似て非なる「買い下がり」と「ナンピン買い」

「買い下がり」と「ナンピン買い」。この2つは一見同じことを指しているようにも思えますが、実はその意味するところは全く異なります。

 両者は確かに「株価が下がったら買う」点においては同じなのですが、決定的に違うのが、「損切りを含め計画的に行動するかどうか」です。

 買い下がりとナンピン買いが同じ意味として扱われることもあるようですが、その場合はおそらく両者ともに「損切り」という概念はないはずです。

「損切り」の重要性を身を持って感じている筆者として、一見同じようにみえる買い下がりとナンピン買いを「計画性」「損切り」の観点からあえてはっきりと区別した上で考えてみたいと思います。

戦略的・計画的な「買い下がり」の手法とは?

 筆者が考える「買い下がり」というのは、戦略的・計画的な手法です。

 例えば、500円だったA社の株価が下がり続けて200円になったところでいったん下げ止まり、現在は230円まで反発したところとしましょう。

 現時点では、200円が大底になったかどうか分かりません。しかし、大底である可能性は少なくないと読んで、まず現時点での230円近辺で買いを入れます。

 その後、株価が220円、210円と下がるごとに追加で買いを入れます。つまり買い下がりを実行していきます。これは事前に「いくらになったら何株買う」と決めておきます。

 しかし、直近の安値である200円を割り込んだ場合は、持ち株をすべて損切り・売却するのです。 なぜなら、この戦略的・計画的「買い下がり」という行為は、直近安値の200円が大底である、との前提で行動しているからです。したがって、この前提が崩れた時点で速やかに撤退します。

 人により、上記とは多少手法が異なることもあるでしょうが、「撤退条件をあらかじめ決めておく」という点は同じはずです。

 このように、「買い下がり」は失敗した場合損切りによる多少の損失が発生しますが、損切りを実行することから、多額の損失を被ってしまうような大失敗にはなりません。

無計画・場当たり的な「ナンピン買い」の怖さ

 対する「ナンピン買い」は次のようなものです。

 1,000円で買ったB社株の株価が800円まで下がってしまいました。もしナンピン買いせずに持ち続ければ、株価が1,000円まで戻らないとトントンになりません。しかし、保有数と同株数のナンピン買いをすれば、株価が900円まで戻ればトントンになります。ここにナンピン買いの「メリット」があります。

 しかし、「株価が900円まで戻れば」というのは希望的観測に過ぎません。実践では、株価が900円まで戻るどころかさらに下落を続けるケースも多いのです。

 ナンピン買いの最大のリスクは、ナンピン買いの後さらに株価が下落した場合、ナンピン買いをしなかった場合より含み損が膨らんでしまうことです。

 ナンピン買いを繰り返しても株価が下落し続けた結果、多額の含み損を抱えた塩漬け株に手も足も出なくなってしまうことは決して珍しくありません。

 ナンピン買いには、株価の下げ止まりを確認した上での実行とか、損切り価格の設定といった戦略性・計画性は通常持ち合わせていません。そこには、株価はいずれ上がるという、根拠なき確信としての相場の右肩上がり信仰が存在します。

 そのため、「1,000円の株が800円に下がってしまった。でもナンピン買いしておけば900円に戻ったらトントンになるからとりあえずナンピン買いしておこう」という無計画で場当たり的な感覚で行動し、損切りを含めた投資行動の計画性欠如に繋がっていきます。これこそがナンピン買いにより損失拡大を招いてしまう要因に他なりません。

無計画なナンピン買いからは一刻も早い卒業を

 戦略的・計画的で損切りルールも設定したうえでの買い下がりなら結構ですが、無計画で場当たり的なナンピン買いだけは、絶対にしないようにしてください。

 ナンピン買いをするくらいなら、速やかに損切りすべきです。その方が、ナンピン買いを繰り返した結果多大な損失を被るより、はるかに小さな損失で済むからです。

 ナンピン買いは、資金が無尽蔵にある投資家でないと向いていません。さらに、いくら資金を豊富に有していても、ナンピン買いを繰り返した結果その銘柄が経営破たんして株式が紙くずになってしまっては目も当てられません。繰り返すほどに損失拡大のリスクが増大し、大失敗の原因になりかねないナンピン買いからは、永遠に決別することを強く勧めます。