ロビンフッダーの成功を呼ぶ4つの教義

 2020年のバブルは、QEインフィニティ(無限大介入)とコロナ給付金から自然発生したポンジスキームであろう。最初の投資家は、その後で投資した投資家によって株価が上がり、その結果、もっと多くの人が株式を購入するので投資収益を得る。宴は何かが新しいお金の流れを遮断するまで続き、突然すべてがクラッシュする。

 DDTG(デイビー・デイトレーダー・グローバル=ポートノイ(ツイッターで人気のデイトレーダー)が主宰するアカウント)の【ロビンフッダーの教義】をみてみよう。

DDTG(デイビー・デイトレーダー・グローバル)の成功を呼ぶ4つの教義

出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート(パンローリング)

 投資の神々を恐れぬメディアは、ロビンフッド族を称賛し、経験者を小バカにした。ロビンフッド族は新型コロナによる相場低迷期に無法者の名にふさわしい活躍をみせたかもしれない。

 だが、「カジノの素人向けタイム」の裏には銀の光が隠れている。経験豊富なポーカープレーヤーたちは格好のカモたちが現れるのを、爪を研いで待っているのだ。

焦って相場をやってはいけない…相場は明日もやっている

 筆者にもロビンフッダーのような時代があった。若い時はやり直しもできるし、何をやっても許されるだろう。だが、日計り狂と運任せの素人投資家から卒業し、運用を事業として考えている投資家は、スイス人著名投資家マーク・ファーバーの友人であるマイケル・ガイエド(ペンション・パートナーズ社ポートフォリオマネジャー、CFA)の発言を読んでおいたほうがいいだろう。

 投資家は今、何の疑いもなく受動運用のETFに資金を注ぎ込んでいる。戦略よりもただ手数料に注目するだけである。なぜか。リスク管理が問題にならず、市場平均の下げが数日間しか続かないようでは、いかなる思慮深い分析も必要がないからだ。

 サイクルで考え、大局観を持つには努力が求められる。しかし、非常に多くの市場参加者がボラティリティの平均回帰、また株価には上げるときよりもはるかに速く下げる傾向があることを忘れてしまっているようだ。そうなると「パニックの時」がやってくる。

 なぜか?未来は予測できないとはいえ「大衆は極端になると間違える」というのは予測できるからだ。そして現在、人々の意見は一致している。好意的反応の繰り返しが原因で、未来が過去とまったく同じようにみえると人々が信じるようになったからだ。

 メルトアップとは過剰流動性によって全部の資産価格が上がってしまう現象で、株価が上昇するとは考えられない理由が十分あるにもかかわらず、大幅な株高が進む状況を指す。現在のメルトアップは中央銀行主導のバブル現象なので息が長いが、メルトアップの後にはメルトダウンが待っている。

 一般の報道は、いかなる現実からもかけ離れている。そして、群集は単にそれを知るだけの集中力を持ち合わせていない。買うだけの投資家の集中力は短くなる一方であり、恐ろしい自己満足を長く生み出している。

 実際、相場が修正に向かいそうなたびに、それが瞬く間にのど元を通り過ぎている。もちろん、その状態が続く可能性はある。だが、相場が行き過ぎを修正するのに時間がかかればかかるほど、最終的に下方向への修正は、より過激になるのだ。

 リスクは生きている。市場が最も穏やかなとき、そして投資家にその備えが最もできていないときに、一撃をくらわす準備を整えているのである。

出所:マイケル・ガイエド (ペンション・パートナーズ社ポートフォリオマネジャー、CFA)

 米国では都市が燃え、像が倒れるなか、ナスダック株が史上最高値をめがけて駆け上がった。失業率が1930年代以来の水準に急上昇するなか、株式市場では運任せのギャンブルが急増した。

 米国では、SPAC(特別買収目的会社)を箱にしたインチキ上場スキームがはやっている。ペーパーカンパニーが資産を持たずに上場し、資金集めをして企業を買収していくといったバブル期にしか通用しないスキームである。最近は詐欺事件の報道が多いが、詐欺事件はバブル相場の一番高いときに出てくるものだ。

米国SPACの資金調達が今年は急増している

出所:ゼロヘッジ

 資産運用ベテランのビル・グロースは、「世界中どこを見ても、もうける余地のある場所はほとんどない。新型コロナウイルス・ワクチンがあろうとなかろうと同じことだ」と、述べている。

 現在の相場はファンダメンタルズが正当化する範囲を超えているが、これこそがバブル相場の特徴である。「まわりはみんなもうけている…自分だけが取り残される」という焦りや恐怖の心理的相場は、相場から合理性を奪ってしまうのである。焦って相場をやってはいけない。相場は明日もやっている。

世界は今後5年間で衝撃的変化を迎えるというレイ・ダリオの大局観

 世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーターの創設者であるレイ・ダリオが、マーケットウォッチのインタビューに答え、米国のばく大な借金を含む3つの課題により、世界は今後5年間で衝撃的な変化を迎えることになると指摘している。

 リーマンショックを回避したレイ・ダリオも、今年の相場では苦戦している。市場の相関関係が崩壊し、ポートフォリオではヘッジが難しい時代になった。だが、ダリオはまれにみる素晴らしい運用者だと思う。

「億万長者投資家のレイ・ダリオが資本主義の危機を語る。世界は今後5年間衝撃的な方法で変化するだろう」から一部簡約をご紹介しよう。

 Market Watch)今後5年から10年の間に米国が直面している3つの大きな国内外の問題と、これらの課題に対処できなかった場合、世界における米国の地位を脅かす可能性があることについて指摘してきた。3つの差し迫った問題とは何か?

