投資信託の開示資料、どう使う?

 投資信託は、プロに運用をお任せする金融商品ですから、購入後は基本的に「ほったらかし」で問題ありません。

 ただし、半永久的に放っておいてもよいかというと、そういうわけではありません。特にアクティブファンドを保有している場合は、投資信託の運用会社が開示しているさまざまな資料を活用しながら運用経過を確認し、必要に応じて保有商品のメンテナンスを行った方がよいでしょう。

 それでは、早速ですが、クイズです。

クイズ運用会社が提供している以下の資料のうち、金融商品取引法に基づいて作成・開示されるものはどれでしょう(複数選択可)。
  1. 交付目論見書
  2. 販売用資料
  3. 運用報告書
  4. 月次(マンスリー)レポート
  5. 臨時レポート

金融商品取引法に基づいて作成・開示される資料は?

解答:1.交付目論見書と3.運用報告書

 金融商品取引法に基づいて作成・開示されるのは、交付目論見書と運用報告書です。

交付目論見書とは?

 交付目論見書とは、投資信託の「商品説明書」のこと。投資家は、投資信託の購入時(積み立て設定時を含む)に必ず目を通す必要があります。

運用報告書とは?

 運用報告書とは、ファンド運用期間中の運用実績や運用経過、信託財産の状況、有価証券の売買状況、今後の運用方針などを投資家に報告するための法定文書です。運用報告書は、当該投資信託の計算期間の末日ごとに運用会社が作成します。

 この二つの資料は、運用会社に作成義務があり、どの投資信託にも必ず用意されています。

 販売用資料月次レポート臨時レポートはいずれも運用会社が補完的に作成している資料です。これらの資料は、ごく一部の例外を除き、運用会社のウェブサイトに掲載されているので、購入前でも目を通すことが可能です。

ほったらかしはもったいない!運用報告書・月次レポート

 投資信託の購入後に特に目を通していただきたいのは、運用報告書と月次レポートです。

チェック!運用報告書

 運用報告書は年1~2回、6カ月または1年ごとの発行がほとんどです。

チェック!月次レポート

 月次レポートは原則として毎月発行されます。毎月、隅から隅まで読み込む必要はありませんが、運用成績とファンドマネジャー(運用担当者)のコメントは可能な限り目を通すことをおすすめします(図の[a][b])。

 運用成績は、ベンチマーク(または参考指数)との比較が大切です。

 多くの月次レポートには、ベンチマークと比較した折れ線グラフや表が記載されていますので、こちらを確認するとよいでしょう(図の[C])。

 アクティブファンドなら、ベンチマークを上回っていてほしいところですが、仮に下回っていたとしても、数カ月程度の期間での話であれば、それほど目くじらを立てる必要はありません。ただし、大きく下回った状態が続いているときは要注意。どうして下回ったのかについてのファンドマネジャーのコメントが載っているはずなので、必ず目を通してください。

 もう一つ、純資産残高の水準もチェックしたいところです(図の[C])。残高が増えている間は基本的に大きな問題はありませんが、減ったときは、その原因を探ることが重要です。

純資産残高が減少している!どうする?

 純資産残高は、投資している金融商品の価格の変動で増えたり減ったりします。株式に投資していれば、株式相場が下落すると減りますし、海外の株式や債券に投資していれば、為替が円高に振れると減ることになります。

 ただ、株式相場の下落などで、純資産残高が一時的に減少するのはよくあることです。相場が原因であれば、大して気にする必要はありません。しかし、株式相場が回復しても、残高が回復せず減少を続けているときは注意信号です。相場が安定しているにもかかわらず、減少している場合は、投資家による投資信託の解約が相次いでいる可能性が高いためです。

 運用会社は、解約が発生すると、投資家に返金するために現金を手元に用意しておく必要が生じ、機動的な運用が行えなくなります。残高が減少し、ついに運用に支障が出るようになると、運用成績を回復させるのは難しくなります。信託報酬などのコストの負担も次第に重くなっていきます。その段階に入ってしまうと、さらに解約が増えるという悪循環に陥り、最悪の場合、繰上償還によって強制的に運用が終了することもあり得ます。

 また、困ったことに運用がうまくいっていて基準価額が上昇しているときでも、純資産残高が減るという事態が起こります。利益を確定するために、解約する投資家が増えることが原因です。ただし、これは一時的な現象で終わることも多いので、継続的に減り続けているような状態でなければ、過度に気にする必要はありません。

 くれぐれも目先の運用成績だけに気をとられず、純資産残高の推移も忘れずに併せてチェックするようにしてください。