「銘柄集中+ボラティリティの売り+ガンマ・スクイーズ」という絶妙の組み合わせ

「米国ではベーシックインカムを導入したようにみえる。もちろん、最初は『緊急対策の一環として』である。米国経済は政府支出(主に非生産的な無償の給付あるいは無益な戦争)とFRB(米連邦準備制度理事会)の膨れ上がるバランスシートに完全に依存するようになるだろう」と、スイス人著名投資家のマーク・ファーバーが指摘するように、米国株式市場はコロナ給付金バブルに沸いている。

 FRBのQEインフィニティ(無限大介入)で個人の株式投資ブームが巻き起こり、政権や当局は短絡的で露骨な株価操作に走っている。ここにきて、大勢の個人投資家が個別株オプション市場に殺到しており、最近ではソフトバンクグループが大型ハイテク株のオプションを大量購入したと伝えられた。

 足元の市場流動性は過去最低水準にあった。今回の高値更新は流動性が過去最低水準に暴落する中で起こっていた。ハイテク株上昇の後ろには、ソフトバンクグループ(オプションを大量購入)がいたのである。

株価が上がっているのにソフトバンクのオプション大量購入でVIX指数(恐怖指数)は高まっていた

出所:ゼロヘッジ

 さて、ここからの相場で我々は何に注意すべきだろう?

 以下は、9月2日のゼロヘッジに掲載された「Highway To Hell(地獄へのハイウェイ)」という記事の抜粋である。運用者の間で議論になった興味深い記事なので、ぜひ目を通していただきたい。

 第一に、誰もが同じテクノロジー株や大口ETFを急いで購入しているため、集中度は記録的なレベルに達している。第二に、ショート・ボラティリティ・ベットは大きな脅威であり、多くの投資家(特にストラクチャード・ファンド)が「FRBプット」のおかげでプットを売ることがリスクフリーになったと考えているからだ。最後に、より多くのトレーダーが短期のアウトオブザマネーのコールオプションを購入するようになり、マーケットメーカーはインデックス先物や株式を購入してヘッジせざるを得なくなった。

 この「集中+ショート・ダウンサイド・ボラティリティ+ガンマ・スクイーズ」という絶妙の組み合わせが破壊的な力を持っている理由は説明するまでもない。これが反転したとき、あるいは少なくともテックの強気の株高が停止したときには、下降局面への記録的な出来高を期待することができるだろう。リテールトレーダー、ETF、オプションセラー、マーケットメーカー、そして地球上のすべてのトレンドフォロワー:誰もが同じ証券の売り手になるだろう。言い換えれば、ほとんどの投資家やトレーダーは、小さな出口が一つしかない火のついた部屋に閉じ込められてしまっているのかもしれない。

出所:9月2日 ゼロヘッジ「Highway To Hell」

マーケットの流動性

出所:ゼロヘッジ

 ロビンフッダーが押し上げる米国株相場は2000年のドットコムバブルを超えるバブルとなり、株価が収益の何倍で取引されるかを示す「PEマルチプル」は、ドットコムバブルのピークであった27倍を超えた。

株価が収益の何倍で取引されるかを示すPEマルチプルは、ドットコムバブルのピークを超えた

出所:ゼロヘッジ

S&P500は過去10年のトレンドラインにタッチ

出所:ゼロヘッジ

 株価と実体経済との乖離(かいり)が進み、「当局が負債をいくら市場に投入するか」が、需給相場の延命を決める要因になっている。世界の経済政策はMMT(現代貨幣理論)的なものに向かっているが、MMTは提唱者のケルトン教授が言っているように、もう日本で実験済だ。

 債券王ジェフリー・ガンドラックは、「MMTについてどう思うか?」と聞かれ、「すでにどんな考えも許容されるところにこの世の中は来ている。日本は負債をものすごく増やした。しかしその結末としては30年前の株式市場の最高時から30年たってもまだ半分しか回復していないということ以外何もない。ゼロ金利、国の負債の増加、経済的に成功していないという事実の間に何か相関があるのだろう。フェアで機会がある良い社会を作ろうというのがMMTであっても、実際には結果は逆となり、本当の問題を見過ごしていることに過ぎない」と、答えている。

 マーク・ファーバーは、「普通、サンタクロースは思春期にいなくなる。正直なところ、MMTは現代でも理論でもない。通貨インフレによる詐欺的課税で資本主義と中産階級の両方に忍び寄る、実績ある殺し屋だ。新しい現実に備えよう。世界は変わった」と、発言したが、非常に重い言葉である。

 FRBが市場に全面的に介入し、膨大な量の負債が追加され、政治的な状況は巨大な混乱に陥っている。残っているのは、旧態依然としたカジノ化した市場にけん引された「仮想的な富の効果」だけだ。資産と負債を際限なく膨らます両建て経済でカジノ化した市場の怖さは、「相場が急落すると資産は減るが、負債は減らない」ということだ。

 運用というのはどうしてももうけの大小ばかりに目がいってしまうが、「リターンを得るために自分がどのくらいのリスクをとっているのか」(シャープレシオ)を考えることが最も重要であろう。

相場のレンジをどうやって予測するのか?

 9月9日の楽天FXセミナーでは、「相場のレンジをどうやって予測するのか?」というテーマで話をしてみた。

 エンベロープ(移動平均線乖離)は決して万能な指標ではないが、自律的な相場の運動範囲は移動平均の乖離のバンドの中で収れんすることが多い。ぜひ、配信動画をご覧ください。

【ライブ配信】バイナリーオプションオンラインセミナー(2020年9月9日)

出所:YouTube

9月9日 楽天FXセミナー「レンジ計測のパラメーター設定」

出所:YouTube

9月9日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 9月9日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、永倉弘昭さん(FX事業本部長)をお招きして、「バフェットは急激にエクスポージャー(投資規模)を減らしている」・「豪ドルは避難通貨!?」・「大不況の中で米国債務が増加すれば、FRBは経済を刺激し、増税するために非常に緩やかな金融政策に固執する。これにより、米ドルと米国債のリターンが低下する」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。

 ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロード出来るので、投資の参考にしていただきたい。

9月9日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

出所:YouTube

中国経済に何が起きている?

出所:YouTube