 Dalio)病気を診る医者のように、機械的に見ている。何が問題なのかと問われれば、ある種の病気であり、それは時代を超えて普遍的なパターンを持っていて、米国はその進行を大まかに追っている。

 3つの問題が一緒になっているので、それぞれを理解し、それらがどのようにまとまって大きな問題を作っているのかを理解することが重要だ。お金と信用の循環の問題、富と価値観のギャップの問題、そして既存の支配的な権力に挑戦する新興大国の問題の3つである。

 大きな富の格差と一緒に景気が悪化していて、中国の台頭大国が既存の米国の支配力に挑戦している。過去数十年の間に、米国の競争上の優位性が弱まってきたのは事実だ。例えば、米国は他国と比較して教育面での優位性を大きく失い、世界のGDP(国内総生産)に占める割合が減少し、富の格差が拡大し、政治的・社会的な二極化が進んでいる。

 しかし、競争上の優位性をすべて失ったわけではない。例えば、技術革新やテクノロジーの分野では、米国が依然として最強だが、中国が非常に勢いづいてきており、現在のペースでは米国を上回るだろう。軍事的には米国の方が強いが、中国も非常に強くなってきており、台湾やその他の紛争地域を含む中国近海では米国より影響力を持っている。両国の財政は厳しいが、米国の方が厳しい。米国は負債サイクルと貨幣サイクルの末期にあり、大量の負債を生産し、大量の貨幣を印刷している。それが問題なのだ。

 M)はっきり言って資本主義は壊れているのか?

 D)壊れているというよりは、直さなければならない問題を抱えていると言いたい。私はすべてのものを機械のように見ている。資本主義は、インセンティブとイノベーションを生み出し、生産性を生み出すために資源を配分する素晴らしい方法だということがわかっている。すべての成功している国は、それを利用している。例えば、共産主義の中国は経済的には資本主義を選択したが、それはその成長に不可欠なものであった。

 しかし、資本主義はまた、大きな富の格差を生み出し、それが機会の格差を生み出し、今私たちが見ているような方法でシステムを脅かしている。富の格差は、富裕層の子供たちがより良い教育を受けられるという理由で不公平な優位性を与え、機会均等という概念を根底から覆している。機会均等という概念が損なわれる。機会均等を得る人の数が減ると、その人口の中から優秀な人材を見つける可能性が減り、公平ではなく、生産性が損なわれる。そうなると、「持っていない人」は、経済状況が悪い時に資本主義システムを破壊したいと考えるようになる。このダイナミズムは歴史の中で常に存在してきたし、今も起こっている。

 資本主義システムは利益を求めることで資源配分を行うシステムであり、一般的にはうまく機能しているが、必ずしもうまく機能しているとは限らない。資本主義や資本家は、経済のパイの大きさを大きくするために生産性を上げたり生産したりするのは得意だが、経済機会のパイを分割するのは苦手だ。社会主義者は総じて、生産性を上げて経済機会のパイを大きくすることは得意ではないが、経済機会のパイを分けることは得意だ。

 私たちは現在、負債を生産してお金を印刷することで富を得て、その富を分配することに重点を置きすぎており、生産性を高めることには十分ではない。富は借金やお金を作ることでは生まれない。教育のようにトータルで意味のある投資をして、生産的であるために平等な機会を創出することに目を向けなければならない。

 M)米国人が11月の大統領選挙を迎える中で、先に挙げた3つの大きな問題は、有権者が考慮すべき重要な要素のようだ。

 D)これまで話してきた3つの大きな問題に関連して、世界は今後5年間で衝撃的な変化を遂げようとしている。

 第一に、借金と貨幣のサイクルがある。お金の価値はどうなるのか?借金はどうなるのか?ドルはその価値を維持するのか?この財政は誰が支払うのか?どうやって?何が効くのか?これが第一だ。

 第二に、富、機会、価値観のギャップに対処しなければならない。お互いに害をなすような形で、お互いに歩み寄るのか、それとも事態が悪化しても協力していくのか。

 第三に、既存の米国の力に挑戦する中国の大国の台頭である。これはうまく処理されるのか。

 次の大統領任期ではこれらの問題を扱うことになり、結果に大きな影響を与えることになる。この3つが今のように存在していたのは、1930年から1945年の時代が最後だ。それは、ゼロ金利と貨幣印刷があった最後の時代。富と政治的格差が今日のように大きくなった最後の時代。既存の世界秩序に挑戦する新興国がいた最後の時代だ。以前の多くの類似した時代は、私たちに見通しを与えるのに役立つ。

 M)これらの国内外の課題は、明らかに米国人の財政に影響を与えるでしょう。投資家がポートフォリオを守り、市場のチャンスを活かすためには、どのようなスマートでプロアクティブな戦略があるのか。

 D)まず、投資の価値を心配するのと同じくらい、お金の価値を心配して欲しい。お金の印刷と借金は、そのことに気づかせてくれるはずだ。金融資産の価格が上がったのは、借金とお金の創造が原因で、株や金などの金融資産の価格が上がったのはそのためである。

 第二に、上手に分散する方法を知っておくこと。富はシフトするほど破壊されるものではないので、国、通貨、資産の多様化が含まれている。何かが下がると、他の何かが上がるので、相対的にすべてのものを見なければならない。

 米国人はすべての価値をドルで見るが、ドルの価値には目を向けない。慎重にならざるを得ない環境にあるのだ。

 来年のダボス会議テーマは「グレート・リセット」である。世界経済フォーラム(WEF)が「グレート・リセット」をテーマにするとは驚きだ。

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