一部の失業者は通常の所得を上回る給付を手にしている

 ウィルスの感染拡大によって経済活動が一時シャットダウンされ、制限が続く米国において労働市場は引き続き不安定な状態が続いている。仕事がない、あるいは仕事を休まざるを得ない人々は大きな影響を受けたと想像されるが、実際には、一部の失業者は通常の所得を上回る給付を手にしている。

 その結果、米国株式市場では給付金バブルが起きて、「ロビンフッダー」と呼ばれる投機的な個人の投資家の取引が市場を席巻する存在となっている。ロビンフッダー相場に理屈はない。過剰流動性がすべてだ。市場はアップルとテスラの分割期待でイケイケになっているが、特定の銘柄だけが買われているのが、ロビンフッド相場の特徴である。最近は新米デイトレーダーの投資指南として、ハウツー動画が人気になっているらしい。その講師は大学生だという。マイオピック(近視眼的)な賭博場と化した市場のロビンフッドブームと流動性バブルを象徴する現象であろう。

テスラ(日足)

出所:パンローリングカスタムチャート・石原順インディケーター

アップル(日足)

出所:パンローリングカスタムチャート・石原順インディケーター

米国株の先行指標はシカゴの木材先物相場

 コロナバブルに沸く市場だが、大統領選挙年のNYダウの平均サイクルは、9月の途中から10月の初めまで相場が押しを入れている。一応、注意が必要だろう。

NYダウの大統領選挙年サイクル

出所:「ラリー・ウィリアムズのフォーキャスト2020」(パンローリング)

 米株式市場の先行指標となっているのは、シカゴの木材先物相場である。住宅市場とも連動している木材先物相場の動向は、米株式市場の変調を教えてくれるだろう。

木材先物(日足)

出所:パンローリングカスタムチャート・石原順インディケーター

バラマキ政策を続けると市場や我々の暮らしはどうなるのか?

『一時レイオフの米労働者、4分の1近くは恒久的失業も』というブルームバーグの記事で、ゴールドマンは財政支援やPPP(給与保証プログラム)による支援が底を突くことで、恒久的失業者がさらに増えると予想しているという。こうなると、給付金もQE(量的緩和)と同じく、一度始めるとなかなかやめることが出来なくなってくるが、その給付金とQEこそが現在の株式市場の上げの原動力である。

 ドイツ経済研究所が8月18日にベーシックインカムに関する3年にわたる調査研究を開始したという。「120人が毎月1,200ユーロ(約15万円)を受け取る。研究者はその後、1380人の現金支給を受けていない人々の体験と比較分析を行う」(ビジネスインサイダー)らしい。

 いずれにせよ、経済は国家や中央銀行の政策頼みで、給付とかベーシックインカムとかMMT(現代貨幣理論)といった社会主義政策の方向に舵を切っているようにみえる。このようなバラマキ政策を続けると、市場やわれわれの暮らしはどうなるのであろうか?

 著名投資家マーク・ファーバーは、「FRB(米連邦準備制度理事会)が債券市場で大部分を爆買いした場合、理論的には資産価格は月に打ち上げられ、そこから最終的には地面すれすれで落ち着くだろう。債券市場が行き詰まると、価格調整で残る手段は唯一、米ドルの価値となる」と、発言しているが、現状は資産価格が月に打ち上げられている過程らしい。

 これを簡単に言うと、NYダウはMMTによってNYダウは100,000ドルになるが、中産階級はいなくなり(ゼロ)、スタグフレーション(不景気の物価高)で、ハーフタイムのビールを 100ドル払わないと買えない時代がくるらしい。

 IMF(国際通貨基金)は各国の債務状況を調べた結果、経済の発達した先進国らがコロナウイルスの感染防止対策に支出を拡大した結果、国家債務が第2次世界大戦来の記録的レベルに達しており、この縮小は容易には達成できないとの見方を示している。

過去の財政刺激策

出所:ゼロヘッジ

 富の格差など、MMTで引き起こされる不均衡をどうするのか。確実に続くことになる低成長をどうするのか。消費者物価指数によるインフレ示唆があまりにも遅すぎて債務累積の速度を落とせない場合はどうするのか・・など、バラマキ政策には持続不可能な問題が多い。

 ジェフリー・ガンドラックが言うように、「フェアで機会がある良い社会を作ろうというのがMMTであっても、実際には結果は逆となり、本当の問題を見過ごしていることに過ぎない」だろう。こうしたバラマキバブルは結局のところ、ツケを先送りしているに過ぎない。「宴が終わった時、誰がその費用を支払うのか」ということが問題になる。

ドル相場は買われすぎの調整中、ランダム相場の次に来る次のトレンドを待ちたい

 対ドル相場の日足チャートをみると、ドル相場は調整中(ランダム相場)となっている。ドルインデックスもADXがピークに近い50をこえたところでピークアウトしており、現在はドルの戻りを確かめる地合いにある。基本的には、次のトレンドを待ちたい。

ドルインデックス先物(日足)ADXがピークに近い50をこえたところでピークアウト

出所:石原順

ユーロ/ドル(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ドル/スイス(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ポンド/ドル(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:パンローリングカスタムチャート・石原順インディケーター