デイトレードと一般的な株式投資は全くの別物
当コラムをご覧いただいている個人投資家の方の多くは、普段お仕事をされていると思います。いわゆるデイトレーダーの方は少ないでしょう。
平日の昼間にお仕事をされている個人投資家の方は、場中(取引時間中)に株価をチェックすることは難しいと思います。従って、朝の出社前とか、昼休みに売買の注文を出し、一度買った株はしばらくの間保有を続けるという、いわゆる「一般的な株式投資」の手法を実践しているはずです。一方、デイトレーダーの方は、場中は常に株価をチェックして、短期間で株を買ったり売ったりしているはずです。
このように、売買のスタイル1つとってみても、「一般的な株式投資」と「デイトレード」とでは大きく異なります。両者は全くの別物と考えるべきです。
そこで今回は、デイトレーダーを目指していないいわゆる「一般的な個人投資家」の方に対して、デイトレードと対比する形でいくつかの注意点をアドバイスしていきたいと思います。
デイトレードと一般的な株式投資の違いとは
まず、本コラムにおける「一般的な株式投資」と「デイトレード」について定義づけをしておきます。
「一般的な株式投資」とは、株を買ったら(期間の長短はあるにせよ)ある程度の期間保有し、その後売却するという投資方法をいいます。
一方、「デイトレード」とは、株を買ったらその日のうちに売却してしまい、翌日以降に株を持ち越さない投資方法をいいます。
簡単にいえば、短期間で頻繁に売買を繰り返す手法がデイトレード、それ以外が一般的な株式投資という位置づけです。
一般的な株式投資にも様々な手法がありますが、例えば筆者が日頃から実践している「株価トレンド分析」に基づいた投資(株価のトレンドに従って売買し、上昇トレンドで買い・保有、下降トレンドで売り・非保有とする方法)もこれに含まれます。
なお、デイトレードほどは頻繁に売買をしないものの、買ってから数日間保有した後に売却するという「スイングトレード」というスタイルもあります。これも、場中に株価をチェックできる環境にある方が有利であり、平日の昼間に仕事をしている一般的な個人投資家にとっては実践しにくい手法のため、デイトレードの範疇に含めることとします。
「一般的な株式投資」をするなら場中に頻繁に株価をチェックしない
筆者が実践する、一般的な株式投資の方法の1つである「株価トレンド分析」に基づいた投資では、売買をすべきタイミングは主として日足や週足の株価チャートにより判断します。日足であれば毎日の場が引けた後、週足であれば毎週末のチャートの形状をみて売買をするかどうか判断します。そのため、日中の株価の動きは原則として無視します。
一方、デイトレードでは日足や週足ではなく、日中足の株価チャートを用います。日中足とは、1分とか5分でローソク足1本を構成している株価チャートのことです。デイトレードは、基本的にその日のうちに売買が完結するので、日足や週足のチャートでは意味がありません。
ところが、一般的な株式投資をしていても、場中に株価を頻繁にチェックしてしまうと、なんとなく買ったり売ったりしてしまうのです。実感がわかない方は、一度、仕事が休みのときに株価ボードの前に座ってしばらく株価をウォッチしてみてください。
例えば、保有株の株価をみていたら株価が下がっている、という状況では、まだ株価が日足・週足チャートでみた売りのタイミングまで達していなくても、「もっと下がってしまいそうだ」と思って売ってしまうのです。逆に、保有していない株の株価が上昇しているのをみると、「もっと上がりそうだ」と思って、まだ買いのタイミングに達していないにもかかわらず手をだしてしまうのです。
つまり、場中に株価をチェックすることにより、本当は日足や週足のチャートで判断すべきところを、1日のうちの株価の値動きに翻弄され、本来する必要のない売買をしてしまうのです。
場中にたまに株価をチェックする程度なら問題ないですが、日足・週足チャートで売買のタイミングを計る場合は、昼休みにチェックし、状況に応じて売買を実行するくらいで丁度よいと思います。
デイトレードをしないなら短期間の急騰銘柄は手出し無用
