置いている。

「国家石油天然気管網集団」の20年の純利益について、BOCIは現状を大まかに織り込む形で、約220億元と予測。これを基に、ペトロチャイナ(00857)とシノペック(00386)に対する同社の利益貢献が67億元、31億元に上る見通しを示した。また、国家石油天然気管網集団の貢献と原油価格の回復見通しを反映させる形で、石油メジャーの20-22年の利益見通しを上方修正したが、中でも引き上げ幅が大きいのはペトロチャイナとシノペック。現在株価レベルでの両銘柄の魅力を指摘している。

 BOCIはCNOOC(00883)を含むメジャー3社の株価の先行きにいずれも強気見通しを示した上で、シノペックをトップピック銘柄としている。原油探査・生産部門の赤字縮小を受けた7-9月の業績回復見通しや、安価での原油輸入による精製事業への恩恵などが理由。同社H株の配当利回り(20年予想で5.1%)の高さにも言及している。

 一方、セクター全体の潜在リスク要因としては、ワクチンの実用化が予想より遅れる、あるいはワクチンの効果が得られない可能性、OPECプラスの減産が実際には進まない可能性を指摘している。