新型コロナワクチンは米大統領選挙に間に合わない
9月23日(水)、元FDA(米食品医薬品局)長官のスコット・ゴットリーブ氏が米ケーブルテレビCNBCのインタビューで、「大統領選挙前に新型コロナワクチンのEUA(緊急使用承認)を取りつけることは日程から考えて絶望的だ」と発言しました。
これまでにゴットリーブ氏は「今回の新型コロナ禍がどのように進行するか」、そして「政府はどのように対応すべきか」に関し、数々の的確な提言をしてきました。そのため、市場関係者は彼の発言を深刻に受け止めています。
ただし、新型コロナワクチンのEUAが大統領選に間に合わないということは、必ずしも「もうワクチンはダメだ!」ということは意味しないと思います。
ただトランプ米大統領としては10月中にワクチン承認のニュースで人気回復を狙っていたことは明白であり、それが望み薄となると苦しい選挙戦を戦わざるを得ません。
大統領選挙有権者投票意向調査
ルース・ギンズバーグ判事の後任問題
9月18日、米国最高裁のルース・ギンズバーグ判事が死去しました。彼女は女性の権利の擁護にたいへん功績があり、民主党、共和党という党派を超えて、広く米国民から尊敬を集める存在でした。そのため、彼女の後任の指名問題が突如、浮上しています。
最高裁判事は一度任命されると生涯任期が切れることはありません。これは、最高裁判事がその時々の政治の風向きに左右されず、また解任されることを心配せず、正しい判断を下すことができるようにという配慮によります。
このように最高裁判事の人選は遠い将来に向けての重要な決定になるため、これを目前に迫った大統領選の前にバタバタと決めてしまうのは国民の支持は得にくいのです。
通常、最高裁判事の人選には70日程度の日数をかけ、じっくりと進められます。今回は45日しか残されていないので「性急なことはしないで!」と願う国民も多いのです。
一方でトランプ大統領は、来週にも代わりの最高裁判事の候補を発表すると言っています。またそれを承認する立場にある上院共和党も「大統領が指名する候補を可決承認する票数はそろっている」ことをシグナルしました。
つまり代わりの人選が強行される可能性が高いのです。
その場合、米国民は来る11月3日の選挙でそれに抗議し共和党に反対票を投じる可能性があります。つまり、みすみす共和党の息のかかった最高裁判事の任命をごり押しすることで、トランプ大統領、そして今回改選される上院の3分の1の代議士は自らの再選をリスクにさらすわけです。
これはとりもなおさず政治リスクが高まったことを意味し、投資家はそれを嫌気すると考えられます。
今後の投資戦略
新型コロナの外出禁止令が解除された後、米国経済は当初の予想より速いペースで回復してきました。これにはFRB(米連邦準備制度理事会)の大胆かつ断固とした緩和政策、2.2兆ドルの景気支援法案などの適切な政策も寄与していたと思います。
しかし今は、民主党が5月に可決した追加の景気支援法案が上院で頓挫(とんざ)したこと、ワクチンの承認が大統領選挙までに間に合わないこと、ギンズバーグ判事の後任問題などから急に不透明感が増しています。
目先の株式市場は「リスクオフ」にならざるを得ないと思います。ここは無理をせず、ポジションを少し整理し、急落に備えることが必要です。
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