「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね」を運用している農林中金バリューインベストメンツのCIO「奥野一成」が、『ビジネスエリートになるための教養としての投資』を執筆、投資の本ながらビジネス部門で話題となっている。
投資と本来の投資のあり方とその哲学、長期投資のコツ、優良企業の見極め方などを、歴史的な背景や実例を交えながらわかりやすく解説するこの著書は、投資を今から始める人、投資の運用に困っている人にぜひ読んでほしい。
トウシルでは、この本の中から、ぜひみなさんに読んでほしい内容を10編ピックアップ。今回は8回目を紹介する。
強靭な構造を持つ会社を選ぶ
では、どうしたら売らずに済む会社を見つけることが出来るのでしょうか。私は常々、「構造的に強靭な企業®」に投資しましょうと言っています。
強靭な構造とは、3つの要素に支えられています。「高い付加価値」、「高い参入障壁」、「長期潮流」です。この3つの要素を持っている会社は、構造的に極めて強靭であり、この3つの要素が弱まらない限り、その株式を保有し続けられると考えて良いでしょう。
それぞれどういうことなのかを、皆さんもよくご存じのウォルト・ディズニーを例にとって具体的に説明していきます。

まず高い付加価値とは、「本当に世の中にとって必要か?」ということです。必要性が高ければ高いほど良い。言い換えると、会社の存在意義です。その会社が存在する意義はどこにあるのかということを、見極める必要があります。
ディズニーと聞くと、皆さんミッキーマウスやディズニーランドを思い浮かべると思いますが、実はそれだけではありません。映画「トイ・ストーリー」などで知られるPIXER、近年大ヒットした「アベンジャーズ」シリーズのマーベルや、世界中に数十年来のファンがいる「スターウォーズ」もディズニーが保有するコンテンツです。
ディズニーが存在しない世界を想像してみてください。ディズニーランドはもちろん、映画館だって成り立ちません。デートでどこへ行けばいいか分かりませんよね。
実は私も最近ディズニーのありがたさを実感しました。先日、私の部下に子供が生まれ、何か子供向けの贈り物をしたいと思ったのですが、何を贈れば喜んでもらえるかわかりません。でも、恐らくディズニーキャラクターであれば、ママも子供も気に入ってくれるのではないかと考え、「くまのプーさん」のベビーウェアを贈りました。
このように、ディズニーは単に遊園地や映画を提供しているわけではなく、彼女や子供など、「大切な人に喜んでもらいたい」という消費者の課題を解決しているのです。だからこそ、人はディズニーランドで一日過ごすことに、一万数千円という安くはない金額を喜んで支払うのです。
次に「高い参入障壁」です。これは先ほどのコカ・コーラのように「今更その人たちの向こうを張って勝負しようだなんて、誰も思わないほど圧倒的に強いか?」ということです。
誰が、今更ネズミのキャラクターを作って、世界中のTシャツや文房具やクレジットカードに描かれたミッキーマウスを、一つ一つ塗り替えていこうと思うでしょうか? ディズニー以外の誰かが、今更、「シンデレラ」や「美女と野獣」などの誰でも知っているありふれた童話を原作に映画を作っても、世界中の映画館で上映されるなんてことにはならないわけです。
ディズニーは、数十年の時間と莫大な費用をかけて、これらのコンテンツに投資をし、育ててきました。だからこそ、今のエンターテイメント産業における圧倒的な地位がありますし、そのコンテンツを映画、テレビ、テーマパーク、おもちゃなどのグッズ、ライセンス提供など、あらゆる媒体を通じて何度も繰り返し収益化することができるのです。
もちろん、毎年ヒット映画は生まれていますが、その中で、数十年にわたって人々に愛され、何度も繰り返し消費されるコンテンツはどれだけあるでしょうか? ディズニーは全く違う次元でゲームをしているのです。
最後に「長期潮流」です。後で詳しく述べますが、これは「今これが増えている」とか、「来年は何が流行りそう」といった中短期的なブームや予想とは全く違います。もっと普遍的で、不可逆的なものです。
最もわかりやすいものでいうと「人口動態」。先に見たように、30年前に50億人だった人口が現在70億人になり、90億人、100億人と増えていきます。これは未来の話ではありますが、予想ではなく、ある意味「事実」です。
人口が増える中で、ディズニーランドに行ったり、ディズニーの映画を見たりする人は確実に増えていくのです。
これらの3つの条件を満たす「構造的に強靭な企業®」であれば、長期的に利益を稼ぎ、増やし続けることができると考えています。
もちろん、例えばコロナウイルスの影響で、一時的に映画事業やテーマパーク事業の収益が落ち込むことはあり得ます。でも、人類が滅びるわけではありません。状況が収束すれば、人はまた、ディズニーランドに殺到するのです。
<『ビジネスエリートになるための教養としての投資』より抜粋>
全編読む:『ビジネスエリートになるための教養としての投資』

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