米国の株式市場は世界最大の時価総額を持ち、建国当初から株価は右肩上がりの成長を続けています。その理由の一つとして、常に企業の新陳代謝が起こり、時代ごとに革新的な企業を生み出しています。

 米国株式の代表的な株式指数は、鉄道・公共事業以外の工業株30銘柄で構成される「NYダウ平均株価」、NASDAQ(ナスダック)に上場している全銘柄を対象とした「ナスダック総合指数」、NYSE(ニューヨーク証券取引所)とNASDAQに上場している大型株500銘柄を対象とした「S&P500指数」があります。

 これらに採用されている企業は長期間にわたり利益を出し続け、株価も上昇し、配当を増配し続けている銘柄も珍しくはありません。

 そこで2020年10月権利落ちの米国株高配当5銘柄について解説します。

 その前に、日本と米国の高配当銘柄への投資で、特に重要な3つの違いについて、お伝えします。

(1)米国株の配当金は、通常米国で10%、日本で20.315%の2段階、約30%の課税がされます。しかし確定申告で還付を受けることにより、日本株と同じように20.315%の税率と同じになります。ただし、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で購入した場合は、日本での利益・配当金はもともと非課税のため、還付を受けることはできません。この場合は米国で10%の課税のみとなります。

(2)米国株は日本株と異なり、権利落ち日が月末に集中していません。そのため、銘柄ごとに権利落ち日を確認する必要がありますので注意が必要です。

(3)米国株は日本円で買う円貨決済と、米ドルで買う外貨決済を選べます。日本円から外貨に替える為替手数料も積もれば大きな金額になるので、米国株を買い続けるなら売却時にも外貨決済で米ドルにしなければ無駄に手数料を支払うことになります。

米国高配当株1:バンク・オブ・ノバスコシア(BNS)

 カナダ第3位の銀行で、ニューヨーク証券取引所に上場しています。時価総額は513億ドル(日本円で約5兆4,000億円)となっています。

事業の注目ポイント

 カナダの大手銀行の中でも特に海外進出をしている銀行で、現在55カ国に拠点を持ち、日本にも進出しています。南米でも各国でトップ5に入っており、カナダ以外でも安定したシェアを有しています。

株式の注目ポイント

 リーマン・ショック時にも配当を出しており、過去20年以上にわたり無配は一度もない企業です。

 基盤のカナダで安定して収益を上げていることから配当に大きな変動がありません。

 それ以外にも、米国・メキシコ・ペルー・チリなどの米国大陸での収益があり、配当が大きく減るなどのリスクは少ないと考えられます。しかし、他の金融機関同様、株価はコロナ前の水準までは戻していません。

業績動向

 8月25日に発表した四半期決算では、売り上げ・EPS(1株当たり利益)ともに予想を下回りましたが、決算の影響を受けての株価の変動はほとんどありませんでした。自己資本比率がコロナ・ショック前と変わらず安定していることが、その後の株価が安定している理由の一つでもあるでしょう。

注意点

 日本の銀行もそうですが世界的な低金利の流れで、貸し出しなどでの収益が上げにくくなっています。従来と異なる収益の柱を生み出せるかが、これからのポイントです。

株価動向、配当利回り

配当利回り:8.69%​

権利落ち日は、10月5日です。
配当は3.6ドル、配当利回りは8.69%(2020年9月8日時点)です。株価は41.42ドルで約4,400円から購入できます(1USD=106円で計算)。2017年からの最高値は66.49ドル、最安値は32.16ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株2:イーサン・アレン・インテリアズ(ETH)

 米国の大手インテリア企業で、ニューヨーク証券取引所に上場しています。時価総額は3.6億ドル(日本円で約380億円)となっています。

事業の注目ポイント

 高品質の家具の製造および小売りを行っています。

 米国を含めた世界約300の拠点を通じて、リビング・寝具・キッチンなどのさまざまな家具製品を販売しています。材料から設計、製品作成、納品まで全て自社で内製化し、かつできた製品に対してコンシェルジュサービスを設けて、顧客のニーズに沿うインテリアのアドバイスをしています。

株式の注目ポイント

 配当についてはリーマン・ショックの時にも無配にしていません。

 株価は、2月10日ごろの水準まで戻していますが、2019年の水準にはまだ戻していません。中国とカナダでの売り上げ減少が大きいことも要因の一つです。

業績動向

 2020年8月4日開示の2020年の本決算は売り上げは市場予想を下回りましたが、EPS(1株当たり利益)は市場予想を上回りました。しかし、決算を受けての株価への影響はほとんどありませんでした。

 ここ最近は売上高が市場予想に届かないことが続いており、あまり材料視されていないようです。

注意点

 海外売り上げの回復がいつ頃になるかによって株価の回復も変わってきます。

 また、時価総額の大きい企業ではないため、買収話などが出たときには注意が必要です。

株価動向、配当利回り

配当利回り:6.15%​

権利落ち日は、10月7日です。
配当は0.90ドル、配当利回りは6.15%(2020年9月8日時点)です。株価は14.64ドルで約1,550円から購入できます(1USD=106円で計算)。上場後の2018年1月からの最高値は27.35ドル、最安値は8.61ドルです(終値ベース)。

米国高配当株3:リンカーン・ナショナル(LNC)

