シンプルに株価のトレンドを見極める方法

筆者は株式投資で失敗しないためには、株価が下降トレンドを続けている間は新規買いをしないことが重要な点の1つであることを何度もお伝えしてきました。
では、株価が「上昇トレンド」にあるのか「下降トレンド」にあるのかをどのように見極めればよいのでしょうか。これにはいろいろな方法がありますが、筆者は株価チャートと移動平均線の関係から非常にシンプルに考えるようにしています。その方法を今回はご紹介しましょう。

みるべきポイントは「株価が移動平均線の上にあるか下にあるか」と「移動平均線自体が上向きか下向きか」という2つです。
移動平均線は、株価が上昇基調にあるのか下降基調にあるのかを大局的に示してくれます。一方で、移動平均線はその性質上株価の動きに遅れて動くので、移動平均線だけでなく株価チャートで株価の位置も併せて確認しておく必要があるのです。

2つのみるべきポイントから生じる組み合わせは次の4パターンになります。

  • (1)株価が移動平均線の上方にある+移動平均線が上向き
  • (2)株価が移動平均線の下方にある+移動平均線が下向き
  • (3)株価が移動平均線の下方にある+移動平均線が上向き
  • (4)株価が移動平均線の上方にある+移動平均線が下向き

トレンドが明確なときの投資行動

このうち(1)と(2)は分かりやすいパターンです。

(1)のパターンに該当すれば、株価は上昇トレンドにあると判断できます。
したがって、持ち株は基本的に持続でよいですし、新規投資もOKです。ただし、たとえ上昇トレンドであるからといって、株価がすでに安値から何倍にも上昇してしまっていたり、短期間に急騰している銘柄の新規買いは慎重にする必要があります。買うにしてもなるべく押し目(上昇途中の一時的な株価調整局面)を待って買うようにしたいものです。

一方、(2)のパターンに該当すれば、株価は下降トレンドにあると判断されます。
下降トレンドにある株価はどこまで下がるか分かりません。時には「まさかそこまで」と思う株価まで下がることもあります。したがって、原則としてこの状態にある銘柄を新規買いすることは禁物です。また、持ち株は下降トレンドに入ったと判断した時点、つまり(2)のパターンへの移行が確認でき次第速やかに売却しておくのがセオリーです。気がついたら持ち株がすでに下降トレンド入りしていた、ということのないように、持ち株の株価チャートは定期的にチェックしておくことが望まれます。

判断に迷うときはどうするか-上昇相場終焉か継続か?

では、(3)や(4)のパターンの場合はどうすればよいでしょうか。

(3)のパターンは、(1)から移行するものです。順調に上昇していた株価が下落に転じ、移動平均線を割り込んでしまったが、移動平均線自体はまだ上向き、という状態です。
この場合、「上昇トレンドが終了してしまった」「上昇トレンド途中のやや深い押し目」の2つのケースが考えられます。
しかし、移動平均線がまだ上向きとはいえ、株価自体が移動平均線を割り込んだ事実は危険信号として重要視しなければいけません。
そこで、移動平均線が上向きであっても株価が移動平均線を割り込んだらとりあえず一旦売却するのが一策です。その後、株価が再び移動平均線を超え、移動平均線自体も上向きをキープしているならば(1)のパターンの上昇トレンド復帰とみてその時点で買い直します。逆に株価がその後下落を続けるならば、買い直しは行いません。
これにより、一旦売却した後株価が上昇しても下落しても適切な対応が可能となるのです。

こんな場合はどうする-下降相場終了か継続か?

(4)のパターンは、(2)から移行するものです。長らく下落を続けていた株価が反発して移動平均線を超えてきたものの、移動平均線は下向きのまま、という状態です。
この場合、「株価が底打ちして反転上昇をはじめている」「下降トレンド途中のやや大きめの一時的反発」の2つのケースが考えられます。
(2)のパターンにある間、つまり明確な下降トレンドにある間は新規買いをしないという前提にたてば、株価がこの(4)のパターンになったときの選択肢は以下の(ア)(イ)の2つです。どちらを選択するかは投資家の皆さんの自由ですが、リスクをできるだけ取りたくないなら(イ)を選択するのが無難です。

  • (ア)リスクはあるものの下降トレンドが終了した可能性もあるのでとりあえず買う。ただし株価が再び移動平均線を下回ったら損切りする。
  • (イ)下降トレンドが継続している可能性もあるので、(1)のパターンになるまで買わずに待つ。

まとめ-株価のトレンドと投資行動のポイント

株価の動きをざっくりと表すと、(1)→(3)→(2)→(4)→(1)…の繰り返しになります。投資行動のポイントを株価の動きの順に並べて列挙すると次のようになります。

  • (4)から(1)へ移行したら買い
  • (1)の間は持ち株継続保有
  • (1)から(3)へ移行したら一旦売却を検討
  • (3)から(2)へ移行したら保有株は売却
  • (2)の間は買わない
  • (2)から(4)へ移行したらリスク覚悟の買いも一策

今回の内容は、拙著「超実践・株価チャート使いこなし術」(日本経済新聞出版社)において実際の株価チャートを使って詳細に説明しておりますので、もっと詳しく知りたい、という方はぜひご覧ください。
次回は、底値圏での買い時を見極める際の株価チャート・移動平均線の活用法についてご説明します。