日経平均は3週ぶり下落。「窓」埋めに要注意

 先週末8月21日(金)の日経平均は、節目の2万3,000円台を下回る2万2,920円で取引を終えました。前週末終値(2万3,289円)からは369円安、週足ベースでは3週ぶりの下落です。

 前週の日経平均が4連騰だったことによる反動に加え、国内企業の決算が一巡したこと、米中対立への警戒感などで手掛かり難となる中、薄商いが続きました。「閑散に売りなし」という相場格言もありますが、今週も同様に国内の材料は少なく、米株市場の動きや、個別銘柄の物色動向をにらみながらの展開になりそうです。

 それでは早速、いつもの通り足元の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年8月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均を振り返ると、週を通じて上値を切り下げる値動きとなりました。終値で見ると、18日(火)に5日移動平均線、20日(木)に2万3,000円台を下抜けている他、こうした一連の下落によって、8月12~13日に空けた「窓」を埋めにいく格好となりました。また、東証1部の売買代金も2兆円を下回る日々が続いています。

 市場のムードはさえない印象ですが、下値については前週に上抜けた上値のブレイクライン、もしくは25日移動平均線がサポートとして機能するかが目先で意識されそうです。

 今後の焦点となるのは、先ほどの「窓」埋めをどう捉えるかです。図1のチャートを過去にさかのぼると、窓空けで上昇した後に窓埋めで失速するパターンは、8月上旬と7月中旬、そして6月中旬の時に見られましたが、窓埋め後に再び上昇したのは8月上旬、窓埋め後に下落したのは7月中旬と6月中旬となっています。

 上昇した8月上旬の窓空けは底打ち局面、下落した7月中旬と6月中旬については上昇基調の中で窓空けが出現していたことを踏まえると、先週に現れたパターンは後者になりますので、注意する必要があります。

需給の影響による株価の上振れシナリオ

 その一方で、株価が大きく上昇するかもしれないシナリオも残されています。その理由として考えられるのは需給面です。具体的には、日経平均を対象とする指数連動型ETFである日経レバレッジ型ETF(1570)と、日経ダブルインバース型ETF(1357)の信用取引における残高動向です。

■(図2)日経レバレッジ型ETF(週足)と信用残の動き(2020年8月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 日経レバレッジ型ETFは、日経平均の動きに連動しつつ、値動きが2倍となるタイプのETFです。図2の下段はその日経レバレッジ型ETFの信用残の推移です。赤が買い残、青が売り残を示しています。

 買い残については、日経平均がいわゆる「コロナ・ショック」の急落タイミングで買い残が急増し、株価が底打ちとなる3月中旬から下旬あたりでピークを迎えます。その後は株価上昇に伴って減少していき、7月末にやや増加するも再び減少し、8月14日時点では今年最少の残高となっているほか、売り残よりも少なくなっています。売り残については、4月中旬以降ほぼ横ばいの推移となっています。

 続いて、日経ダブルインバース型ETFです。

■(図3)日経ダブルインバース型ETF(週足)と信用残の動き(2020年8月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 インバース型ETFとは、対象となる資産の価格が下がると利益が狙えるタイプのETFです。また、ダブルという言葉が示すように、レバレッジ型と同じく値動きが2倍となります。

 こちらも、下段の信用残に注目すると、買い残がかなり積み上っています。8月14日時点で過去最高水準の約1億3,062万口です。

 つまり、日経レバレッジ型ETFも日経ダブルインバース型ETFも、信用残の積み上がり状況から見れば、「日経平均は今後下りそう」と予想している動きが強いと思われます。

 仮に、今週以降の日経平均が持ち直し、直近高値(8月14日の2万3,338円)をトライするような動きになると、思惑が外れた信用取引のポジションが損失拡大を回避するために整理され、「踏み上げ」の格好で日経平均の上昇が加速する可能性があるわけです。コロナ・ショックで日経平均が底を打ったのが3月19日とすると、制度信用取引の期日の6カ月後は9月ですので、信用期日的にも整理が進みやすいタイミングに差し掛かろうとしています。

 もちろん、日経平均が上昇すれば、ポジション整理とともに、レバレッジ型ETFの新規買いも増えるため、ある程度相殺される面もありますが、需給の影響による株価の上振れシナリオは一応、頭の中に入れておいた方が良いかもしれません。

S&P500は史上最高値更新。上昇一服も想定を

 最後に米国株市場の動きについても見ていきます。

■(図4)米S&P500(日足)の動きとRSI(2020年8月14日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の米S&P500は、コロナ・ショック前の水準を超え、史上最高値を更新しています。5日・25・75日の移動平均線がすべて右肩上がりで基調も強く、弱気相場から高値更新まで最速のペースで株価を戻してきたことになります。

 引き続き、米国株市場の好調さを見せることができるかが今週の焦点となりますが、図4の下段のRSIを見ると、株価が高値を更新する一方で、RSIの上値が切り下がる「逆行現象」となっており、上昇が一服する展開を想定しておく必要があります。

 今週の米国は、7月の新築および中古住宅販売や、個人所得・消費支出といった経済指標の発表の他、毎年恒例のジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の経済会議)が開催されます。さらに、米共和党の全国大会も開催され、米大統領の選挙戦がいよいよ本格化するなど、イベントが多くあることも、株価を動きづらくさせるかもしれません。

 今週も為替市場の動きも絡みつつ、株価の水準感を探る展開が見込まれます。