REITの価格が乱高下しています。2011年11月に805.04ポイントだった東証REIT指数は2013年春に調整するもそれを乗り越え、今年1月には2,005.07ポイントまで上昇しました。約3年間で2.5倍の上昇です。ところが今年1月下旬になり突如価格が急落、REIT指数は2週間で高値から約10%値下がり、1,799.08ポイントをつけました。ここまでの規模の調整は2013年春以来のことです。

今回は、なぜREITの価格はここまで大きく上昇し、直近に急落したのか、そして今後REITに対してどのような投資戦略で臨むべきなのかを考えていきたいと思います。

株価の上昇とREIT価格の上昇は全く意味が異なる

はじめに、株式とREITとの違いを明確にしておきたいと思います。重要なのは「株価の上昇とREIT価格上昇とではその意味合いが全く異なる」という点です。

基本的に、株価が長期的に右肩上がりに上昇することは大いにあり得ますが、REIT価格が長期的に右肩上がりに上昇することは考えにくいです。

好業績の企業は毎年多額の利益を獲得し、一部は配当金として株主に還元され、残りは純資産の増加という形で株主の所有分拡大に寄与します。これが企業価値の向上につながり、ひいては株価上昇の要因となります。ですから好業績の銘柄の株価が長期的に右肩上がりに上昇するのは理にかなっています。

一方REITは、不動産の賃料等を原資とした分配金を得るのが目的の「利回り商品」であり、株式よりは債券に近い性格です。したがって、REIT価格の上昇は分配金利回りの低下につながります。

REITは不動産投資の一種であり、当然リスクを伴います。リスクの対価として投資家は応分のリターンを求め、REITの場合は分配金利回りとなります。それなのに、リスクの存在を無視して分配金利回りが際限なく低下するようなREIT価格の上昇は考えにくいのです。

また、REIT価格は当然不動産市況に左右されます。不動産市況は大きく変動しますから、それに影響を強く受けるREIT価格も上下に大きく動くことになります。

3年間で2.5倍に上昇したREIT価格が今後も大きく上昇するためには、不動産市況のさらなる改善等によりREITの1口あたりの分配金の増加が見込まれなければなりません。それがないままにREIT価格が大きく上昇を続け、分配金利回りが際限なく低下するならば、それはまさに「バブル」となります。

REIT価格が上昇した理由とは?

ところで、なぜREITの価格がここまで上昇したのでしょうか。

もちろん、不動産市況が今後も改善し、賃料収入の増加や保有物件の価値上昇によって分配金が増額されるとの期待も理由の1つでしょう。

しかし、ここまでのREIT価格上昇の最も大きな要因は、やはり世界的な金融緩和に伴うカネ余りにあると思います。

金融緩和により世界中にマネーがあふれると、行き場を失ったマネーの一部はREIT市場に流れ込みます。その結果、REIT価格の押し上げ要因となります。

また、金融緩和により債券にも大量のマネーが流れ込む結果、長期金利が低下します。すると債券と比べてREITの利回り面での魅力が相対的に高まることから、REITが買われる原因となります。

さらに、日本銀行がREITを買い入れている点も、需要と供給のバランスという面から考えて価格を押し上げる要因となります。

日本銀行のホームページをみると、ETFとREITの日々の買い入れ結果が掲載されています。これによれば、2014年春ごろの1日の買い入れ額は3億円でしたが、その額は次第に増え続け、最近では1日につき12億円~13億円を買い入れています(買い入れは毎日行っているわけではありません)。そして、今年に入ってからすでに100億円以上のREITを買い入れていることが分かります。

長期金利が上昇するとREIT価格はどうなる?

では、1月下旬以降REITの価格が急落したのはなぜでしょうか。これは長期金利が急上昇したためです。

REITは債券と同じように「利回り商品」であり、両者の間には「適切な利回り差」があると考えられます。これは常にいくらと固定されているわけではなく、マーケットを取り巻く環境により、市場参加者により自然と決定される性質のものです。

長期金利が上昇すると、その「適切な利回り差」という均衡が崩れ、債券とREITの利回り差が縮まってしまいます。そこで、「適切な利回り差」に戻すためにマーケットの調整機能が働き、REIT価格が下落するのです。

1月下旬以降のREIT価格の急落は、長期金利の急上昇と時を同じくしていたという事実からも、長期金利とREIT価格には密接な関係があるということができます。

これからのREITへの投資戦略

最後に、今後のREITの投資戦略について考えてみたいと思います。

ファンダメンタルの面からみれば、価格上昇により分配金利回りはかなり低下していますので、個人的にはやや割高には感じます。ファンダメンタルを重視するなら、無理に買うような水準ではないとは思います。もし長期金利がここから大きく上昇したならば、REIT価格にもマイナスの影響があるでしょう。

一方、チャート面から判断すると、確かに1月下旬~2月上旬の調整はやや大きかったものの、長期的に見た上昇トレンドは不変です。現時点でのREIT価格がバブルとは思いませんが、ここからさらに価格が上昇して「REITバブル」に突入する可能性もあります。筆者はバブルの初期段階で乗ることができるならば、バブルを積極的に活用して利益を伸ばすべきという持論ですので、強い動きが続く限りは流れについていけばよいと思います。

具体的には株式と同様に、日足チャートをチェックして価格のトレンドに応じて売買すればよいでしょう(添付チャート①のタイミング)。東証REIT指数は、本コラム執筆時点(2月15日)ではまだ25日移動平均線を下回っていますから、これを上回ってくるまでは買いは見送りとなります。

ただ、できるだけ安く、つまりできるだけ分配金利回りが高くなったところで買う方が有利というのも事実です。そこで、下降トレンドの中を買い向かうという戦略が考えられます(添付チャート②のタイミング)。もちろん想定外の大幅下落に備え、損切りという歯止めは必要となります。

日足チャートでは2月3日につけた1,799.08ポイントが直近の安値です。価格が25日移動平均線を超えないうちに買うのなら、ここを損切りラインに設定し、割り込まない限りは保有を続けるという形にすればよいと思います。なお、価格が25日移動平均線に近づいた場合は、②のタイミングで買うと損切りとなった場合の損失が大きくなってしまう恐れがあります。無理に②のタイミングで買わず、①のタイミングが到来するまで待った方がよいでしょう。

REIT指数 日足チャート

上記の戦略は東証REIT指数を例にとったものです。個別のREIT銘柄やREITのETFへ投資する際は、それぞれのチャートを確認したうえで、上と同じようなやり方で売買タイミングを計るようにしましょう。