株価が急騰している銘柄をみると、「短期間に大きく儲けられる」と感じて飛び乗ってしまう個人投資家は多いと思います。しかし、デイトレードをしないのであれば、こうした銘柄は手を出さないのが無難です。
最近でいえば、株価が短期間に大きく上昇した銘柄としてガーラ(4777)があります。
1月20日も前日比474円高の3,470円で高く寄り付きましたが、その後すぐに株価が下落に転じました。
寄り付きに3,470円で買った場合を考えてみてください。デイトレードであれば、買った後株価が下落に転じたのをみて、すぐに損切りすることで損失を最小限に抑えることができたはずです。
しかし、会社勤めの人が一般的な株式投資を行う場合、日中の株価は見ない(見ることができない)ですから、場が引けた後の株価を夜にチェックすることになります。すると、3,470円で買ったものが、その日の終値は2,496円まで値下がりしていました。買値から30%も下がっていますから、当然ただちに損切りする必要があります。そこで、あわてて翌21日に成行で売却注文を出すと、1,996円で売る羽目になってしまいます。たった1日で、買値の40%以上の損失となってしまうのです。
ガーラ(4777)日足チャート
もし、一般的な株式売買を行う場合でも、場中に株価を見ることができていれば、すぐに損切りすることもできたかもしれません。それでもこのような銘柄は、一旦下げに転じるとあっという間に株価は下落します。損失が拡大する前にタイムリーに損切りができるかどうかは分かりません。
株価が短期的に急騰している銘柄に飛び乗る場合は、場中ずっとその銘柄の株価を追い続けていないと、突然の急落により大きな損失を被ってしまうことが多々あります。よって、株価が短期的に急騰している銘柄は、「デイトレード向きの銘柄」だと思ってください。こうした銘柄を一般的な株式投資の手法で売買する場合、急騰の初期段階に首尾よく買うことができなければ、買うのをあきらめるのが大ケガをしないためには得策です。
参考にしようとしている書籍やネット記事がデイトレード向けではないか要チェック
巷にあふれる株式投資にまつわる情報は、デイトレーダー向けのものと一般的な投資家向けのものが混在しています。また、株式投資に関する書物についても同様です。
一般的な株式投資とデイトレードは全くの別物なわけですから、一般的な個人投資家が、デイトレーダー向けの情報や書物を参考にしてしまうと逆に有害になることもあるので十分に気をつけなければなりません。
例えば売買タイミング1つをとってみても、デイトレードは小さい利益を積み上げていくスタイルなので、上昇トレンドの途中であってもさっさと利食いをしてしまいます。また、デイトレードは保有株を翌日以降に持ち越さないのが基本ですから、いつ倒産してもおかしくないような銘柄であっても値動きが大きいならば積極的に手掛けることもあります(一般的に倒産の発表は場が引けた後に行われるため)。デイトレードではファンダメンタルの要素は基本的に無視しているのです。
しかし、こうしたデイトレード向けの手法を一般的な株式投資に当てはめようとすると、せっかく株価が買値の5倍、10倍にまで上昇する可能性のある銘柄を安く買うことができても、少しの利益で売ってしまうことになりかねません。また、ファンダメンタルを無視して倒産の危険性の高い銘柄を買って翌日以降に持ち越したところ、倒産によりその銘柄への投資額のほぼ全てを失ってしまう恐れもあります。
デイトレード向けの記事・書籍であるかどうかを見極めるのは、ある程度株式投資を経験している方であれば難しくありません。記事の内容や書籍を少し読めば分かるはずです。でも、初心者・初級者の方は区別をつけるのが難しいかもしれません。その場合は、売買の頻度や買ってから売るまでの期間が短いかどうかをみてください。これに当てはまればデイトレードやそれに類する手法の可能性が高いです。また、記事や書籍の書き手のプロフィールなどからデイトレードを行っている人かどうかを判断することもできます。
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