 保険収入全米第4位の企業で、年金保険、退職給付保険等の事業展開をしています。

 S&P500指数採用銘柄であり、フォーチュン誌が選ぶ全米上位500社でランキングされた銘柄の一つでもあります。時価総額は74億ドル(日本円で約7,800億円)となっています。

事業の注目ポイント

 年金保険・退職給付保険・生命保険などいくつかの事業から構成されていますが、特に年金保険が売り上げの中心となっています。

 金利低下による事業への影響はあるものの、歴史ある保険会社であり「メットライフ」「プルデンシャル」「アフラック」に次ぐ第4の保険会社として米国で確固たる地位を築いています。

株式の注目ポイント

 リーマン・ショック時にも無配にしていません。配当については2011年より連続増配中です。

 しかし、他の金融機関同様、新型コロナウイルス発生前の株価水準には戻していません。株価下落、金利低下の影響を受け、変額年金などの保険商品の売上高が芳しくない点が、理由のようです。

業績動向

 2020年8月5日開示の2020年第2四半期決算は売り上げ・EPS(1株当たり利益)ともに予想を下回りました。

 決算の影響を受けて翌日の株価は下落しましたが、9月9日現在、株価は既に戻しています。第3四半期には通常の収益にまで戻るだろうとCEO(最高経営責任者)が発言しており、今後の業績が注目されます。

注意点

 年金保険の次に売り上げの大きい生命保険が、新型コロナの影響で死亡率が影響し、マイナスリターンとなりました。感染者数が減ってきているとはいえ、今後もこの影響には注意が必要です。

株価動向、配当利回り

配当利回り:4.52%​

権利落ち日は、10月8日です。
配当は1.62ドル、配当利回りは4.52%(2020年9月8日時点)です。株価は35.82ドルで約3,800円から購入できます(1USD=106円で計算)。2017年からの最高値は85.91ドル、最安値は17.06ドルです(終値ベース)。

米国高配当株4:ナイソース(NI)

 米国の大手エネルギー会社の一つで、S&P500指数にも採用されています。時価総額は85億ドル(日本円で約9,000億円)となっています。

事業の注目ポイント

 米国で最大の天然ガス公益企業の一つであり、7つの州で約400万の顧客に天然ガスおよび電気のサービスを提供しています。オハイオ州、ペンシルベニア州、バージニア州、ケンタッキー州、メリーランド州、インディアナ州、マサチューセッツ州などの複数の州で事業展開をしています。

 世界的な環境対策への取り組みにより、この企業でも石炭・火力発電の廃止など温室効果ガス削減に取り組んでいます。

株式の注目ポイント

 配当についてはリーマン・ショック時にも無配にしていません。しかし、株価はまだ新型コロナ前の水準まで戻していません。工場の停止など企業の需要が戻らないことから、売り上げが芳しくないことが理由の一つのようです。 

業績動向

 2020年8月5日開示の2020年第2四半期決算では、EPS(1株当たり利益)は市場予想を上回り、一方、売上高は市場予想を下回る結果となりました。しかし、決算の影響を受けての株価の変動はほとんどありませんでした。業績は2018年のガス事故があった時以外は安定して推移しています。

注意点

 新型コロナの影響で、工業用のガス・電力の需要落ち込みが大きく、これが今後どれだけ長引くかが注意点です。

株価動向、配当利回り

配当利回り:3.87%​

権利落ち日は、10月29日です。
配当は0.85ドル、配当利回りは3.87%(2020年9月8日時点)です。株価は21.97ドルで約2,300円から購入できます(1USD=106円で計算)。2017年からの最高値は30.56ドル、最安値は20.86ドルです(終値ベース)。

米国高配当株5:バンク・オブ・モントリオール(BMO)

 カナダで設立された最初の銀行であり、現在でも5大銀行の一行で、ニューヨーク証券取引所に上場しています。時価総額は400億ドル(日本円で約4兆2,500億円)となっています。

事業の注目ポイント

 カナダと米国で個人および商業銀行の事業や、キャピタルマーケット、ウェルスマネジメントなどから構成されています。特に、BMOウェルスマネジメントは10年連続でカナダのベストプライベートバンクに選出されています。

株式の注目ポイント

 リーマン・ショック時にも配当を出しており、過去20年以上にわたり無配は一度もない企業です。バンク・オブ・ノバスコシア同様に基盤のカナダで安定して収益を上げていることから大きな変動がありません。

 それ以外にも、富裕層向けビジネスなどで安定した業績を上げています。しかし、他の金融機関同様、株価は新型コロナ前の水準までは戻していません。

業績動向

 8月25日に発表した四半期決算では、売り上げは市場予想を下回りましたが、EPS(1株当たり利益)は市場予想を上回りました。決算を受けて株価は下落したものの、現在は決算発表時の近辺の株価水準まで戻しております。

注意点

 日本の銀行も同様ですが、世界的な低金利の流れで、貸し出しなどでの収益が上げにくくなっていますので、従来と異なる収益の柱を生み出せるかがポイントです。

株価動向、配当利回り

配当利回り:7.0%

権利落ち日は、10月30日です。
配当は4.24ドル、配当利回りは7.0%(2020年9月8日時点)です。株価は60.54ドルで約6,400円から購入できます(1USD=106円で計算)。2017年からの最高値は84.11ドル、最安値は38.71ドルです(終値ベース)。

注:各銘柄購入額は手数料、税金を除く。

【要チェック】
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