ブル・ベアETFとはどんなもの?

4月上旬から中旬にかけて、ETF(上場投資信託)に新しい商品が誕生しました。「ブル・ベアETF」と呼ばれるものです。

ブル型のETFとは、日経平均株価やTOPIXといった株価指数の変動率の2倍の価格変動率となるように設計されたものです。

一方、ベア型のETFとは、株価指数の変動率のマイナス1倍、つまり価格の変動が株価指数の正反対になるように設計されたものです。

つまり、ブル型のETFは、上がるときも下がるときも日経平均株価やTOPIXの2倍動く、ベア型のETFは日経平均株価やTOPIXが上がれば同じだけ下がり、逆に日経平均株価やTOPIXが下がれば同じだけ上がるという特徴を持ちます。

日経平均株価が10,000円から10,500円に5%上昇した場合、ブル型のETFであれば価格が5%×2倍=10%上昇します。一方、ベア型のETFであれば価格が5%下落することになります。

ETFとして登場したことで使い勝手が格段に向上

実は、ブル・ベア型の投資信託というものは以前から販売されていました。しかし、販売手数料が高かったり、場中に自由に売買ができなかったりと、使い勝手の面からいえばあまりよくありませんでした。

しかし、今回上場する「ブル・ベアETF」は、販売手数料はなく、通常の上場株式と同じ売買手数料のみで済みます。また、上場株式と同じように売買できますから場中の売買も自由です。買いたいときに買え、売りたいときに売れるのはやはり魅力的です。

今回新たに上場したブル・ベアETFは以下のものです。

東京証券取引所に上場しているETFはTOPIXの値動きに連動するもので、大阪証券取引所に上場しているETFは日経平均株価の値動きに連動するものです。

少ない資金で大きい利益を狙う

ブル型ETFの活用方法として考えられるのは、「少ない資金で大きい利益を狙う」というものです。もし、投資資金が100万円あるとして、これを日経平均株価連動型のETFに投資し、日経平均株価が20%上昇すればETFも20%上昇しますから20万円の利益です。一方、この100万円をブル型のETFに投資したならば、日経平均株価が20%上昇すればETFは20%×2倍=40%上昇し、40万円の利益を得ることができます。多少のリスク覚悟で資金を大きく増やしたい、という個人投資家の方にはお勧めです。

ただし、ブル型ETFは下がるときも日経平均株価やTOPIXの2倍下がりますから十分に注意が必要です。下降トレンド途中の逆張りの買いをしないこと、そして損切りのルールを設定してそれを遵守することが求められます。

空売りを使わなくても「買い」でリスクヘッジができる!

一方のベア型ETFの活用法の1つが「リスクヘッジ」です。長期的には上昇トレンドであるが中期的、短期的に株価が調整しそうだというとき、持ち株を売却する代わりにこのベア型ETFを買って株価下落に備えるのです。

もともと、株価下落に備えるリスクヘッジの手法としては、個別銘柄の空売り、指数連動型ETFの空売り、先物売りなどがありますが、いずれも空売りを用いるものであるため、信用口座や先物口座を開設する必要があり、敷居がやや高いのも事実です。

また、第125回のコラムでご紹介したプットオプションの買いは、空売りではなく買いによるリスクヘッジですが、これは突発的な事件・事故による株価急落に備えたものであり、通常の株価調整局面ではそれほど威力を発揮できません。

でも、ベア型ETFを買えば、日経平均株価やTOPIXが値下がりしたらベア型ETFは同じ割合だけ上昇することになりますので、保有株の値下がり損をカバーすることが可能です。

信用売りを伴わず、「買い」だけでリスクヘッジできるのがベア型ETFの魅力です。もちろん、リスクヘッジ目的だけでなく、今後の株価下落が見込まれる局面で単純にベア型ETFを買い、積極的に利益を目指すことも可能です。

ブル・ベアETFのその他の注意点は?

ブル・ベアETFは、例えばTOPIXブル2倍上場投信であればTOPIXの「日々の変動率の2倍」になるように設計されています。そのため、前日比で比較すると、TOPIXの値動きの2倍になりますが、2日以上離れた期間で比較すると、2倍にならないことがあります。

特に日経平均株価やTOPIXが狭い範囲の値動きで上昇・下落を繰り返すようないわゆるボックス相場のときには、例えばTOPIXが小幅な上下動を繰り返しながら10%上昇したとしても、TOPIXブル2倍上場投信の価格は10%×2倍=20%ではなく、15%しか上昇しないということも考えられます。

このような現象は、期間が長くなればなるほど顕著になるものと思われます。そこで、このブル・ベア型ETFへ投資する際には「長期間(何年もの間)持ち続けることは避ける」「日経平均株価やTOPIXがボックス相場のときは投資を控え、明確な上昇トレンドもしくは下降トレンドが形成されているときだけ投資をするようにする」ことを心がけるとよいでしょう。1カ月から6カ月程度の短・中期的な株価トレンドに従って、上昇トレンドならブル型ETFを、下降トレンドならベア型ETFを買うといったイメージです。