多くの個人投資家の方は、「買った株が20%上がったら売ろう」とか、「年間で10%の利益を目標としよう」、というように、「パーセンテージ」で利益目標を決めているようです。しかしその決め方は本当に正しいのでしょうか?

 そこで今回は、筆者が考える利益目標の決め方をご紹介したいと思います。

パーセンテージによる目標には全く意味がない

 まず、「買った株が20%上昇で利食い」とか、「年間で10%の利益が目標」といったパーセンテージによる目標には全く意味がないと筆者は思っています。

 それは、株式市場の状況や、株価のトレンドを一切無視した目標の決め方だからです。

 例えば、アベノミクス相場が始まってから、利食いした個別銘柄がそこからどんどん上昇して、結局は利食いした株価の2倍、3倍にまで達して悔しい思いをした、という経験があるのではないでしょうか。

 10年に1~2度訪れる大相場では、個別銘柄の株価は簡単に安値から5倍、10倍にまで上昇します。こうした銘柄は、長期間上昇トレンドが続きますので、株価のトレンドに従って売買の判断を行っていれば利益を大きく伸ばすことができます。しかし、20%の利益で満足して売ってしまっては、その後の株価上昇の恩恵が受けられなくなってしまうのです。

 ですから、「〇%上昇したら利食い」ではなく、株価の上昇トレンドが続く限り保有するのが正しい判断です。そうすると、個別銘柄の利益目標を設定することには意味がないという結論になるのです。

相場環境に関わらず「年間〇%の利益」と目標を設定しても無意味

 また、年間利益の目標設定にも同様のことが言えます。年間にどれだけ利益をあげることができるかは、言うなれば「その年の相場環境次第」です。TOPIXが年間10%、20%と値下がりする中を「年間10%の利益」を目標とすれば、何とか儲けようと無理をして、結局は大きな失敗につながりかねません。逆に、TOPIXが年間30%上昇しているのに年間10%の利益では甘すぎます。

 そしてポイントは、TOPIXが今年何%上昇するかもしくは下落するかは、終わってみなければ誰にも分からないという点です。ですから、今年の相場環境が分からない中で「年率〇%の利益を目指す」と決めること自体が意味のないことなのです。

 ではどのように目標を設定すればよいか、筆者であれば次のような目標設定をしています。

  • 個別銘柄:利益目標は立てない
  • 年間での利益目標:「年間」というくくりではなく長期トレンドの方向性により決定。またパーセンテージではなく、市場平均と比べる形で目標設定

あくまでも「市場平均プラスアルファ」で考える

 上記についてもう少し詳しく説明します。まず個別銘柄について利益の目標を立てないのは、株価がどこまで上昇するか、事前には誰にも分からないからです。筆者は原則として上昇トレンドが続く限り保有を継続しますが、上昇トレンドがどこまで続くかは分かりません。上昇トレンドが終われば保有株を売却するだけですから、個別銘柄ベースではそこに「利益目標」を設定する余地はないのです。

 また、株式投資全体としての利益目標は、市場平均に対してどれだけプラスのパフォーマンスを叩き出すか、という観点から決定しています。

 具体的には、長期上昇相場では「TOPIXの上昇率の1.5倍の利益」を目標とし、長期下落相場では「プラスマイナスゼロ」を目標としています。

 この目標には、ファイナンシャルプランナーの教科書的に正しいと信じられている「インデックス運用による長期投資」を上回る投資成績をあげなければ個別銘柄に投資する意味がないと思っていることが根底にあります。

 その上で、個人的に十分に実現可能と思われる目標数値としています。もし「努力目標」のような厳しめの目標をたてると、目標達成のために無理のある投資行動をとってしまいがちですので、100%に近い目標達成ができるような甘めの目標となっています。

最低限インデックス運用での利益を超えなければ個別株投資の意味がない

 インデックス運用の利益を超えなければ個別株投資の意味がないのですから、個別銘柄に投資する個人投資家の方は、まずはTOPIXを少しでも良いので上回る投資成績をあげることを目標にしてください。その上で、実力がついてきたと思ったら、「TOPIXの20%アップを目指す」などというように、目標を次第に高めていけばよいと思います。

 なお、筆者が長期下落相場での目標を「プラスマイナスゼロ」としているのは、長期下落相場では、無理のない範囲で空売りを実行し、利益の上積みをはかるからです。空売りを使わない個人投資家の方であれば、長期下落相場ではどうしても投資成績がマイナスになってしまいますから、例えば「TOPIXの下落率の2分の1以内に収める」という目標でも十分です。

 なお、長期上昇相場と長期下落相場の定義は、月足チャートと24カ月移動平均線を用いたTOPIXのトレンドにより判断しています。これが上昇トレンドにあれば「長期上昇相場」、下降トレンドにあれば「長期下落相場」となります。

 たとえば、TOPIXが長期上昇相場入りして2倍に上昇したのであれば、自身の運用資産が2倍×1.5=3倍以上になっていれば、目標達成となります。

 また、下降トレンドが続いてるときは、この間に自身の運用資産が減少していなければ目標達成ということです。

目標達成のための手段の1つが「株価トレンド分析」

 そして筆者は、この目標を達成するために「株価トレンド分析」を用いています。これを用いれば、個別銘柄が下降トレンドにある間は株を保有しませんので、例えば上で述べた「TOPIXが長期下落相場にある間はTOPIXの下落率の2分の1以内に抑える」というのは容易に実現可能です。

 一方、TOPIXが長期上昇相場にある間は少し銘柄選択に工夫が必要になります。TOPIXは市場平均の動きを表しますから、市場平均以上の上昇をみせる銘柄を選ばなければなりません。

 例えば、アベノミクス相場の最初の半年(2013年5月まで)のような、何でも上がる全面高の相場であれば、優良株を狙うよりは業界下位銘柄や低位株、新興市場銘柄といった、値動きの大きい銘柄に積極的に投資することでTOPIXを大きく上回る投資成績を出すことができます。

 また、二極化相場が続いていて、増収増益が続く成長株が大きく買われる傾向あるタイミングでは、低位株・新興市場銘柄から成長株にシフトすることができれば、TOPIXを大きく上回るパフォーマンスを出すことが可能になります。

 ただ、個人的には、株価トレンド分析が威力を発揮するのは長期下落相場のときだと思っています。ですから、長期上昇相場でTOPIX並みの投資成績であったとしても、いずれ来る長期下落相場で資産の目減りを必要最小限に抑えておけば、インデックス運用の長期投資よりはるかに高いパフォーマンスを得ることができるはずです。