国内線復調も運賃レベルがほぼ半減、21年の業績回復に期待

    中国の3大航空キャリアが発表した20年7月の業務統計によると、国内線のRPK(有償旅客キロ:有償旅客の輸送距離を示す指標)は回復傾向を維持し、前月比で25-31%増加した。これは6月の同10-25%増を上回る数字。ただ一方で、中国民用航空局(CAAC)による運航規制や世界的な感染拡大が響き、国際線業務には前月比での明らかな改善傾向は見られなかった。座席供給量を示すASK(有効座席キロ)は上向いたものの、座席の販売状況を示す旅客ロードファクター(PLF:有償座席利用率)がやや低下し、国際線のRPKは引き続き前年同月比95%超の落ち込みとなった。3大航空キャリアが20年上期、通期に多額の赤字を計上することは避けられないものの、BOCIは国内線業務の復調が続くとみて、21年の業績回復を予想。ヒストリカルな低水準にある現在株価と力強い財務ポジションが安全マージンにつながるとの見方を示した上で、3社の株価(H株、A株)の先行きに対し、そろって強気見通しを継続している。

    3大キャリアの7月の業務統計(国際線・国内線を含む)を見ると、中国南方航空(01055)、中国東方航空(00670)、中国国際航空(00753)のASKが、それぞれ前年同月比41.3%減、43.9%減、52.5%減。PLFは順に、10.6ポイント、9.1ポイント、9.5ポイント低下。RPKは48.8%減、50.2%減、58.0%減。いずれも6月に比べ、下げ幅が縮小した。国際線に比べ、国内線の回復傾向が鮮明。前月比の指標を見ても、国内線の改善傾向が顕著となる半面(3社のRPKが順に25.4%増、40.3%増、30.7%増)、国際線はほぼ前月並みだった。

    一方、国内線の運賃は依然低迷しており、BOCIのリサーチによれば、8月半ば時点でも7月と同様、前年同月を約50%下回る水準だった。航空各社が需要喚起に向け、相次いで「無制限」利用プランを打ち出したことが、平均運賃を押し下げた可能性が高いという。半面、国際線の運賃は海外在住中国人の帰郷で4-6月に高水準に達した後、小幅に下げたが、利用規模自体が小さいために影響は限定的だった。

    BOCIによると、航空各社にとって逆風となる原油高や元安などのリスクは年内、限定的になる見込み。原油相場は回復傾向にあるとはいえ、世界需要の弱さから相対的に低めの水準で推移する可能性が高い。また、人民元の対米ドル相場は19年に急落したが、中国の巨額の外貨準備や貿易収支、経常収支の堅調さ、感染症の抑え込みなどを背景に、年内の一段の元安余地は限られる見通しという。ただ、BOCIは米中摩擦が新たな局面を迎えているとし、それに伴う為替リスクの高まりに言及している。

    コロナ後にはまず国内の経済活動、続いて国内のレジャー活動、最後に国際的なビジネス・レジャー活動が回復するとの見方。この予想に基づく業績回復力の点から、BOCIは3大キャリアを中国東方航空>中国南方航空>中国国際航空の順で有力視している。