執筆:窪田真之
<今日のポイント>
・日本でも世界でもゲ-ムチェンジでメジャープレーヤーが次々と交代する産業が増えている。
・小売り・自動車・医薬品・金融・サービス業などで、ゲームチェンジが起こりつつある。
ゲ-ムチェンジでメジャープレーヤーが次々と交代
今、日本でも世界でも、さまざまな分野で「ゲームチェンジ」が起こりつつあります。技術の変革は速く、これまで当たり前だった生活スタイルがどんどん変化し、それに伴って必要とされる企業、不要になる企業がめまぐるしく入れ替わっているのです。5年前までメジャーだった企業があっと言う間におちぶれ、代わって、それまで聞いたことがなかった企業がメジャーになる変化が次々と起きています。
株式投資では、こうしたゲームチェンジの流れを読み、勝ち組となる企業を見きわめることが大切です。
変革のスピードが速い小売業
40~50年前、小売業の頂点に君臨していた百貨店は、ダイエーなど大手スーパーに追い詰められて衰退しました。その大手スーパーも、家電量販店・紳士服量販店・衣料品専門店などのカテゴリー・キラー(特定分野に強みを持つ専門店)や、コンビニ、ドラッグストアに追い詰められています。
総合小売業(百貨店および大手スーパー)が専門店にシェアを取られる流れは、今も続いています。セブン&アイHLDGは、国内外でコンビニの成長を加速させるとともに、百貨店(そごう西武)、大手スーパー(イトーヨーカ堂)のリストラを続けています。
ところが、カテゴリー・キラー(専門店)が、個人商店や総合小売業(百貨店・大手スーパー)からシェアを奪うだけで成長できた時代はもう終わりました。専門店も選別され、勝ち組と負け組に分かれる時代になっているのです。
米玩具大手トイザラスは9月18日に連邦破産法11条の適用を申請しました。通販大手のアマゾン・ドット・コムにゲームソフトやベビー用品などの主力商材を奪われたダメージは大きく、経営が行き詰まった結果です。流通のスターが、大規模店舗から電子商取引(Eコマース)に変わる「ゲームチェンジ」についていけなかったことが、破綻の主因と言えます。玩具分野のカテゴリー・キラーとして急成長したかつての面影はありません。
Eコマース(無店舗販売)でも、勝ち組と負け組がはっきり分かれる時代となりました。アマゾン・ドット・コムが物流を押さえ、配送がほとんど無料になる仕組みを作ったことにより、日本ではEコマースに進出した企業の多くが、利益をあげにくくなってきおり、Eコマースでも、得意分野をしぼって競争力を高めるカテゴリー・キラー戦略が必要になってきています。
水や日用雑貨などの低価格品を幅広く扱うEコマースの総合小売業で利益をあげるのが難しい時代です。有店舗販売で総合小売業のダイエーが衰退していったように、Eコマースでも、総合小売業に厳しい時代がやってきたと考えられます。
小売業のゲームチェンジで、成長を続けられる企業は、私が考えるところ、以下のようなジャンルに絞られます。
海外で成長するビジネスモデルを確立
セブン&アイHLDG(3382)、良品計画(7453)、ファーストリテイリング(9983)など
カテゴリー・キラーとして国内にまだ成長余地が残っていると考えられる企業
ローソン(2651)、ハードオフ(2674)、ビックカメラ(3048)、ウエルシアHLDG(3141)など
Eコマースのカテゴリー・キラーとして成長が続く企業
自動車で始まるゲームチェンジ
自動車にも、ゲームチェンジが起こりつつあります。イギリス・フランス・中国・インドは、将来、ガソリン車やディーゼル車の販売を禁止し、電気自動車(EV)中心の社会に切り替える検討を始めました。自動車王国、日本にとって、主役の座が変わる可能性が出たことは、重大な危機と考えられます。
実際にEVが自動車の主役になるのは、まだ10~20年先と思われます。便利で安価なガソリン車中心の世界がそんなに簡単に変わるはずはありません。しかし、株式市場では、ガソリン車を製造するインフラにどっぷり漬かっている企業を低く評価し、自動車の電装化を進める企業を、高く評価する流れが定着しています。
EV関連の勝ち組・負け組はまだはっきり見えてきません。それでも、自動車分野を拡大していく電子部品・部材が勝ち組となり、内燃機関(ガソリンエンジン)を製造するインフラを持つ自動車および自動車部品が負け組となる方向性は見え始めています。以下の3銘柄は勝ち組に入っていく企業として注目しています。
自動車用の精密モーターを拡大
自動車用半導体で世界第3位
EV大手である米テスラに自動車用電池を供給
医薬・金融・サービス業やディスプレイ業界でも進むゲームチェンジ
ゲームチェンジは、幅広い産業で起こりつつあります。医薬品産業もそうです。バイオ医薬品が主流の時代に入りつつあります。バイオ医薬品は副作用が相対的に少なく、治療が困難だった三大疾患(ガン・ウイルス性疾患・アレルギー性疾患)に治療の道を開きます。この流れについていけない医薬品大手は、いずれ衰退していくことになるでしょう。
今はまだ小さな流れですが、金融分野では10~20年かけて、フィンテック(ITを駆使した金融新技術)主流の時代に変わっていくと予想されます。既存の大手銀行・証券・保険会社も、この流れについていけなければ、長期的に衰退していくことになるでしょう。
サービス産業でも大きな変革が起こりつつあります。人手不足が常態化し、医療・介護・保育などさまざまな分野で供給不足が深刻化。近い将来、サービスロボットの商業利用が本格化することでしょう。人とロボットが協業して、良質なサービスを大量生産する流れを、しっかり見ていく必要があります。
ディスプレイ業界にも、ゲームチェンジの兆しが見えています。現在、テレビやスマホの画面は液晶が主流ですが、有機ELディスプレイに置き換える動きが出ています。有機ELの方が、液晶よりも画面が明るくて見やすく、かつ、省エネにすぐれていることが注目されています。米アップルが11月に発売するiPhone X(テン)で、有機ELディスプレイを採用することで、株式市場でも、有機EL関連株が盛り上がり始めました。
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