つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)が普及し、資産運用を始める人が続々と増えています。

「まずはインデックス投信で積立投資を!」と始めてはみたものの、肝心の投資信託選びは「なんとなく…」で選んでいる人が多いようです。この機会に、投信選びで大切なポイントをおさらいしてみてはいかがでしょうか。

米国株式に投資するインデックス投信が大人気

 ネット証券各社の投資信託買付ランキングを見ると、運用コストが低いインデックス投信が上位を占めている傾向にあります。

 なかでも、米国株式に投資するインデックス投信が大人気で、米国株式インデックスを保有する人たちがどのような判断のもとに選んだのか、業界でも関心の的となっています。

なぜ、米国株式インデックスを選んだのか?

 皆さんは、なぜ米国株式インデックスを選んだのでしょうか?考えられる理由をいくつかあげてみると、

(1)コスト重視
運用コストが低いインデックス投信のなかで、米国株式インデックスが最も低い部類だから

(2)実績・期待重視
米国株式市場が過去数年にわたり良好な成績で、今後もそれを期待しているから

(3)人気重視
詳しいことはわからないけど、買付ランキングの最上位にあるから

(4)複合的な理由
分散投資が大事という理由でインデックス投信を選び、さらに(1)~(3)も加味

といったところでしょうか。

 皆さん、様々な理由で米国株式インデックスを選んだことと思いますが、上記の判断について懸念される点を考えてみましょう。

その選んだ理由、リスクや注意点は?

「(1)コスト重視」の場合、運用コストを重視することは大事ですが、その結果、米国株式市場に集中していることが分散投資の観点で気がかりです。

「(2)実績・期待重視」の場合、そもそも実績を重視するなら、インデックス投信を上回るアクティブ投信も選択肢に入るはずです。

 もし、アクティブ投信の過去の成績は将来を保証するものではなく、将来への期待もアテにならないという考えで、インデックス投信を選んでいるとしたら、米国株式市場の実績や将来に期待するのは矛盾しているかもしれません。

 インデックス投信のなかで米国株式に集中すること自体がアクティブな投資判断といえそうです。

「(3)人気重視」は、最も懸念される点です。買付ランキングは、投資信託のことをよくわかっている人もいれば、よくわからない人の投資行動も反映されたものです(おそらく後者が多いと思われます)。

 また、投資信託は自分の運用目標に合ったものを選ぶことが大事で、人気で選ぶと思わぬリスクに足をすくわれることがあります。買付ランキングで選んだ人は、投信選びを根本から考え直す必要があるでしょう。

「(4)分散投資」を重視した場合、米国株式だけにこれほど人気が集まるとは考えにくいのですが、おそらく(1)~(3)の理由が絡み合っていそうです。

 もし、分散投資を重視するという理由でインデックス投信を選ぶのであれば、以下のポイントについて考えてみると良いでしょう。

幅広い国や地域、より多くの企業に分散投資するためにインデックス投信を選ぶなら…

 たとえば、株式投信を選ぶ際、過去の実績や将来の期待はアテにならない、できるだけ広く分散されたものに投資したいという考えでインデックス投信を選ぶのであれば、米国1カ国に集中したものではなく、全世界(オールカントリー)に分散されたインデックス投信を選ぶと良いでしょう。

 また、広く分散するという観点では、より多くの企業に分散することを意識したいところです。

 たとえば、米国株式市場を代表する株価指数でも、NYダウの構成銘柄は大型株を中心に30銘柄、S&P500は大型株から中小型株まで500銘柄、NASDAQは一部の大型株と多くの中小型株で約3,000銘柄と指数によって銘柄数は様々です。

 米国株式インデックス投信の中には、「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」のように米国株式市場の投資可能銘柄のほぼ100%をカバーする投信もあります。

 連動対象となるインデックスがどのような考え方で何銘柄に分散しているのかを見ると、インデックス投資への理解が深まります。

株式だけで大丈夫?資産分散とリスク許容度、考えていますか?

 米国株式インデックスにかぎらず、よくわからずに買付ランキングを見て、なんとなく投信を選んでしまった人は、資産配分やリスク許容度について考えることが大切です。

 たとえば、株式市場に期待される長期的かつ平均的なリターンは年率4~6%程度といわれる一方で、短期的な価格変動幅は年率±40~50%程度の範囲で動くといわれています。

 もし、「安定的」な運用を期待している人が、買付ランキングで上位にある株式インデックス投信に全額投資しているなら、いくら運用コストが低いとしても誤った選択といえるでしょう。

 また、「安定的」な値動きといっても、その変動幅に対する感じ方は人によって様々です。

 投資信託を選ぶ際には、自分が許容できる価格変動幅はどれくらいなのかを具体的な数値で考え、そこから株式や債券などへの投資比率(資産配分)を決め、最後に個別の投資信託を選びます。

 買付ランキングから米国株式インデックスに行き着いた人は、自分の投信選びについてあらためて考えてみると良いでしょう。